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再起戦を迎える前WBOスーパーウエルター級チャンプ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 24戦全勝17KOでWBOスーパーウエルター級王座に就いていたティム・チューにとって、今年3月30日にセットされた2度目の防衛戦は、悪夢であった。

 当初、チューは元WBA/WBC統一ウエルター級チャンピオンのキース・サーマンを挑戦者に迎える筈だった。が、サーマンがトレーニング中に右上腕二頭筋を負傷し、キャンセルとなる。

 プロモーターは急遽、前座に出場させる予定だったセバスチャン・フンドラをチューの対戦相手に抜擢。これによって、WBO/WBCの2冠がかかった統一スーパーウエルター級タイトルマッチとなり、興行の格が上がったかに見えた。しかし、ゴングまで1週間強の変更で、なおかつ自身より23cmも背の高い選手への対策をまるでしないままチューは戦うこととなった。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 筆者は総合力でチューがフンドラを上回っていると感じていたが、第2ラウンド終盤に偶然フンドラの左肘がチューの頭部に当たり、裂ける。翌3ラウンド以降、WBOチャンプの頭部からは、かなりの出血が見られた。チューは流血で視界を奪われ、フンドラのストレートを喰う。そして1-2の判定で敗れた。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 そのチューが10月19日にIBF同級王者のバフラム・ムルタザリエフに挑むことが決まった。米国フロリダ州オーランドのリングに上がる。既にチケットの販売が開始された。

 再起戦はフンドラとのリマッチになるかと思ったが、その前に敢えて他団体のチャンプにぶつけるところに、プロモーターのチューに対する期待度が窺える。とはいえ、22戦全勝16KOのロシア人、ムルタザリエフは簡単な相手ではない。

 現在、カリフォルニア州オックスナードに住み、初防衛戦としてチューと対峙する31歳のチャンプは言う。

 「初防衛戦でティム・チューのような強敵とやれることを、幸せに思う。ケガをしないように調整し、ベストコンディションに仕上げてみせるよ。そしてファンにこの試合を捧げる」

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 一方のチューも話した。

 「このレベルの選手なら誰とだって喜んで戦うし、やらねばならない。今は、バフラムが目の前に立っている。世界中が俺のことを知っているし、足跡も把握している。今の地位にいられることを、我がチームに感謝する。また、今も154パウンドで戦えることを証明するよ。

 バフラムは俺が望むものを持っているので、それを完璧な策で奪ってやる。世界​​チャンピオンになる2度目の機会だ」

 無念の黒星から7カ月強。チューはどんな姿を披露するか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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