ノルウェーでネット児童ポルノ摘発「暗室」事件 議員など51人逮捕、新生児や我が子との性行為を事前取引
ノルウェーのこれまでの道徳観を根底から揺るがす、ネット児童ポルノ事件が明らかとなった。ノルウェー西部警察署は20日の記者会見で、児童ポルノに関わったとされる51人を取り調べていることを発表。
捜査対象地域は全国で、複数のネットサイトに及ぶ。警察が押収したネットデータは、写真や動画などで150TB。20人の逮捕者が出た西部警察署だけでも、5500個のユーザーネームが捜査対象となっている。
乳児や未成年を含む子どもの裸体写真や動画が拡散され、一部ではネットでの交流から実際に出会い、大人が子どもと身体関係を持っていた。
中には、大人が子どもを裸にさせたり、性器を触るように求めたり、子どもとの性行為中の映像、また、親が自分の子どもと性関係を持つ映像をネットで共有、自分の子どもを売春させる者もいた。
妊娠中の同棲相手のお腹にいる自分の子どもを、出産後に別の男性に性行為をさせることを約束させる事件、フィリンピンにいる親子に性関係を持つ事を「注文」し、その動画をネットに流出させる事件も含まれる。
被害にあった子どもたちの多くは、褒められることに慣れておらず、チャットで大人がマインドコントロールをしていたと警察は発表。
警察の捜査が開始されたのは2015年9月。22歳のノルウェー人男性が14才の少女と関係を持った事件をきっかけに、警察が調査を進めたところ、複数のネットサイトで類似事件があることが発覚。男性たちがネットで情報交換しており、芋づる式で似たような容疑者が浮上した。警察や地元の報道関係者は、疑惑対象者が証拠隠滅を図らないように、あえて捜査内容を公表してこなかった。
全員男性、ITに関する高い知識を持ち、政治家2人も逮捕
今回逮捕された51人は、全員が男性。国籍は明らかとなっていないが、住所はノルウェー国内。20〜50代に及び、職種は、政治家、法学者、生徒、エンジニア、無職、経済専門家、運転手など多岐に及ぶ。現地報道によると、最大野党・労働党の地方議員、与党・進歩党の元国会議員も含まれる。
労働党の政治家は、10月13日より勾留され、フィリピンでの性行為動画を見るために有料動画を利用。子どもとの実際の接触は否定しているが、人身売買と性犯罪の疑いがかけられている。
5月に捜査された進歩党の政治家は、薬物犯罪に置ける関わりは認めているが、ポルノ写真を他者と共有していたことは否定している。
ノルウェー最大級の道徳観を揺るがすネット児童ポルノ事件の一つに、「暗室」
警察は事件を「暗室」事件と名付けて、特別対策チームを設置。約20人は西部警察署ですでに勾留されている。その他は国内各地の警察署が対応。
第2の規模の都市ベルゲンでは、警察官が性犯罪の疑惑で検挙されているが、警察は記者会見で事件とのつながりを否定している。
今回の暗室事件では、最新のネットワークと技術を採用。性犯罪の温床となっているネットポルノ事件の摘発において、今後大きな手助けとなると、警察は自らを評価する。
報道を控えていた現地メディア
児童ポルノサイトの利用者にはITの知識が高い者が多く、警察の動きが報道されれば、データ消去などの証拠隠滅を計られる可能性があると、警察は報道陣に忠告していた。
また、情報の透明性が高いノルウェーでは、日本と比較すると、個人情報を簡単に特定することが可能。被害者だけではなく、容疑者の家族なども大きなショックを受けていることから、現地の報道関係者はこれまで詳しい情報の流失を控えていた。記者会見で、警察署は、今後の報道でも配慮するように報道陣に促す。
ノルウェー連続テロ事件の際にも、事件の関係者に精神的な打撃を与えやすいとの懸念から、現地報道よりも国際メディアの方が容疑者の詳細をすぐさま伝えていた。
今回の現地報道にもばらつきがあり、記者会見直後はその慎重さが垣間見えた。記者会見の動画では、一部音声を消去して伝えている新聞社もある。一方、国営放送局はその音声部分も流した。
警察弁護士のヘルトネス氏は「今回の事件は、我々警察官にも恐怖を感じさせるもので、ショックを受けた」と、記者会見で語る。
警察官の息子も逮捕
ベルゲン地元紙によると、今回の特別班「暗室」を設置した西部警察署では、同署の警察官の息子も逮捕されている。息子は事件のサイトの中心人物の一人であり、警察から逃れるためのネットでの情報消去の方法を仲間に教えていたとされる。
現地報道一部