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ホームランを打たれまくったチームが、外野のフェンスを後ろに下げて高くする。その効果は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズ Sep 23, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ボルティモア・オリオールズは、本拠地としているオリオール・パーク・アット・カムデンヤーズに変更を施す。レフト側のフェンスを26.5フィート(約8.1m)後ろに下げ、5.6フィート(約1.7m)高くする。

 それまでの距離は、レフトのポールまでが330フィート(約100.6m)、左中間は364フィート(約110.9m)。レフト側のフェンスの高さは、7.4フィート(約2.3m)だった。ポールまでの距離は、今年も変わらない。

 カムデンヤーズは、ホームランが多く出る球場だ。

 昨年、オリオールズの投手は、258本のホームランを打たれた。その内訳は、ホームで155本、アウェーで103本だ。合計の本数とホームの本数は、どちらも30チーム中最多。アウェーの本数は、多いほうから数えて12番目だ。一方、オリオールズの打者は、195本のホームランを打った。こちらは17位。ホームの122本は4番目に多く、アウェーの73本は2番目に少なかった。

 スタットキャストによると、オリオールズの投手がホームで打たれた155本塁打のうち、左方向へ飛び、推定飛距離が390フィート(約118.9m)未満だったのは、16.1%の25本。オリオールズの打者がホームランで打った122本塁打は、13.9%の17本がそうだ。フェンスの位置と高さの変更が1年早かったとしても、このすべてがフェンスを越えないとは限らないが、少なくとも、それぞれ10本前後は、外野フライ、二塁打、三塁打、あるいは単打になっていたのではないだろうか。また、390フィート以上でも、フェンスに当たって跳ね返る打球もあるはずだ。

 それ以上に大きいのは、選手に与える影響だろう。これまでと比べ、投手はホームランを恐れず、大胆に投げることができる。

 なお、昨年のア・リーグ本塁打トップ3は、いずれもこの球場でホームランを打っている。48本塁打のブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)は4本、ゲレーロJr.と同本数のサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)と2本差の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は1本ずつだ。ただ、この計6本のなかに、左方向へ飛んだ400フィート(約121.9m)未満のホームランは皆無。レフトのフェンスがどうであれ、本塁打王の行方を左右することはなかったと思われる。

 両リーグで唯一人、30-30を達成したセドリック・マリンズ(オリオールズ)も同様だ。30本塁打のうち22本をこの球場で打ったが、こちらも、左方向へ飛んだ400フィート未満のホームランはなかった。マリンズは、左打者だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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