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将棋史上最強の棋士・羽生善治九段(49)竜王挑戦権を得て通算100期目のタイトル獲得チャレンジへ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月19日。東京・将棋会館において第33期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第3局▲羽生善治九段(49歳)-△丸山忠久九段(50歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は21時31分に終局。結果は99手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段はこれで豊島将之竜王(30歳)への挑戦権を獲得。もし竜王復位を達成すれば、タイトル通算100期目を成し遂げることになります。

 七番勝負第1局は10月9・10日、東京都渋谷区・セルリアンタワー能楽堂でおこなわれます。

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 羽生九段は9月27日の誕生日を迎えると50歳となります。50歳以上でのタイトル戦登場は土居市太郎名誉名人、升田幸三実力制第4代名人、大山康晴15世名人、二上達也九段(羽生九段の師匠)、米長邦雄永世棋聖に続いて、史上6人目となります。

羽生九段、満を持して2年ぶりのタイトル戦登場

 挑決三番勝負は第1局、丸山九段勝ちから始まりました。

丸山「一局一局が勝負ですので」

羽生「一手ずつ丁寧に指していこうとは思ってました」

 羽生九段が第2局を勝って両者1勝1敗で第3局に。改めて振り駒の結果、第1局と同様に羽生九段先手となりました。後手番の丸山九段は、いつも通り十八番の一手損角換わりで臨みます。

羽生「ちょっとなんていうか序盤から見通しが立たない感じの将棋だと思ってずっと指してたんですが。難しいっていうかまあ、形勢判断がつきかねるような感じでずっと進んでいったと思います」

丸山「ちょっと4筋、銀で(歩を)交換していったのはつまんなかったかなとは思ったんですけど。そのへんから方向性がおかしくなり始めたのかなあ、と」

 18時40分、夕食休憩が終わって対局再開。優位に立った羽生九段は着実にリードを広げていきます。

 77手目。羽生九段は自陣三段目に攻防の角を放ちます。丸山玉上部をにらみながら自陣を引き締め、さらには丸山九段が打ち込んできた飛車の捕獲をねらえる絶好の位置でした。

羽生「香車取って飛車取りの催促が効く形になったところは、ちょっとよくなったんじゃないかなと」

 羽生九段は香を打って自陣に打ち込まれた相手の飛車を取ります。その飛車を相手陣に打ち込んで、自然に寄せていきました。

 99手目。羽生九段が一段目の龍をさらにもう1枚の飛車取りににじりよります。これで丸山九段には適当な受けはありません。

「負けました」

 丸山九段は攻防ともに見込みなしとみて一礼。潔く投了しました。

「あ、どうも」

 羽生九段も一礼を返して対局は終わりました。

 充実著しい豊島竜王に、衰えを見せぬ円熟の羽生九段が挑む。多くの将棋ファンが臨んできた瞬間が訪れたというところでしょう。

羽生「そういう舞台で指せるということも非常にありがたいことと思っているので、気力を充実させて、開幕を迎えられたらなと思います。(豊島竜王については)まだちょっと終わったばかりなんで(笑)まだなんにも考えてないんですけど。これからしっかりと、いろんなコンディションを整えて。(50歳になってタイトル戦を戦うことは)特別なにか意識してたっていうことではないんですが、まあでも、よかったかなとは思います」

 豊島竜王の初防衛なるか。それとも羽生九段が竜王復位、タイトル通算100期を達成するか。注目の七番勝負がこれから始まります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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