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完璧な内容で韓国に完勝した森保ジャパンの評価基準を見誤ってはいけない【韓国戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

出場選手全員が上々のパフォーマンス

 日本代表としては昨年11月17日のメキシコ戦以来、国内の代表戦としては2019年11月19日のベネズエラ戦以来となる森保ジャパンの試合が行われ、韓国を相手に3-0で勝利を収めた。

 内容的には日本の圧勝。韓国は何もできなかった。そう言っても過言ではないだろう。

 基本布陣の4-2-3-1を採用した日本は、立ち上がりから韓国に対して激しくプレスを仕掛けると、対する韓国はそれによって出鼻をくじかれ、終始後手の対応を強いられることとなった。

 開始早々の6分と10分にゴールチャンスを作った日本にとっては、その時点で優位性を担保し、もはや先制点は時間の問題という流れに持ち込めていた。

 2-0で迎えた後半、韓国は3人の選手交代を行って軌道修正を図ると、55分頃から約10分程度はリズムをつかんだ。しかし日本も、66分に左SB佐々木に代えて小川を投入して建て直しを図ると、以降、再びペースを取り戻した。

 そして終盤の83分、コーナーキックから遠藤がダメ押しとなる追加点を決めると、そのまま試合終了。森保ジャパンとしては、まさしく理想的な勝利だった。

 ただし、この試合展開と内容は、単純に両チームのメンバーを比較しただけでも、ある程度は予想できたのも事実だった。

 試合後、「タイスコアに持ち込みたかったが、できなかった。フェアな結果だ」と完敗を認めた韓国のパウロ・ベント監督は、地元メディアからソン・フンミンなど主力がいれば結果は違ったかと問われると、「そういうことを言うのは真摯な姿勢ではない」と一蹴。

 とはいえ、客観的に見ても両サイドバックとボランチ1人以外は代表の主軸だった日本と比較すると、6~7人の主力を欠いていた韓国には対等に戦える戦力がいなかったというのが実際のところだろう。

 そういう意味で、たとえ相手がライバル国の韓国とはいえ、このホームでの親善試合の内容を過大評価してはいけない。現時点の森保ジャパンの力量を測る基準は、あくまでも昨年秋に欧州で行われた4試合にある。

 確かに今回の勝利はほぼパーフェクト。出場した選手のほぼ全員が上々のパフォーマンスを見せ、チームとしても隙を見せず、しっかりと勝利を収めたことは評価に値する。

 しかし、スケジュール未定のカタールW杯アジア最終予選が始まる前には、オプションの3バックが機能しなかったパナマ戦(2020年11月13日/○1-0)、実力差を見せつけられたメキシコ戦(同17日/●0-2)に時計の針を巻き戻して、改めて森保ジャパンの力量を冷静に見極める必要がある。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

セットピース以外に難しい処理はなかったが、シュートへの対応を含めて終始危なげないプレーを見せた。ビルドアップ時も正確なパスを味方につなぎ、起点になるプレーも。

【右SB】山根視来=6.5点

代表デビュー戦にもかかわらず持ち味を発揮。17分には川崎でのプレーを再現するかのような攻撃参加から、大迫のヒールパスから初得点を決めた。一方、守備面では課題も散見。

【右CB】吉田麻也=6.5点

キャプテンとしてチームを統率しながら、自らもミスなく安定したパフォーマンスを見せて味方に安心感を与えた。相手のプレスもなかったため、ロングフィードで好機も作った。

【左CB】冨安健洋=6.5点

前に出るディフェンスも冴え、吉田とのコンビネーションで守備を安定させた。プレーエリアも広く、自陣ボックス内を含めて相手のアタック陣にほとんど仕事をさせなかった。

【左SB】佐々木翔(66分途中交代)=6.0点

前半6分に高い位置でボールを奪った後、鎌田のシュートにつなげるパスを供給。ただし、後半はミスパスでピンチを招くなど、時間の経過とともにパフォーマンスが低下した。

【右ボランチ】遠藤航=7.0点

豊富な運動量でピッチを駆け回り、得意のボール奪取から何度もチャンスシーンを演出。後半83分にはコーナーからヘディングシュートでダメ押しゴールも決めた。MVP級の活躍。

【左ボランチ】守田英正(86分途中交代)=6.5点

約2年ぶりの代表戦だったが、欧州での成長ぶりを披露して存在感を示した。17分にはゴールの起点となる縦パスを入れて相手のミスを誘った。守備面ではデュエルの強さも発揮。

【右ウイング】伊東純也(74分途中交代)=6.0点

序盤からアーリークロスでチャンスを作った他、守備では攻撃参加した山根のカバーリングも遂行。27分には自陣での守備で鎌田のゴールにつながるカウンターの起点になった。

【左ウイング】南野拓実(86分途中交代)=6.0点

この試合では左サイドでプレーし、いつも通りの献身的な守備でチームに貢献。攻撃面でもゴール前でチャンスに絡んだ。何度かあった得点のチャンスを逃したのがマイナス点。

【トップ下】鎌田大地(HT途中交代)=6.5点

所属クラブでの成長を代表でも示すようになり、今ではトップ下のファーストチョイスに。27分にハイレベルなドリブルシュートで追加点を決めるなど違いを見せた。前半で交代。

【CF】大迫勇也(77分途中交代)=6.5点

前線でボールを収めて周囲を生かすプレーは相変わらずのクオリティ。所属クラブでの不振を忘れさせるパフォーマンスを見せた。ゴールを決めれば、ほぼ完璧な内容だった。

【MF】江坂任(HT途中出場)=6.5点

後半開始から鎌田に代わってトップ下でプレーし、嬉しい代表デビューを飾った。シュート3本を放った以外にも、83分にコーナーキックを蹴って遠藤のゴールをアシストした。

【DF】小川諒也(66分途中出場)=6.0点

後半途中に佐々木に代わって左SBとして出場。代表デビュー戦にもかかわらず、積極的な攻撃参加を見せてクロスを供給した。まずまずの内容だったため、次も出番がありそうだ。

【FW】浅野拓磨(77分途中出場)=5.5点

大迫に代わって1トップとしてプレーした。持ち前のスピードを生かしてチャンスに絡んだものの、81分に迎えた決定的なシーンでは相手GKにシュートを阻まれてしまった。

【MF】古橋亨梧(74分途中出場)=5.5点

伊東に代わって途中出場し、右ウイングとしてプレー。3度あったシュートチャンスはものにできなかったが、プレー全体としては特長である速さやアグレッシブさを見せた。

【MF】脇坂泰斗(86分途中出場)=採点なし

南野に代わって途中出場し、左ウイングでプレー。代表デビューを果たした。出場時間が短く採点不能。

【MF】川辺駿(86分途中出場)=採点なし

守田に代わって途中出場し、ボランチでプレー。代表デビューを果たした。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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