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久保、南野が欧州で躍進。Jリーガーだけで日本代表を組めるか?

小宮良之スポーツライター・小説家
ボールを激しく奪い合う古橋亨梧と田中碧(写真:築田 純/アフロスポーツ)

 11月5日、欧州遠征(11月13日、パナマ、11月18日、メキシコ)をする日本代表のメンバーが発表される。前回同様、欧州組が中心になるだろう。欧州組だけで代表を組めることになった現状は、日本サッカーの成長と言える。

 しかし欧州組も、Jリーグでプレーを重ねることで成熟している。欧州組に匹敵するような力を持ったJリーガーは、今も生まれつつある。彼らの何人かはこれから海を渡って、ステージを上げるのだろう。

 その点、Jリーグ勢だけでも代表を編成できなくはない。

Jリーガーの日本代表メンバー

 Jリーガーで、25人の代表メンバーリストを作ってみた。あくまで一例だが…。

GK中村航輔(柏レイソル)、東口順昭(ガンバ大阪)、高丘陽平(横浜F・マリノス)

DF岩田智輝(大分トリニータ)、瀬古歩夢(セレッソ大阪) 、渡辺剛、小川諒也、中村拓海(FC東京)、昌子源(ガンバ大阪)、中谷進之介(名古屋グランパス)、永戸勝也(鹿島アントラーズ)

MF田中碧、大島僚太、三苫薫、家長昭博(川崎フロンターレ)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)、大谷秀和(柏レイソル)、松尾佑介(横浜FC)、清武弘嗣、坂元達裕(セレッソ大阪)、水沼宏太(横浜F・マリノス)

FW古橋亨梧(ヴィッセル神戸)、小林悠(川崎フロンターレ)、江坂任(柏レイソル)、上田綺世(鹿島アントラーズ)

 ポジションによっては、世界の強豪と戦うには厳しいか。欧州組と比べると、全体的な経験値も足りないだろう。しかし、実力者たちだ。

今すぐでも欧州を舞台に活躍できるJリーガー

 中でも、古橋、田中、松尾、坂元の4人は、今すぐでも欧州の中堅リーグでプレーできるポテンシャルの高さを感じさせる。

 古橋の持つ絶対的なスピード、スペースへの入り方は、欧州組FWと比較しても遜色はない。ボールをヒットする感覚も含めて、自分のタイミングを持っている。敵ディフェンスと少しずれたテンポでシュートを打ち込める。ダビド・ビジャ、イニエスタと近くでプレーすることで、ゴールに向かう感覚は研ぎ澄まされてきたのだろう。

 また、田中も非凡さを感じさせる。戦術的に優れ、ポジション取りが抜群に良い。相手と入れ替わるようなパワー、スピードもあり、攻守両面で弱点がなく、どのゾーンでもやるべきことを心得ている。周りを生かすのも得意で、インテリジェンスを感じさせ、それがアンカー、ボランチ、インサイドハーフなどでプレーできる理由だろう。現在のJリーグで、世界に推せるナンバー1のMFだ。

 23歳になる松尾は、肩のケガで今シーズンは厳しい状況だが、その実力は見せつけてきた。ふてぶてしいまでに、すべてのプレーがゴールに結びついている。相手の裏を取る動きは、ゴールから逆算し、うまく見えるプレーに溺れることがない。周りを使うのがうまく、使われるのも巧みな選手と言える。それがコンビネーションプレーで相手を幻惑させる。この点は、久保建英と同様だ。

 戦力的に劣勢を強いられるリーグ戦で、J1デビューシーズンにしてチーム最多の7得点は立派だろう。

 坂元も、右サイドでポジション的優位を保ちながら、常にゴールへ向かう。縦を切られたら中へ、中を切られたら縦へ。左利きだが、左右両足を操れるだけに、プレーの選択肢が豊富。横浜F・マリノス戦での1対1は圧巻だった。左足で中に切り込むと誘って、ディフェンスの重心をずらす。そこから一気に縦に切り込むことで逆を取って、右足で完璧なクロスを折り返すと、味方の決勝点をアシストしている。

 この4人は、プレーヤーの素養としては欧州組と比較しても遜色はない。

国内組と欧州組の違い

 しかし、欧州組と言われる欧州でプレーする日本人選手は、国内組にはないアドバンテージを持っている。

 外国人選手として、異国のチームにフィットするのは容易ではない。重責を担いながら、チームを勝利に導く、際立った活躍が義務付けられる。さもなければ、容赦ない批判に晒される。

 それを経験した欧州組は、勝負に対してシビアだ。

 多くの欧州リーグが、プレー強度やしたたかさなどでレベルは上か。たとえ同じでも、そこで助っ人として認められるのは、国内での戦いよりも難儀である。語学、文化、そしてプレーリズムの違いを乗り越えて、力を発揮することが求められるのだ。

 その点、欧州で適応した選手が高く評価され、実力者と認められるのは必然と言えるだろう。

 もっとも、日本国内で実力を示した選手は、常に欧州組を凌駕するポテンシャルも持っている。彼らの存在が、代表の競争にも刺激となるだろう。切磋琢磨は欠かせない。

 一つ言えるのは、Jリーグが世界に誇れる才能を送り出しているということだ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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