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甲子園での初先発、育成4年目・島本浩也投手が5回無失点の好投!

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

15日も阪神甲子園球場でのソフトバンク戦でした。甲子園で行われるウエスタン・リーグの今季最終戦、それに爽やかな好天とあり3日間で最多の1723人のお客様が来場されました。開門時のお出迎えは伊藤和投手、岩貞投手、北條選手、横田選手。また試合後の夕方、球場前のタイガースショップ・アルプスで開催されたサイン会(握手会)には一二三選手、松田投手、北條選手が参加。右手人差し指の突き指で試合に出ていない北條選手も「右手で握手?まったく問題ないですよ」と笑顔です。

この日は島本投手、帆足投手の先発。3日の広島戦で甲子園初登板を果たした島本投手が、今度は初めて甲子園の先発マウンドに上がりました。公式戦3度目の先発です。投手は交代しながらも両チーム得点なしで試合は進み、投手戦というか…阪神の方は単に攻めきれていない感じでしたね。そして9回に2ランを浴びて連勝は6でストップ。この日は広島が負けたため、ソフトバンクが首位に戻っています。

《ウエスタン公式戦》6月15日

阪神-ソフトバンク 13回戦 (甲子園)

ソフ 000 000 002 = 2

阪神 000 000 000 = 0

◆バッテリー

【阪神】島本-渡辺-榎田-玉置-●小嶋(1勝4敗4S) / 鶴岡-小宮山(6回~)

【ソフ】帆足(3回)-○大隣(2勝)(5回)-S金無英(1敗1S)(1回) / 拓也

◆本塁打 塚田8号2ラン(小嶋)

◆二塁打 福留、伊藤隼

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]右:福留   (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .222

2]二一:黒瀬  (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .192

3]中:狩野   (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .274

4]三:陽川   (4-1-0 / 3-0 / 0 / 0) .220

5]一:原口   (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .371

〃走二:荒木  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .316

6]指:高山   (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .190

〃打指:伊藤隼 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .259

7]捕:鶴岡   (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .231

〃捕:小宮山  (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .148

〃打:森田   (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .237

8]左:一二三  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .163

〃打:日高   (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .236

9]遊:西田   (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .245

〃打:岡崎   (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .275

〃遊:阪口   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .245

◆投手 (安-振-球/失-自/防1御率) 最速キロ

島本 5回 66球 (2-3-2 / 0-0 / 3.09) 140

渡辺 1回 6球 (1-0-0 / 0-0 / 0.52) 143

榎田 1回 13球 (0-1-0 / 0-0 / 1.37) 141

玉置 1回 14球 (0-1-0 / 0-0 / 3.43) 145

小嶋 1回 16球 (2-1-0 / 2-2 / 4.84) 143

相手の倍、10安打も放ったのに…

島本は1回1死から李杜軒に四球、牧原に右前打されるなど2死三塁としますが、後続を断って切り抜けました。2回は2死から安田に中前打と盗塁を許すも、真砂を投ゴロで無失点。3回と4回は三者凡退。5回に先頭を四球で出し、安田のバントを二塁へ送球しますがセーフ、一塁転送もセーフで犠打野選。無死一、二塁となります。しかし真砂を左直、亀澤の投ゴロで今度はしっかりと併殺!5回2安打無失点で役目を終えました。

久々に登場のリリーフ陣は、6回の渡辺が牧原に左前打されたものの併殺など3人で片づけ、榎田と玉置はビシッと三者凡退。ところが0対0のまま迎えた9回、1死から小嶋が牧原にセーフティーバントを決められます。小嶋と一緒に黒瀬も打球を追い、空いた一塁に荒木が向かうも間に合わず…という感じですね。猪本は右飛に打ち取った小嶋でしたが、続く塚田に初球の真っ直ぐをレフトへ。一二三はほとんど動かない完ぺきな2ラン。

打線は3回と4回を除く毎回、ヒットや四球で走者を出しながらホームが遠く無得点です。全部で10安打、1番から7番までみんな打っていますが、6回以外はランナーが二塁までしか行っていないんですね。その6回は1死から福留が右越え二塁打、黒瀬の四球で三盗失敗、狩野が中前打で2死一二塁。陽川が左前打を放って黒瀬が生還…できず、ホームでタッチアウトとなりました。

「前にやられたから今日こそは」と小鷹打線を抑えた島本投手。いい疲労感でしょうね。
「前にやられたから今日こそは」と小鷹打線を抑えた島本投手。いい疲労感でしょうね。

平田監督は「島本はずっといいよ。前回は雁の巣で、野手が足を引っ張って失点したけど。上背がない分、球のキレはいい。立ち合上がりに不安はあったが、リリーフはいっぱいいるから1回1回、1人1人をアウトに取るという意識でやれと話した。それができていたね。鶴岡のリードもよかった。バッターをよく観察してるわ」と、先発としての島本投手に好印象のようです。

