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南アフリカ代表フーリー・デュプレアから見た、日本代表の「ブライトンの歓喜」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ニュージーランド代表と熱戦を繰り広げるデュプレア(写真手前)。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

昨年9、10月のラグビーワールドカップイングランド大会で南アフリカ代表だったフーリー・デュプレアは、同11月、東京都府中市にある所属先・サントリーのクラブハウスで大会を振り返っている。

2007、11年のワールドカップにも出場したデュプレアは、視野が広くパスが正確なスクラムハーフとして世界のラグビー界でその名を知らしめて来た。もっともイングランド大会の予選プールB初戦では、途中出場ながら日本代表に大会24年ぶりの白星を献上。過去2回優勝の母国代表にあって、大きなバッシングにさらされた。

その後は代理キャプテンとしてチームの再建に着手。3位で戦い終えていた。

以下、一問一答。

――まず、最近の日本最高峰トップリーグの話題を。今季、各クラブに新加入した南アフリカ代表選手は、大会後から開幕まで約2週間の準備(個人での休養含む)でデビューを果たし、皆、各チームにフィットしています。驚いているのですが。

「自信を持ってワールドカップを戦い終えられた部分が大きい。精神的にいい準備をして日本に来ているのだと思います。全員、ワールドクラスの選手ですし…」

――スタッフが提示する戦術を理解するのも、速い。

「そうです」

――ワールドカップについて。南アフリカ代表は8月にアルゼンチン代表に敗れるなど、大会前から苦しい状態でしたが。

「自分は怪我でその時はプレーしていなかったのですが、ワールドカップへの準備はよくなかったと思います。アルゼンチン代表に負けたことで自信を失っているところもあった。日本代表に負けた時も、自信が欠けていた部分があったのかもしれません」

――大会前、現地入り後の様子は。

「雰囲気は悪くなかったと思います。日本代表との試合に負けた後はいい状態ではなかったですが、その後は選手同士で話し合っていい状態に持って行けた。そこで落ちるかステップアップするかのチョイスがあった。そこで、どの選手も後者を選んだ。日本代表戦への準備は十分ではなかったかもしれませんが、ワールドカップ全体への準備はなされていた」

――正直に言って、日本代表戦はどう捉えていたのですか。

「そこまで警戒はなかったです。南アフリカ代表の選手には、日本の試合をそこまで観たことがない人もいた。ワールドカップで日本代表が起こした功績は、世界中の選手の見る目を変えたと思います」

――試合前、当時の日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、メディアを通してあなたがたへ圧力をかけていました。

「そこまで知りませんでした。ワールドカップが始まる前、彼とは話をしました。『自分たちを倒せると信じている選手は何人かいる』と。信じることですべては可能。それを全ての人が学べたと思います」

――当日、試合をベンチから観ての印象は。

「こういう展開になるのかな、とは想像していました。自分たちは悪いラグビーはしていない。ただ、自分たちのペースではないなと。相手のペースでラグビーをしてしまったと思います」

――モール、押せるのに組まなかったような。

「あの試合ではモールはあまり組んでいません。フェーズラグビーを多くしていました。日本に対して、それはよくないやり方だった。どの選手たちも、試合中に上手くいくと、過信していたのかもしれません。あの試合で、気付けたと思います。日本代表戦後、強みを出していこうという話はしていました」

――その後、準決勝まで勝ち上がってゆきます。

「自分のキャリアのなかでも、大きな経験だったと思います。途中から(負傷したジャン・デヴィリアスに代わって)キャプテンを任されたことも光栄でした。スカルク(・バーガー、フランカーでサントリー所属)がバイスキャプテンになったことも大きかった。プレッシャーのなかでプレーできた。ワールドカップでも、オールブラックス(優勝したニュージーランド代表)とも接戦(準決勝で18-20と敗戦)。悔しいですけど、最後の2パーセント、届かなかった。それが何かはわかりませんけど」

――日本代表戦とそれ以降では、明らかにランナーのヒットの質が違った。

「ジャパンの試合の後、レベルが上がったと思います」

――ゲームプランも簡潔に。

「少しシンプルになりました。ジャパンの試合の後はもう少しモールも組むようにしました。状況判断をもっとよくしなければ、という話もしました。大きな身体の選手を当てて、それから外に回すというプレーの選択をしました」

――いま(11月下旬)、サントリーでプレーしていますが…。

「もしかしたら、自分の最後のシーズンになるかもしれません。現在の段階では、多分、ですが。自分のベストを尽くしてプレーしたい。周りの選手を助けていきたい」

――そういうなか思う、ラグビーの面白さは。

「チームメイトのためにプレーすること。厳しい練習をして、練習以外の場所でもいい時間を作って楽しんでゆくこと…。ラグビーでは、たくさんの感情を表せます。そしてたくさんのチャレンジを乗り越えれば、いい結果が得られます」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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