Yahoo!ニュース

アップルのプライバシー保護用骨伝導ヘッドホン特許について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:イメージマート)

「骨伝導ドライバーの活用法、アップルは新しい可能性を考えているのかもしれない」という記事を読みました。骨伝導ドライバーをプライバシー保護のために使う特許の話です。

特許番号はUS11176925、発明の名称は”Bone conduction transducers for privacy”(「プライバシー保護のための骨伝導トランスデューサー」)、実効出願日(優先日)は2019年6月21日、登録日は2021年11月16日です(去年の登録でした、なぜ今になって記事になったのかはよくわかりません)。特許化は米国のみです。

骨伝導ヘッドフォンと言えば、外部の音が聞こえやすい、耳に違和感がない、耳への悪影響が小さい、難聴者でも利用可能なことがある等のメリットがありますが、それに加えて(開放型ヘッドホンに比べれば)音漏れが小さいことを利用して、プライバシー保護に使用するというのがこの特許のポイントです。

同じヘッドホンにスピーカーと骨伝導ドライバー(トランスデューサー)の両方を用意しておき、会話がプライベートであると判断された時には、骨伝導ドライバーに切り替えて使用するというのが基本的アイデアです。

ただ、現実問題として、骨伝導ドライバー開放型(オープンエア)ヘッドホンに比べれば音漏れは小さいものの、結構音漏れします(その点ではカナル型や密閉型に劣ります)のでどれくらい有効性はあるのかという気がします。また、仮に相手側の声の音漏れがなくなったとしても、こちらが話す声は周囲に筒抜けなのでプライバシー保護の意味は半減してしまうと思います。

ということで、あまり有効性がなさそうな特許という気がしますが、権利範囲を見てみましょう。

請求項1の内容は以下のとおりです。

この記事は有料です。
栗原潔のIT特許分析レポートのバックナンバーをお申し込みください。

栗原潔のIT特許分析レポートのバックナンバー 2022年12月

税込880(記事1本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔の最近の記事