飢餓で混乱…金正恩の首都に迫る「巨大な盗賊の群れ」
「また盗賊どもが群れをなしてやって来た」平壌市民は今、そう考えているかもしれない。
北朝鮮の首都・平壌では現在、和盛(ファソン)地区で1万世帯に及ぶ住宅建設が進められているが、現場では全国から集結した突撃隊(半強制の建設ボランティア)が工事に当たっている。
そんな彼らが、各地で盗みを働いているという。詳細を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた)
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、地元の青年突撃隊が先月末、平壌のロックダウン終了とともに、和盛地区の現場に向かった。
平壌では、先月25日から30日まで都市封鎖令が下され、市民の外出と、外部の住民の入域が制限されていた。
和盛地区の住宅は昨年2月に着工、外部の工事は終わったものの、資金と資材の不足から内装には手を付けられていない状況だ。そんな中、金正恩総書記は昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第6回総会拡大会議で、第2段階としてさらに1万世帯と、それと別に3700世帯の住宅の建設に着手するように指示した。
全国から数万人の突撃隊が平壌に集結し、今月末にも着工式を行って工事に取り掛かる予定だ。実はこの情報筋の息子も突撃隊に選抜され、平壌へと向かったが、到着早々に行っているのは、建設工事ではなく、窃盗だというのだ。
「当局が薪を供給してくれないため、突撃隊員たちは、龍城(リョンソン)区域の郊外で、平壌市民の住宅の倉庫に忍び込み、練炭を盗んで宿舎の燃料を解決(調達)している」(情報筋)
地域の住民は「突撃隊が犯人だ」と安全部(警察署)に通報したが、最高尊厳(金正恩氏)が重視する和盛地区の住宅建設の突撃隊員たちを窃盗容疑で逮捕すると、むしろ自分たちに累が及びかねないと考え、被害者に倉庫の警備をしっかりと行えと言うだけで、捜査を行ってくれないという。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、平城(ピョンソン)市の突撃隊が、大城(テソン)区域に駐屯し、宿舎と食糧は突撃隊参謀部で調達できたものの、燃料とおかずは自力で調達することを求められ、同じように民家の倉庫から練炭やキムチを盗んでいる。
地域住民は、倉庫の鍵を大きいものに取り替えるなどの対策を取っているものの、それだけでは窃盗を防ぎきれない。当局は、平壌市民の住宅問題の解決は最高尊厳のご配慮だと派手に宣伝しているが、後方事業(供給)を疎かにして窃盗を煽っていると、市民は批判の声を上げている。
このようなことは、大規模な建設プロジェクトのたびに起きている。
昨年4月に完成した松新(ソンシン)・松花(ソンファ)地区の工事現場では、夜道で強盗が多発した。また、2020年には、平壌総合病院の建設現場周辺で窃盗が多発。中には、軍で使われる特殊なガスを撒いて、住民を抵抗できなくして金品を奪うという「毒ガス攻撃」すら起きている。いずれも、食糧や燃料の配給が得られず、自主調達を余儀なくされた突撃隊や、軍の建設部隊の犯行と見られている。
金正恩氏の構想では、建設される住宅は5万戸。ハコモノ大好きな彼だけあり、一連の工事が終わっても、また別のプロジェクトを打ち出すのは明らかで、そのたびに周辺住民が被害を受けることになる。