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新型コロナに感染した人もワクチン接種をした方が良い理由 ワクチンが後遺症を改善するという報告も

忽那賢志感染症専門医
英国免疫学会、UK-CIC資料より(引用元は記事末尾に記載)

日本ではすでに170万人が新型コロナウイルス感染症に感染しており、後遺症に悩む方も増えています。

過去に新型コロナに感染した人はワクチン接種を受けるべきなのでしょうか?

また、後遺症の症状にはどのような影響があるのでしょうか?

新型コロナに感染したことがあっても再感染することがある

新型コロナに一度感染したことがある人も、再び感染することがあります。

もちろん感染したことによって免疫ができますので、すぐに再感染することはありませんが、回復してから時間が経てば経つほど再感染のリスクは高くなります。

これまでの再感染の報告からは、

初回の感染から半年程度は再感染が起こりにくい

・2回目の感染は1回目の感染よりも軽症になりやすい

免疫が弱っている人では2回目の方が重症化しうる

過去の感染による感染予防効果は約80%(ただし高齢者では約47%)

デルタ株などの変異株は過去の感染による免疫から逃れて感染しうる

・ただし、個々人によってバラつきが大きく、特に軽症や無症状であった人は十分な免疫ができずに長期間持続しないことがある

ということが分かっています。 

ワクチン接種による感染予防効果も経時的に低下するが重症化予防効果は長期的に保たれる

ファイザー社のmRNAワクチン接種後の感染予防効果の推移(DOI: 10.1056/NEJMoa2114114より)
ファイザー社のmRNAワクチン接種後の感染予防効果の推移(DOI: 10.1056/NEJMoa2114114より)

一方で、mRNAワクチン接種によって得られる免疫についても多くのことが分かってきました。

これまでのmRNAワクチンの効果に関する知見をまとめると以下のようになります。

・感染予防効果は接種後しばらくの間は80-90%と高く維持される

高齢者や持病のある人にも十分な免疫が得られる

・感染予防効果は経時的に低下し半年後には20%にまで落ちる

・重症化を防ぐ効果は少なくとも半年以上保たれている

2回のワクチン接種により重症化を防ぐ効果は長期間保たれますが、感染予防効果は経時的に低下しブレイクスルー感染が増えていることから、海外ではブースター接種が進められており、日本でも12月から行われることになります。

自然感染とワクチン接種、感染予防効果はどちらが高いのか?

自然感染した人とmRNAワクチンを接種した人の抗体推移(DOI: 10.3390/v13030422より)
自然感染した人とmRNAワクチンを接種した人の抗体推移(DOI: 10.3390/v13030422より)

ウイルスを中和するための中和抗体の量は感染予防効果と関連すると考えられています。

新型コロナに感染した後の中和抗体量よりも、2回のmRNAワクチン接種後の中和抗体量の方が高くなることからは、少なくとも接種後しばらくの間は、自然感染した人よりもmRNAワクチンを接種した人の方が高い感染予防効果があると考えられます。

実際に、アメリカの9つの州で新型コロナと診断され入院となった患者を対象に解析が行われたところ、

自然感染から90~179日後に再感染したワクチン未接種者と、

90~179日前にワクチンを接種して初めて感染した人とを比較したところ、

新型コロナによる入院リスクは自然感染した人の方が5.49倍高かった

ということが明らかになりました。

入院患者を対象としていることから、感染予防効果だけでなく重症化予防効果も自然感染よりもワクチン接種者の方が高いことを示唆しています。

自然感染とワクチン接種による免疫の違い(英国免疫学会、UK-CIC資料より 引用元URLは記事末尾に記載)
自然感染とワクチン接種による免疫の違い(英国免疫学会、UK-CIC資料より 引用元URLは記事末尾に記載)

このように、現在得られている知見からは、

感染で得られる免疫 < ワクチン接種で得られる免疫

と考えられ、これまでに新型コロナに感染したことがある人もワクチン接種が推奨されます。

新型コロナに感染した人がワクチン接種することで十分な免疫が得られる

感染したことがない人とある人のmRNAワクチン1回接種後の抗体価の推移(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことがない人とある人のmRNAワクチン1回接種後の抗体価の推移(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

過去に感染した人がワクチン接種をすることによってより強い免疫が得られると考えられています。

一例として、フランスで行われた、過去に新型コロナの既往のある人とない人それぞれに、mRNAワクチンを接種し抗体価の推移をみた研究では、過去に新型コロナの既往がある人は、初回の接種前から抗体価が高いのですが、初回の接種によってさらに抗体価が上昇し、過去に感染したことがない人よりも10〜45倍の抗体価を示しています(ピンクで囲った部分)。

過去に感染した人のうち、ワクチン接種をしていない人ではワクチン接種をした人と比べて再感染するリスクが2.34倍という報告も出ています。

新型コロナの既往のある人ではワクチン接種後の副反応は増える

感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

一方で、副反応については、過去に感染したことがない人よりも局所の疼痛や倦怠感、発熱などの頻度が高かったようです。

新型コロナワクチンでは、1回目よりも2回目の接種の方が副反応が多いことが知られていますが、過去に感染したことがある人では、感染が初回接種と同じような免疫賦与の機会となり1回目の接種が非感染者にとっての2回目の反応と同様のことが起こるのだと考えると理解しやすいでしょう。

しかし、だからといって現時点では「過去に感染した人は1回の接種で十分である」というコンセンサスはなく、過去の既往に関係なく2回の接種が推奨されています。

後遺症に悩む人もワクチン接種で症状が改善したという報告

新型コロナの後遺症に悩まれている方も、ワクチン接種によって後遺症の症状が増悪することはなく、むしろ改善することが示唆されています。

なぜワクチン接種によってコロナ後遺症の症状が改善するのかは十分に分かっていませんが、体内からウイルスが消失した後もウイルスの断片が免疫反応を刺激していたり、自己の免疫反応が続いていることによって後遺症の症状が出現しており、ワクチンはこれらの反応を抑える可能性がある、とする研究もあります。

現時点ではまだ十分なエビデンスとは言えませんが、ワクチン接種によって後遺症の症状が改善するのであれば、後遺症に有効である唯一の選択肢となります。

新型コロナに感染した人は、いつワクチンを接種すべきか?

新型コロナに感染した人がワクチンを接種すべき時期については、定まった見解はありません。

前述の通り、感染してから数カ月間は再感染するリスクは低いため、体調が整うまで待つことも選択肢ですが、退院した後や自宅療養が終わった後にはいつでも接種が可能です。

ただし、新型コロナに感染した際に抗体カクテル療法やソトロビマブなどのモノクローナル抗体の治療を受けた人は、ワクチンの効果に影響を与える可能性があることから、治療から90日以上空けることとなっています。

新型コロナワクチンは、2回目の接種をして14日間が経過すると十分な効果が得られます。

1回しか接種していない時点で感染してしまった人も、回復後に2回目の接種が推奨されます。

過去に新型コロナに感染した方もワクチン接種をご検討ください

以上のことから、過去に新型コロナに感染したことがある方も再感染のリスクがあり、ワクチン接種によってより強固な免疫を得ることができます。

後遺症の症状もワクチン接種によって悪化することはなく、むしろ改善する可能性もいくつかの研究から示唆されています。

ぜひ積極的にワクチン接種をご検討ください。

ワクチンを接種される場合は「コロナワクチンナビ」でお近くの接種できる施設についてご確認ください。

参考:COVID-19 immunity: Natural infection compared to vaccination

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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