三週末、どこ行く? まだ間に合う!「ひとり温泉」で紅葉を堪能”絶対外さない”≪1泊2食1万円代の宿≫
上越新幹線に乗車すれば1時間。
群馬県みなかみ町は、紅葉の見ごろのようだ。
みなかみ町観光協会 みなかみパーフェクトガイド みなかみ町紅葉情報
そんなみなかみに湧く温泉とは――。
水源の町・みなかみには、清らかなお湯が湧く。
18もの温泉が湧いているのも、やはり谷川連峰の恵みである。
谷川温泉の「旅館たにがわ」でダムカレーを食べ終えた後、お隣の「水上山荘」を訪ねると、ロビーの大きな窓から谷川の山々が眺められた。山の頂上にはまだ残雪が見え、緑が濃くなってきた木々とのコントラストが鮮やかだ。窓が額縁となり、あたかも絵画のよう。
その眺めは露天風呂からも同じで、湯船に腰を下ろすと、ちょうどよい位置に谷川岳が見えるため、湯に浸かりながら谷川の自然を独り占めしたような気になる。
谷川温泉を後にして、湯檜曽温泉に向かう。
水素イオン濃度(PH値)が人の肌に近いことから、赤ちゃんも安心して入浴できることで知られる湯檜曽温泉。「林家旅館」は昭和初期に造られたタイル張りのお風呂が風情豊か。「なかや旅館」は湯の特質から赤ちゃん歓迎の宿として人気を誇る。
18もの温泉が湧くみなかみは、JR上毛高原駅や水上ICを境に、大きく2つのエリアに分けられる。川場村に隣接する右側には月夜野温泉、上牧温泉、水上温泉、谷川温泉、湯檜曽温泉、川古温泉、宝川温泉が湧く。藤原ダム、須田貝ダム、奈良俣ダム、矢木沢ダムもこちら側だ。
新潟県湯沢町や苗場に隣接する左側には湯宿温泉、猿ヶ京温泉、法師温泉が湧き、相俣ダムがある。
湯治の宿として知られる川古温泉には緑の木漏れ日に包まれて入浴できる絶景露天風呂がある。人里離れた秘湯だから俗世から離れられて、こんなところに2~3泊できたらどんなにいいか。
たくみの里近くにある湯宿温泉はかつて三国街道筋だった名残りからか、石畳の小路を歩くと、時の流れが他とは異なると感じる。妙に落ち着き、郷愁すら覚えるのは、温泉情緒があるからだろう。
宝川温泉は川沿いに延べ約470畳もの混浴露天風呂があり、タオルのレンタルもあるが、男女ともに湯あみ着着用。家族でお風呂に入るのによいのではないか。
法師温泉は明治8年に「長寿館」を創業。この時の「本館」、明治28年に作られた大浴場「法師乃湯」、昭和15年に建てられた「別館」は国の登録有形文化財に指定されている。ここは多くの文人墨客を呼んだ。昭和初期には与謝野鉄幹・晶子夫妻。数年後には川端康成や直木三十五。それぞれ「本館」に泊まった。「本館」は築150年になるが、立派な柱と太い梁は当時のままだ。
大浴場「法師乃湯」は度々、旅雑誌の表紙を飾る。50畳もの広さの混浴の浴場。日中の灯りはアーチ型の小さなガラス窓から差し込む光のみで、そのほの暗さに落ち着く。
このようにロケーションや情緒はバリエーション豊かだが、概して、みなかみの湯は全て美しく、優しい。温泉は単純温泉や硫酸塩泉からなり、湯上がりは、もっちりとしたつややかな肌に仕上がる。
全ては水源の町ゆえの産物である。
※この記事は2024年9月6日に発売された自著『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)から抜粋し転載しています。