それから「原口はいいなー。素晴らしいなー。ファーストの守備もできてたし。(打線が)ヒットを10本打って1点も取れなかったのは監督の責任や。しかし帆足や大隣、いかにチャンスでボールを振らせるかを知っているね。ボール球を振るとチャンスが減る。陽川にしてもそう。そのへんやね。この3試合とも緊張感があってよかった。反省することはして。初球からボッカーンって…。塚田はなあ」と断片的に?試合を総括しました。

立ち上がりの不安を乗り越えた島本

支配下選手を目指して奮闘中の島本投手は、この日が公式戦3度目の先発。甲子園の、まだ誰も立っていない綺麗なマウンドは「気持ちいいですねえ!」と言っていました。「この前ソフトバンクにやられたんで、きょうこそはと思っていた」リベンジの舞台。「よかったですね。初回は球が上ずって振り切れていない感じで…久保コーチから『打たれたもいいから思いきり腕を振っていけ』と言われました。2回からは低めにと意識して、あとは鶴岡さんのミットだけめがけて投げました。フォーム的に重心を低く、しっかり投げ切るように、投球練習から意識してやったのがよかったと思います」

鶴岡選手には「投げたい球を言ってくれたらということだったので、一度(2回の安田選手に対して)サイン全部に首振って真っすぐを投げたら…センター前に打たれて(苦笑)。やりたいことはわかるけど、そこに投げるならボールでと言われました」とのこと。また5回の野選で無一、二塁となった時はマウンドへ足を運んだ鶴岡選手に「俺のミスやから気にするな」と言葉をかけられたそうです。あれは打球を捕った島本投手に鶴岡選手が「セカンド!」と指示を出したものだったんですね。そのあと2死後にピッチャーゴロで、きっちり1-6-3の併殺を取り無失点で締めたられたのは気持ちよかったでしょう。

この時の決め球は126キロのチェンジアップ。「しばらく投げていなかったけど、チェンジアップ主体で投げろと言われたんです。1球投げた時に鶴岡さんが、使えるって思ったのかも。だからメッチャ投げましたよ。ほとんどチェンジアップ(笑)。これからも使っていこうと思います。しばらくフォークに変えてよかったから使ってなかったけど、今後は使い分けて」

昔から長いイニングを投げることは好きだと話していた島本投手ですから、まだまだ投げたかったと思いますが、なんせ前の2試合で二神投手と秋山投手が完封、完投だったためリリーフ陣の出番がありませんでした。よって、次で終わりと5回が始まる前に言われたとか。「スタミナに問題はないけど2回り目、3回り目になった時はこれからの課題。もう少し長いイニングを投げられるようにしたい」と、次の先発マウンドに思いを馳せています。

飲まず食わずで観戦のご家族

この日は島本投手のお母さんとお兄さん2人、それに一番上のお兄さんの奥さんとお子さんも観戦されていました。お父さんは仕事があって欠席。父の日だったのに残念ですねえ。お母さんに伺ったお話をご紹介します。「高校時は先発だったんですけど、その当時から立ち上がりが案外悪くてヒヤヒヤしていました。きょうもそうでしょう?もうドキドキで(笑)。兄も、緊張してるなと言っていたんですよ。でも2回から大丈夫でしたね」

とはいえ、まだ心配は続きます。「何回まで持つかなと。それに前は8失点したから、何とか大量失点だけは…と祈っていました。フィルダースチョイスの場面はもう1点覚悟したんです」とお母さん。実は昼食に手をつけず見守っておられたそうです。家族揃って。「投げ終わってから御飯を食べました。ナゴヤの初先発の時もそう。あの日は父親もいて、やっぱり食べずに見ていましたね。だって喉を通らないんですよ」。14時過ぎのランチだったかもしれませんが、お気持ちはよくわかります。

島本投手本人はやはり「緊張した」と話していたみたいですよ。我々には言わなかったけど(笑)。お母さんも3日のリリーフ登板は見られなかったため「甲子園で投げるのを見たのは初です。テーマ曲も初めて聴きました!」と感激の様子です。

「甲子園で投げるなんて、もう最後だと思って行きました」

育成5年目はないだろう、支配下になったとて安心はできない…そんな思いを常に抱えているとおっしゃいます。3月のケガから復帰しての今だけに「ケガなくやってくれること、それが一番」とお母さん。

ところで15日は父の日でしたが、島本投手から何かアクションは?「何も。電話はしてきたけど、他の用事で。小さい時から父の日は何もなかった気がしますよ。母の日はしてくれますが」とお母さんは笑っておられました。お父さん、寂しいですねえ。甲子園での勇姿も見られなかったし、テレビ中継もなくて。でも父の日に投げ、しかも5回無失点というのが何よりのプレゼントでしょう。

なお試合後には、そのまま甲子園のグラウンドでシートバッティングが行われました。登板した岩貞投手の話と、平田監督が「いいなー」を連発していた原口選手のコメントは次回の分でご紹介します。ほんの少しお待ちください。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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