北朝鮮の男女9人「禁断の味」に手を出して処刑…国民は反発
国連総会で人権問題を担当する第3委員会は11月15日、北朝鮮による人権侵害を非難する欧州連合(EU)提出の決議案を議場の総意(コンセンサス方式)により投票なしで採択した。2005年から19年連続で採択された北朝鮮人権決議案は今月、国連総会本会議に上程される。
北朝鮮は相変わらずこうした動きを「謀略だ」と主張しているが、同国が新型コロナウイルス対策の国境封鎖を解いた影響もあるのか、今年は人権侵害の状況を示す情報が新たにいくつも伝わってきた。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋は8月30日午後4時から、恵山(ヘサン)飛行場の周りの空き地で、公開処刑が行われたと伝えた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
朝鮮人民軍(北朝鮮軍)特別軍事裁判に引き出された被告人は男性7人、女性2人の計9人。彼らは、2017年から今年2月まで、2100頭もの病死した牛の肉を売り払っていたというのだ。9人の中には、両江道獣医防疫所長、両江道商業管理所の販売員、農場の幹部、平壌の某レストランの責任者、兵役中に保衛部(秘密警察)の10号哨所(検問所)で軍人として勤務していた大学生などがいた。
北朝鮮の庶民が、牛肉を口にすることはめったにない。牛は食べるものではなく、重要な生産手段だからだ。
当局は、個人の牛の所有、屠畜、販売を禁じている。違反者は単なる経済犯ではなく政治犯扱いとなる。許可なく食べたり販売したりして銃殺される人もいたほどだ。まさに牛肉は「禁断の味」だったのだ。
しかしその後、規制は緩和される傾向にあった。それが再び強化されたのは、金正恩総書記の指示によるものだ。
デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によると、金正恩氏は「牛は国家機関の承認なくして個人が保有、処理できるものではないと正確に知らしめよ」との方針に基づき、中央党(朝鮮労働党中央委員会)は、党の各支部、行政機関、司法機関に対して「農耕用の牛を個人が私的に所有、密売、屠畜する行為を徹底敵に管理、統制せよ」との指示を2020年9月11日に下した。
今回の処刑は、これを厳格に適用したものと見られる。
こうした動きに、恵山市民からは反発する声も出ている。RFAは「あんなに残忍に処刑されるとは思わなかった」「病死牛肉を売ったのは、公開処刑されるほどの罪なのか」という市民の声を伝えている。また、「事件の内幕が全国に広がって、住民の怒りが大きくなりつつある」との声もある。
仮に、北朝鮮において牛を屠畜して食べることがかつてのように重罪であり続けたならば、こうした声もあまり出なかったかもしれない。しかし、一時的にせよ「牛肉を食べる自由」を知った人々は、それが再び取り上げられることに敏感に反応する。金正恩氏が恐怖政治による支配を続けるのも、だんだん難しくなっていくかもしれない。