「同性婚、菅総理に賛成してほしい」国会で法制化求める集会開催
同性婚の法制化を求める院内集会「第2回マリフォー国会」が開催。新型コロナ対策のため、会場は国会議員や訴訟の原告らの参加に限定し、オンラインで配信された。
主催したのは、一般社団法人Marriage For All Japan。共同代表の寺原弁護士は、昨年11月に初開催されたマリフォー国会から1年間で、「進んだこと」と「進まなかったこと」があると話す。
「進んだことは、パートナーシップ制度の導入自治体が全国各地で飛躍的に増え、パワハラ防止法でSOGIハラやアウティングが明示されたこと。7割強の人が同性婚に賛同するに至ったこと。134もの企業が同性婚への賛同を表明したことなどです。
一方、残念ながら進んでいないのは、国会での審議です。(同性婚に関する)政府の回答は、『慎重な検討を要する』というもので、1年前と変わっていません」
現在、5つの地裁で同性婚の法制化を求めて「結婚の自由をすべての人に訴訟」が提訴されている。
「原告、そして弁護団はこうした現状から”止むを得ず”裁判を起こしたのであって、私たちが望むのは、裁判の結果がでる前に、1日でもはやく国会で同性婚が法制化されることです」と語った。
来年3月17日に日本で初めての判決
5つの地裁のうち、最も進んでいるのは札幌地裁で行われている裁判だ。既に審議は終えており、来年3月17日の判決を待つ状況だという。
北海道弁護団の須田弁護士によると、被告である国は、「伝統的に婚姻は生殖と結びついて理解されてきた」、「(異性愛者も含めて)誰もが同性と結婚できないのだから平等だ」「同性であっても異性であっても人生のパートナーにはなれるから人権侵害ではない」などと主張しているという。
裁判所は国に対し、「同性婚を認めることがどのような影響を社会に与えるか」について説明を求めると、国側は「検討していないので出せません」と述べた。
須田弁護士は「3月17日、日本で初めて、同性婚を認めない法制度の違憲性を問う司法判断が下されます。裁判の結果がどうなっても、次は国会議員のみなさまの出番です。同性婚が制度化されることを全国から願っています」と話した。
同性婚訴訟を闘う原告も全国から駆けつけた。
原告の一人であるこうぞうさんは、熊本でパートナーと猫4匹とともに暮らしている。
「当たり前の権利を望む声を上げると『特別扱いされたいのか』という声が聞こえてきたりもしますが、好きな人が同性であると家族にさえなれない、これこそ国が率先して行っている特別扱いであり差別じゃなくして何なのでしょうか」
「僕は父を早くに亡くし、パートナーのゆうたは昨年母親を亡くしています。残された僕の母もゆうたの父も高齢です。親が存命の間に、自分が生まれたこの国でゆうたと公的な家族になり、互いの家族に祝福され、一緒に喜びを分かち合いたい。これから先、楽しいことも辛いことも、2人で分かち合い生きていく支えを僕らにもください」
福岡で共に暮らしているこうすけさんとまさひろさんも原告のひと組みだ。
こうすけさんは、30年間自身のセクシュアリティを明かさず生活してきた。
「一昨年、僕は父を亡くしました。父が病床に伏しているときに僕はカミングアウトしました。親にさえ、死別の直前まで本当のこと言えない人生でした」
遺産相続の場は、息子だから、配偶者だからと関係性に応じて税金の配分の話が淡々と進められ「相続って冷たいんですよね」と語る。
「その時思ったことは、自分が死んだら、彼に何を残せるんだろう、ということでした」
「僕は、自分が死ぬ時は、まさひろさんにそばにいてほしいし、自分が死んだ後も、まさひろさんには幸せに生きてほしい。まさひろさんに何かあったら、私が全力で、彼の人生を看取りたい。世間では、そう思った人達が、結婚をするのではないでしょうか。私達が結婚できないのは、なぜでしょうか」
「特別な権利ではなく平等に、自分の人生を幸せにする選択の権利を下さい。国は滅びません。幸せになる人が増えるだけです。1日でも早く、その日が来ることを願っています」
