文科省は汗をかかないタイムカード
教員の長時間勤務が問題視されているなかで26日、文部科学省(文科省)は働き方改革に向けての緊急対策を公表した。林芳正文科相は、「緊急対策をつうじて教師の長時間勤務を見直し、さらに効果的な教育活動へとつなげていただきたい」と胸を張ってみせた。
しかし、その効果を疑問視する声は多い。その前に、「緊急対策」といいながら、文科省自らが汗をかいて努力する内容になっていないのは問題である。
緊急対策には様々な施策が並べられているが、注目を集めているのは「タイムカードの導入」である。文科省の文書には、「自己申告方式ではなく、ICTの活用やタイムカードなどにより勤務時間を客観的に把握し,集計するシステムを直ちに構築するよう促す」と記されている。
勤務時間を厳密に把握しろ、ということだ。ただし、把握したうえでの施策が示されていない。厳密に把握すれば明らかになる「残業」への対処策があってしかるべきではないだろうか。
常識で言えば、残業には残業代が支払われるべきである。しかし、教員には残業代が存在しない。残業代がないことが、長時間労働につながるような仕事を強いている大きな要因でもある。働かせる側にしてみれば、いくら仕事をさせてもタダなのだから、どんどん仕事させたくなるからだ。
残業代に触れるとなると、当然ながら予算の確保が必要になってくる。そこで汗をかかなくてはならないのは文科省である。簡単なことではないので、それこそ大汗をかかなければならない。
しかし今回の緊急提言では、残業代にはまったく触れられていない。厳密に勤務時間は把握するが残業代は払わない、ということになる。勤務時間を把握して、自ら減らす努力をしろ、といっているにすぎない。問題解決を学校現場へ丸投げしているにすぎない。文科省は自らは汗をかかないで、現場だけに汗をかけ、といっているのだ。これでは、根本的な働き方改革にはならない。
もっとも、今回は緊急対策にすぎない。これから文科省は自ら大汗をかき、残業代についても前向きな具体策を打ち出してくるのかもしれない。それでこそ、ほんとうの働き方改革になっていく。林文科相のいう「効果的な教育活動」にもつながっていくのだろう。文科省の大汗に期待したい。