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花火で遊んだ後の「ゼエゼエ」に注意

倉原優呼吸器内科医
(photoACより使用)

最近は花火ができる場所が減ってしまいましたが、子どもにとって花火というイベントはとても貴重な体験です。遠目から見る打ち上げ花火も風情がありますが、みんなで集まって手持ちの花火でワイワイ遊ぶことは良い思い出になります。しかし、呼吸器系が弱い子どもにとってリスクになるため注意が必要です。

アレルギー・喘息持ちの子どもは注意

花火の煙には、過塩素酸カリウム、炭酸ストロンチウム、硫黄、鉛、PM2.5などさまざまな物質が含まれています。実は、こういった燃焼煙を吸い込むことで喘息発作を起こしてしまうことがあります。

喘息の子どもは、健康な気管支と比べて軽微なアレルゲンで気管支が狭くなり、気管支平滑筋という気管支の周囲にある筋肉が収縮しやすい状態にあります()。

図. 正常の気管支・喘息の気管支・煙を吸って発作を起こした気管支(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)
図. 正常の気管支・喘息の気管支・煙を吸って発作を起こした気管支(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)

夏に悪化しやすいアレルギー、イネ科やキク科(ブタクサ・ヨモギなど)のアレルギー、エアコンなどに付着したカビのアレルギーがある子どもの場合、特に注意が必要です。

冬季よりも喘息発作を起こしやすい状態になっていることから、花火などの煙の刺激によって、容易に喘息発作を起こすためです。

花火による救急受診はほとんどは「花火が顔に当たった」といった外傷・やけどですが、中には喘息発作を起こして来院する子どももいます。海外では、重症の発作で亡くなった子どもも報告されています(1)。

花火をしている間はあまり気付かれませんが、花火が終わった後、子どもが「ゼエゼエ」と呼吸が苦しそうにしている場合、喘息発作が起こっているかもしれません。その場合、早めに医療機関を受診してください。

「花火喘息」の予防

上述したような夏季にアレルギーが出やすい喘息の子どもの場合、バーベキュー、キャンプファイヤー、花火といった煙が出るレジャーをなるべく避けることが望ましいです。

しかし、そういったレジャーが楽しめない夏休みは、子どもにとって味気ない寂しいものになるかもしれません。

そのため、以下のような予防策も検討しましょう。

炎天下での屋外でのマスク着用はしんどいですが、日が落ちて、ある程度気温が下がっておれば、花火の間だけでもマスクを着用することは害にはなりません。そのため、なるべく煙を吸わないために短時間マスクを着用することも一つの手と思います。

また、うまく風上に立つと、発生する煙のほとんどを回避することが可能です。大人が横について適宜風上に誘導してあげるのも良策でしょう。風下にいると、風に吹かれた火種が足に落ちたり、服の裾に燃えかすが付着して火が付いたりすることもあり、何にせよ風上のほうがよいです。

そして、これは重要なことなのですが、普段から周囲の大人がたばこを吸わないことが重要です。親がたばこを吸っていると、子どもは喘息が悪化するリスクが高くなります(2)。

(参考)

(1) Becker JM, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2000 Dec;85(6 Pt 1):512-3.

(2) Cook DG, et al. Thorax. 1997 Dec;52(12):1081-94.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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