真木よう子も行った 梨泰院雑踏事故現場 いまどうなっているのか【現地取材】
そこに行くと、重たい気持ちにならざるを得なかった。
積み重ねるように捧げられた献花。仏教系団体が追悼のために流す音楽。祈る人たち。政党による大型の横断幕。
圧死事故が起きた細い路地は通行可能になっている。しかしそこを通る人は少ない。遠巻きに眺めながら花を添え、祈っている。
女優の真木よう子さんも11月上旬をそこを訪れたという。いわゆるネットがざわつく、といった状態のようだ。いずれにせよ彼女の訪問によりこの事故のことがより多く伝わっていくのは確かだ。
いま、事故現場はどういう雰囲気なのか。週末で訪れる人も多かった11月12日土曜日の様子をお伝えする。
(本稿原稿すべて筆者撮影)
事故現場は通行可能だが、多くが遠巻きに眺めていた
事故現場のソウル地下鉄6号線1号口を上がっていく。犠牲者を偲ぶメッセージを記した付箋が多く貼られている。
外国人犠牲者を偲ぶ外国語でのメッセージもあった。
黒字に白の大きな文字は「退陣が追悼だ」。左派野党支持者による尹錫悦大統領の退陣要求論。事故を政治利用している、という批判も出ている。梨泰院駅の隣の緑莎坪駅前では左派による退陣要求デモが行われた。「事故は大統領の責任である」と。
梨泰院駅の階段を上り、事故現場へと向かう。献花が積み重なるように捧げられていた。
事故現場のすぐ近くには右派与党「国民の力」(上)と左派野党「ともに民主党」(下)による横断幕が。双方同じく「梨泰院惨事犠牲者のご冥福をお祈りします」とのメッセージ。
与野党はこの追悼メッセージでの使用単語を巡っても対立。与党が当初使った「梨泰院事故」という表現に対し「偶発的に起きた出来事、というニュアンス。責任逃れの意図を感じる」と。
左奥が事故現場の路地。手前には漢字で「謹弔(謹んでお悔やみ申し上げます)」の文字が。
正面奥が事故現場の細い路地。
「10.29惨事被害者のための3千拜精進」。約2時間に渡り祈り続けること。この仏教団体による音楽もまた現場の雰囲気を大きく支配していた。
追悼メッセージ。「兄貴、会いたい…俺が兄貴の死の真相を必ず明らかにするから」。警察や消防、行政の幹部クラスへの追求が続いている。
「韓国を愛した外国人の被害者たち…忘れません。そして祈ります」。日本人犠牲者の写真も。
事故が起きた10月29日から約2週間後、11月11日は韓国では「ペペロデー」だった。日本で言う「ポッキーデー」。このお菓子を分け合う日を迎えられなかった犠牲者たち。その点を偲ぶ贈り物も。
梨泰院駅の大通りから一歩奥に入った「世界フード文化通り」。ここからの人の流れも事故を生んだ。普段は週末ともなれば人通りで賑わうが、11月12日土曜日にはほとんど人がおらず。一部オープンしていた飲食店で外国人が食事をする風景も。
通りを少し進むとこちらでも仏教系の追悼行事が行われていた。
事故現場を裏路地側から見たところ。こちら側からの人の流れもあり、事故を生んだと見られている。いま、ここを通る人も数少ないがいる。メディアの取材を受けていた。
事故現場から一本先の大通りに繋がる裏路地。人気ドラマ「梨泰院クラス」の看板も。通りにはまったく人影がなく、ひっそりとしていた。
現地を訪れていた50代の女性に話を聞いた。
「友人の子どもが亡くなりました。大学に入ったと、学生証を見せてもらった時は『写真、かわいいね』と話していたのに。ただただ悲しく、現場に行って当時の被害者の思いを少しでも知りたいと思い訪れました。せめて花だけでも捧げたかった。私が守れなくて申し訳ない気持ちもあります」
(了)