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志村けんさんが明かしていた“笑いのルール”

中西正男芸能記者
写真:アフロ

 新型コロナウイルスによる肺炎で、志村けんさんが29日の夜に旅立った。

 20年以上お笑いの取材をしている身として、これまで数えきれないほど芸人と話してきたが、多くの憧れであり、尊敬の対象であり、教科書であったのが志村けんさんだった。

 「志村さんの番組を見てお笑いに憧れ、この世界に入ってからは志村さんと仕事をすることを目標に頑張ってきました」

 何人の芸人からこの言葉を聞いてきたか分からない。漫才、コント、落語、あらゆるジャンルの芸人が異口同音に僕に語ってきた。

 笑いの教科書であると同時に、個人的に志村さんの笑いは、和食の“出汁”のようなものだと感じてきた。表には出なくとも、あらゆる料理にあらゆる形で使われ、その土台となる。そして、その味は当たり前のように日本人の“舌”になじんでいる。

 1日に放送されたフジテレビ「志村けんさん追悼特別番組 46年間笑いをありがとう」の視聴率が21・9%という高い数字になったのも、単なる話題性を超えたものがあることを示した。

 お客さんにはただただ笑ってもらうだけ。それを是としてきた志村さんは自身のお笑い理論を公の場で語ることはほとんどなかったが、過去に志村さんが明かしていた“笑いのルール”を聞いたことがある。

 「ネタをやる時、お客さんが『次、これやるぞ!』と予想できるものを最低5割は入れる。『やっぱり!』はお客さんが喜んでくれますから。一方で『そう来たか』も入れておくんだけど、比率としては3割ほどにすべきです。『やっぱり!』ということ、すなわち“ベタ”をやるには腕が必要。それがなかなかできないから、若い人は3割の方のウエートを増やしていくけど、本当はベタをやりきる腕をつけないといけないんです」

 また、代表作とも言えるフジテレビ「志村けんのバカ殿様」だが、ナンセンスギャグの塊のような世界観に、実は世の中への風刺も込めていたという。

 「『権力者がバカだったら、周りはこんなに迷惑をする』。もちろん、そんな小難しいことが最初に来るわけではなく、見てもらう人に笑ってもらうのが第一の目的ですが、最初、バカ殿のコンセプトを考えた時、実は根底には、そういうメッセージが込められていたと聞きます」(志村さんをよく知る関係者)

 “だっふんだ”という代表的ギャグは、足しげく通っていた故桂枝雀さんの高座で見た噺「ちしゃ医者」の中のやりとりから発想を得た。

 どこまでもどん欲に笑いを追い求めた志村さん。「ナインティナイン」の岡村隆史は2日深夜のニッポン放送「岡村隆史のオールナイトニッポン」で「これからも、ことあるごとに『あいーん』も『だっふんだ』も言い続けます」と話した。

 志村さんの肉体はなくなっても、存在が消えることはない。それはおそらく事実ではあるが、それでも悲しみが癒えないのも、また事実だ。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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