『キングオブコント2022』決勝進出者が発表、今回のポイントは「あえてスッキリさせないオチ」
『キングオブコント2022』(TBS系)のファイナリストが9月6日に発表された。決勝の舞台へ駒を進めたのは、いぬ、かが屋、クロコップ、コットン、最高の人間、ニッポンの社長、ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、や団、ロングコートダディの10組。このなかから、コント芸の日本一が決まる。
35組が揃った準決勝は、例年以上にハイレベルな戦いとなった。各組のコント内容はネタバレ厳禁のため詳しく言及できないが、誰が勝ち進んでも異論のない内容だった。そんななかでも大きな注目をあつめているのが、最高の人間ではないだろうか。クズ芸人として知られる岡野陽一と、『THE W 2020』を制した吉住によるユニットで、準決勝で披露したネタは鑑賞者の多くから「すごい」「度肝を抜かれた」と絶賛が相次いだ。
近年の『キングオブコント』の傾向は「狂気性」「毒性」をまじえながらカタルシスで締める
最高の人間が評価されているのは「狂気性」や「毒性」ではないだろうか。たしかに近年の『キングオブコント』のポイントになっているのが、このふたつの特性であるように思える。
2021年優勝の空気階段は決勝1本目で、火事が起きたSMクラブ内にブリーフ一丁で取り残された男性たちの脱出劇のネタを披露。絵面、内容ともに、賞レース的にもテレビ的にもギリギリに思えたが、大会史上最高得点を叩き出した。毒っ気たっぷりの攻めた内容でありながら、しかしラストは妙なカタルシスが得られるなど展開がすばらしかった。
2020年のチャンピオン、ジャルジャルも狂気性が全開だった。特に決勝2本目「空き巣するのにタンバリン持ってきたやつ」は、空き巣現場にタンバリンを持ちこんだ挙句、テンパって音を鳴らしまくる後輩泥棒を、先輩泥棒は見捨ててひとりで逃げようとするが、戻ってきて「お前を置いて逃げるわけないやろ、こんなに可愛らしいやつ」と抱きしめるという、ドラマチックなストーリーでもあった。
2019年の覇者、どぶろっくはテレビの賞レースであるにもかかわらず自分たちのスタイルを一切曲げず、決勝1本目、2本目ともに「イチモツ」を題材にした下ネタを投下。審査員の大竹一樹(さまぁ〜ず)は「こんなことでいいんだ!」と驚き、設楽統(バナナマン)は「格好良い。コントに生き様が反映されていた」と絶賛。その行き過ぎた毒性は、もはや清々しい味わいすらあった。
ニッポンの社長、かが屋の「オチのその先」を想像させて余韻を持たせるネタ
ここ3年を振り返っても、観る者の想像を超えた狂気性、毒性がコントのなかに漂っており、しかしラストはハッピーエンドであったり、幅広い意味での感動だったりが流れていた。
ただ、最高の人間をはじめとする今回のメンバーは、狂気性や毒性がありながらも近年とは傾向が違うものになるのではないか。バッドエンドであったり、あえてスッキリさせないオチの付け方だったり、異なる方向性が増えるように思える。
今回で3年連続決勝進出となり、優勝候補筆頭に挙げられるニッポンの社長も、ケンタウロスとミノタウロスの恋愛感情が歌をきっかけに結びつくコント(2020年大会)、バッティングセンターを舞台にピッチングマシーンのボールに当たりながらもひとりの青年に打撃を教えるおじさんのコント(2021年大会)など、異様さあふれる展開を見せてきた。日常のなかに潜む不気味さを表現するのがうまいコンビで、各ネタの結末はいずれもカタルシスというより、胸騒ぎを起こしたままエンディングを迎えて奇妙な余韻を持たせる。短編映画を鑑賞しているようなおもしろさと凄みがある。
同じく実力コンビで知られる、かが屋も2022年『ABCお笑いグランプリ』で喫茶店を舞台に店員と客がモメるコントを見せ、「緊張と緩和」の巧みな使い分けと、「はっきりとしたボケがないのに笑える」という内容で新感覚の笑いを誘った。同ネタはじめ、かが屋も「オチのその先」を鑑賞者に想像させる「余韻系」の結末が多い印象だ。
ほかにも、5月開催の単独ライブ『町のクチビル代理店』が傑作だったビスケットブラザーズ、『オールザッツ漫才 真夏のゴールデンSP』(8月17日放送/MBS)でのアダルトなネタも強烈だったロングコートダディなどは、完成度の高さのなかに「引っかかりどころ」をちゃんと作り、そしてすんなりとは終わらせないコント職人である。
各組、コントの最後はハッピーエンドになるのか、それとも意外なバッドエンドを迎えるのか。オチまで一瞬たりとも目が離せない。
10組すべてが大本命といっても過言ではない大激戦。準決勝を観る限り、過去1番の盛り上がりが起きそうな予感がする。決勝戦の放送日は後日、発表される。