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レッドソックスが球場内での人種差別行為を認める声明を発表

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
フェンウェイ・パークで人種差別的な中傷を受けたことを明かしたトリイ・ハンター氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【レッドソックスが声明を発表】

 レッドソックスが現地時間の6月10日、以下のような声明をツイッター上に投稿している。

 「トリイ・ハンター氏の体験談は事実です。

 自分が経験していないからといって彼を疑うのであれば、我々を信じてください。実際に起こっていることです。

 昨シーズンのことですが、フェンウェイ・パークでファンが人種差別的な中傷を行った7件の事案が報告されています。これはあくまで我々が確認できたものだけです。

 中傷は選手に向けられたものだけではありません。試合日に我々のために現場で働く黒人従業員も被害に遭っています。着ているユニフォームは異なりますが、彼らの証言と体験は、等しく重要だと捉えています。

 不公平に声を上げる多くの人たちの声を広めていくため、すべての人たちが我々をプラットフォームとして活用してくれることを期待しています。

 我々は球場内で人種差別的な中傷やヘイトスピーチを行うファンが存在しているという確かな証拠を掴んでおり、それにしっかり対処しなければならないと感じています。少数のファンのこうした行動が我々の総意を象徴しているものではなく、組織としてしっかり取り組む必要がある、より大きな社会的問題を反映したものだと考えます。

 本当の意味での変化は内側から始まります。今後より良い活動を展開する上で、我々が皆さんの声に耳を傾けることを知っておいてください。我々は皆さんの声を聞き、皆さんを信じています」

【ハンター氏のラジオ番組での発言が契機に】

 レッドソックスがこの声明を発表したのは、声明の冒頭にあるようにハンター氏の経験談が契機になっている。

 ハンター氏がESPNのラジオ番組に出演し、19年間の現役生活の中でボストンでの遠征で度重なる人種差別的な中傷を受けていたと告白するとともに、契約交渉する際は必ずレッドソックスへのトレード拒否権を盛り込んでいたことを明らかにしていた。

 今回の声明は、ハンター氏の発言を認めた上で、今後厳しく人種差別に対処していく姿勢を示したものだ。

 ハンター氏はレッドソックスの声明をリツイートし、「今変化が始まろうとしている。大きな愛を込めて」というメッセージを添えている。

【すべての主要リーグが人種差別撲滅へ動き出す】

 米国社会では現在、人種差別が最大のトピックになっているのは間違いない。

 ミネソタ州で起こった白人警察官による黒人男性暴行死事件に端を発し、今も全国各地で大規模な人種差別への抗議活動が続いている。

 こうした状況を受け、MLBをはじめ米国の主要リーグはすべて人種差別を否定するとともに、リーグ内での人種差別根絶を宣言する声明を発表するに至っている。

 ちなみにハンター氏は別のラジオ番組に出演し、ボストンだけではなく、カンザスシティやシアトルでも同様の中傷を受けたことを明らかにしているし、ハンター氏以外にも過去に人種差別的な中傷を受けた選手は決して少なくない。

 今後はレッドソックスのみならず、各チームで人種差別に対処する動きが求められることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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