気まぐれな韓国世論 「朴槿恵恩赦」反対から一転賛成へ
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が朴槿恵(パク・クネ)前大統領の「クリスマス恩赦」を決定したことで朴前大統領は大晦日の31日、収監されてから4年9か月ぶりに「自由の身」となることになった。
「国民和合と包容の観点から、それと健康悪化が基準となった」と文大統領は恩赦の理由を明かしていたが、それにしても唐突な恩赦発表である。
朴槿恵大統領は懲役22年を宣告されているが、まだ4年9か月しか服役していない。一貫して無実を主張し、今もって罪状を認めていない。当然、反省も、謝罪もしていない。刑の執行停止さえ拒んでいた。従来の慣例からすれば、恩赦適応外である。
実際にそれらが理由で昨年2月の世論調査会社「リアルメータ」の調査では国民の半数以上(56.1%)が「釈放すべきではない」と恩赦に反対していた。(「釈放すべき」39.3%)
今年も与党「共に民主党」の大統領候補の一人であった李洛淵(イ・ナギョン)前党代表が今年1月に国民統合の観点から恩赦について言及したところ、「恩赦は国民統合に寄与しない」として56.1%が反対し、「賛成」の38.8%を大きく上回っていた。1年経っても風向きは変わっていなかった。
ところが、世論は気まぐれなのか、今回、世論調査機関「韓国社会言論研究所」(KSOI)が「クリスマス恩赦」発表後の24日から25日に掛けて全国有権者約1千人を対象に行った世論調査では「朴槿恵恩赦」に「賛成」が57.7%、「反対」が31.7%と、逆転していた。。
また、別の世論調査機関「サザンポスト」が24~25日にかけて約1千人を対象に行った世論調査でも「朴槿恵恩赦」を「良い決定」と答えた割合が59.8%に達し、「誤った決定」(34.8%)を大きく上回っていた。この結果、今回の決定で誰よりも「恩恵」を受けたのが文在寅大統領自身であった。
国民の過半数以上から恩赦決定を支持されたことで世論調査専門会社「リアルメータ」が全国約3千人を対象に実施した世論調査(19~24日)では文大統領の支持率は平均して41.1%だったが、恩赦発表のあった24日に限っては43.1%に上昇していた。
また、「朴槿恵恩赦」に反対していた与党の李在明(イ・ジェミョン)候補が恩赦発表で皮肉なことにおこぼれにあずかっていることもわかった。
「リアルメータ」の調査では李候補が前週の38%から39.7%に上昇したのに対して野党の尹錫悦(ユン・ソッキョル)候補は逆に4ポイント下げ、40.4%に下落していた。
「KSOI」の調査では李候補37.6%に対して尹候補35.8%と李候補がリードしていた。「サザンポスト」の調査にいたっては李候補が尹候補を36.6%対27.7%と、9ポイント近く引き離していた。
こうした世論の動向を踏まえ、尹候補は今日、韓国記者クラブ討論会の場で検察時代に朴前大統領を有罪に追い込み、収監させたことについて「公職者としての職分によるものとしても人間的には朴前大統領には申し訳なく思っている」と謝罪の言葉を口にせざるを得なかった。