東京訴訟の原告、小野さんと西川さんは3人の子どもを育てている。
小野さんは「共に子育てをして16年、子どもたちには結婚ができないことで『認められない家族』『格下の家族』という思いをさせないように育ててきました」と語る。
「今、裁判をやっておりますが、子どもたちは『母さんたちかっこいい』『僕たちは運命共同体』といってくれています。同性婚が認められないことで、その家庭に育つ子どもたちも一緒に頑張っているのです」
小野さんは子育てをするLGBTの当事者らのコミュニティ「にじいろかぞく」の代表もつとめている。
「たくさんの子育てをするLGBTの家族がいます。みんなごくごくふつうに子育てを頑張っている家族です。『家族』を語るときに、私たちのような家族を見えないものにしないでいただきたいのです。異性カップルと同じように暮らしている家族に、差をつけないでいただきたいのです」
また、小野さんは4年前にがんが見つかり、今も治療を続けていることを語った。
「1年前のマリフォー国会の時は、青森からステージ4のがんを闘っている真っ最中のレズビアンの友人がここでスピーチをしてくれました。
同じような当事者が複数おり、友人たちのことを思うと胸がつぶれそうになります。1日も早く同性婚を実現してください」と語った。
同性婚認めない国、企業の役員としても危機感
Marriage For All Japanは今月9日、同性婚の法制化が日本社会にもたらす経済的な影響についてまとめたレポートの日本語解説版を発表した。
さらに、18日には同性婚の法制化に賛同する企業を可視化するためのキャンペーン「Business For Marriage Equality」を立ち上げた。既に130以上の企業が同性婚法制化に賛同している。
マリフォー国会では、賛同企業の一つであるEY Japan 最高執行責任者の貴田守亮さんが、企業の視点、そして同性のパートナーを持つ当事者の一人として同性婚の必要性を語った。
貴田さんは幼い頃からアメリカで暮らし、公認会計士になってから25年、EYに所属している。
4年ほど前に「日本に異動しないか」と打診された貴田さん。「同性婚が認められていない中、夫には配偶者のビザをとることができないので、すごく悩みました。結局、夫はキャリアのためなら我慢しようと言ってくれて日本にやってきました。
しかし、もし夫が仕事を失ったら国外退去になります。そう考えると、日本で家を買って定住したいと思ってもなかなか踏み出せません」
貴田さんの周りのLGBTの当事者でも、既に「日本では結婚ができないから」「子どもを持つことができる国に行きたいから」と海外の拠点に移りたいという相談を何度も受けているという。
海外の拠点で働く当事者の同僚からも「アジア太平洋地域で働ける所を探していて、日本も候補の一つだけど、日本のいまの法律の状況を考えると、パートナーと一緒に行くことは考えられない」と言われたという。
「企業の視点では、人材の流出や高度人材の招致の点からも、同性婚の法制化が必要です」
若い世代ではLGBTであることをオープンにする人の割合も増えている。「日本もこの先の時代を想定して制度設計をしないと、良い人材を採用できず流出し続けます。企業の役員としても危機感を抱いています」と語った。
菅総理に賛成してほしい
第2回マリフォー国会には与野党を超えて、多くの国会議員が参加した。
立憲民主党の辻元清美議員は、昨年野党が婚姻平等法案を国会に提出していることを踏まえ「これに、ぜひ菅総理に賛成して欲しいと思っています」と語った。
「菅総理は『悪しき前例主義の打破』とか『規制緩和』と言っています。ぜひ結婚の規制緩和をやっていただきたいですよね。
愛する人と結婚したいということはあたりまえのことです。菅総理は『国民のあたりまえを大事にする』と言っています。じゃあ結婚のあたりまえもやってもらおうじゃないかと。
すべての人が愛する人と結婚できる自由を求めて、『総理、総理』と頑張っていきたいと思います」
