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アマゾンが旅客機を買いあさるワケ 15億円のボーイング11機購入

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
画像出典:米Amazon.com

 アマゾン・ドット・コムは先ごろ、ボーイングの中型旅客機「767-300」11機を北米の航空会社2社から購入したと明かした

 2020年3月にカナダのウエストジェット航空から4機購入しており、現在貨物機に改造中。21年内にも同社の航空貨物事業に導入する予定だという。

 また、米デルタ航空からも7機購入しており、こちらも貨物機にして22年から運航を始める。

航空旅客需要の落ち込みが背景に

 同社はこれまでリース契約で機材を調達していたが、今回初めて購入し、自社で所有することにした。

 その背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響による旅客需要の落ち込みがあると、米CNBCは報じている。

 旅客航空会社は、対策として機材の削減を進めている。航空機は使用しなくても整備費や駐機料などの固定費がかかる。古い機材の早期退役を進めるなどして保有機を減らしコスト削減を図っているという。

 これに伴い中古機の価格が下落している。「ボーイング767-300ER」の場合、20年12月時点の価格は同年初頭から15%下がった。デルタ航空の製造後20年経過した機材は1300万〜1400万ドル(約14億〜15億円)で買えると専門家は話す。

 一方、新型コロナウイルスによる在宅の広がりで、電子商取引(EC)の需要は急増している。

 アマゾンは声明で、「顧客の期待通りに商品を届け続けることが我々の目標だ。航空機の購入は目標に向けた次のステップ。自社機材を持つことで、航空貨物輸送の業務管理が効率化される」と述べた。

22年までに85機超の貨物機

 アマゾンが航空貨物事業「Amazon Air」を始めたのは2016年。当初は米航空貨物会社エア・トランスポート・サービシズ・グループ(ATSG)やアトラス・エア・ワールドワイド・ホールディングからボーイング767-300を合わせて約10機リースした。

 その後、2社との提携を拡大し、19年には米ゼネラル・エレクトリック(GE)の航空機リース部門、GEキャピタル・アビエーション・サービシズ(GECAS)とも提携。CNBCによると、20年9月までにAmazon Airの貨物機は約70機になった。

 今回の報道によると、アマゾンは22年までにリース機を含めて85機超の貨物機を抱えるという。

巨大航空貨物ハブを21年内にオープン

 アマゾンは、航空貨物施設にも積極投資している。ニューヨークやサンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴ、オースティンなどの国際空港に航空貨物ハブを持つほか、20年にはドイツのライプチヒ・ハレ空港に同社初の海外ハブを開設した。

 また、ケンタッキー州に約15億ドル(約1600億円)を投じて巨大ハブを建設中で、これが21年内にオープンする予定。同州ヘブロンの「シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港」内の施設で、その面積は約28万平方メートル(東京ドーム6個分)。

 米フォックス・ビジネスによると、この施設は将来、より大規模なものになるという。アマゾンはこの空港で今後50年にわたり、その13倍に当たる900エーカー(東京ドーム78個分)の敷地を賃借する契約を結んでいる。この施設にはアマゾン専用貨物機を100機駐機できるという。

 アマゾンは今回の発表資料で環境にも配慮すると強調している。昨年は環境への負荷が小さいジェット燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」を600万ガロン購入した。空港地上サービス用の特殊車両の電動化も進めている。今後は一部施設の屋根に太陽光パネルを設置するという。

  • (このコラムは「JBpress」2021年1月7日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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