公明党の谷合正明議員は、「9月の党大会で、今後の重要政策課題として、同性婚実現のために議論を深めるべきではないかと問題を提起しました。若手の中では、実現すべきという声もたくさん頂戴しています。
自治体のパートナーシップ制度の動きが進んでいますが、3〜4年前はこの制度に対する懸念の声もありました。今はもうそういう状況ではなくて、時代と共に変化しています。政治が後追いになっていることは否めませんが、どう政治がイニシアチブを作れるかということだと思います。一緒に汗を流したいと思っています」
日本維新の会の音喜多駿議員は、先日東京都足立区の自民党区議が「同性愛が広がれば足立区が滅びる」と発言したことに触れ、「一方で、これが話題になったことで足立区のパートナーシップ制度導入が進みました。
知らないから偏見が生まれてしまうのだと思います。私も以前は知識不足から失礼な発言をした過去があります。偏見をなくすために知識を啓蒙し、国会では同性婚を一日でもはやく実現するために汗をかいていきたいと思います」と述べた。
共産党の山添拓議員は、「同性婚訴訟での、国の『誰もが同性と結婚できないのだから平等だ』『結婚していなくてもパートナーになれるのだから人権侵害ではない』という主張や、『同性婚による社会の影響について検討していない』という回答は、現に困っている人がいる実態を無視していると思います。
議論を進めて選択的夫婦別姓や同性婚を同時に認めていけるような民法改正を実現できるよう頑張りたいと思います」
LGBTの当事者議員として、立憲民主党の尾辻かな子議員、石川大我議員も参加。
尾辻議員は「国会議員も、議員宿舎や皇室行事で同性パートナーはどう扱われるのか、当たり前に異性婚にはできることが、自分にはないんだと痛感します」と述べた。
石川議員は札幌地裁で行われた訴訟を傍聴した際の国の主張に「唖然とした」と言う。
「同性愛者も異性と結婚できるんだから”平等”だと。『あ、そうか俺も女の人と結婚すれば良いのか』とは当然思わないですよね。
私はこの主張を聞いて、『この裁判勝ったな』と思ったんです。なぜかというと、こんなひどい主張に、裁判所は『そうですね』という訳がないと信じているからです」と話した。
昨年のマリフォー国会にも参加した、立憲民主党の西村智奈美議員は「会場にきて、国会議員からのメッセージ一覧を見たら、去年より与党からのメッセージが多いんじゃないかと思いました。この流れを加速化させていきたいと思います」と述べた。
Marriage For All Japanの加藤弁護士によると、昨年のマリフォー国会に寄せられた国会議員のメッセージは「31」だったところ、今年は「55」のメッセージを受け取ったという。
中には、自民党・河村建夫議員、野田聖子議員、河野太郎議員など与党議員からもメッセージが寄せられている。
第2回マリフォー国会に参加した議員は以下(発言順)
立憲民主党・逢坂誠二議員、立憲民主党・牧山ひろえ議員、立憲民主党・重徳和彦議員、日本維新の会・串田誠一議員、立憲民主党・近藤昭一議員、日本維新の会・音喜多駿議員、立憲民主党・源馬謙太郎議員、立憲民主党・尾辻かな子議員、立憲民主党・辻元清美議員、日本維新の会・梅村みずほ議員、共産党・山添拓議員、立憲民主党・西村智奈美議員、立憲民主党・堀越けいにん議員、立憲民主党・石川大我議員、立憲民主党・こみやま泰子議員、公明党・谷合正明議員
秘書の参加
自民党・村井ひでき議員、自民党・齋藤健議員、自民党・朝日健太郎議員、立憲民主党・ささき隆博議員、立憲民主党・田名部匡代議員、立憲民主党・松田功議員、立憲民主党・吉田つねひこ議員、立憲民主党・池田真紀議員、公明党・竹内真二議員、公明党・高瀬ひろみ議員、共産党・小池晃議員、共産党・吉良よし子議員、共産党・伊藤岳議員、共産党・倉林明子議員、共産党・田村智子議員、社民党・福島瑞穂議員
第2回マリフォー国会の様子は、Marriage For All JapanのYouTubeから見ることができる。