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ウクライナ軍、ロシア軍のイラン製軍事ドローン54機で奇襲のうち"新記録"52機を破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
キーウでドローン攻撃に備えてサーチライトで闇夜を照らすウクライナ軍(写真:ロイター/アフロ)

反撃能力誇示のためにイラン製軍事ドローンを撃破するとウクライナ軍はSNSでアピール

2023年5月28日にウクライナ軍は、ロシア軍が攻撃に使用しているイラン製軍事ドローン「シャハド136」54機が奇襲をしかけてきて、そのうち52機を迎撃して破壊したことを公式SNSで報告していた。地元メディアや海外のメディアによると、1回の攻撃で52機の撃破はロシア軍が侵攻してきてから一番多く新記録を達成したと報じられている。今までも10機~20機程度の破壊はよく報告されていたが、52機の破壊は非常に多い。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ている。毎日立て続けにロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」を大量に投入してウクライナ全土に攻撃を行っていた。

ウクライナ軍では公式SNSでロシア軍の様々な攻撃を迎撃したりすると報告しているが、全ての迎撃を報告をしているわけではない。ロシア軍のミサイル攻撃を迎撃したり、戦車を破壊したりすることは日常茶飯事だが、毎回報告することはほとんどない。だがイラン製軍事ドローン「シャハド」を迎撃して破壊すると、公式SNSで報告することが多い。

ロシア軍では立て続けにイラン製軍事ドローン「シャハド」を使用してウクライナの軍事施設や民間インフラなどを攻撃している。特に深夜や早朝に大量の「シャハド」で奇襲を行うことが多い。そのようなロシア軍のイラン製軍事ドローン「シャハド」での攻撃に対して、ウクライナ軍では移動式ドローン迎撃車などを作り、機関銃や地対空ミサイルで迎撃して破壊している。ミサイルやドローンを探知すると警報(サイレン)が鳴り、その場にドローン迎撃車が向かって行き迎撃して破壊している。

このようにロシア軍が使用しているイラン製軍事ドローン「シャハド」に対してウクライナ軍の反撃能力をアピールしている。反撃能力の維持と懲罰的報復措置(やられたら何倍にもしてやり返す)のアピールはロシア軍に対する抑止にもなりうる。

英国防省は2023年2月25日に、2023年2月15日からイラン製軍事ドローンが使用されていないことから、イラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかという見解を示したこともあった。だが英国防省がイラン製軍事ドローンは枯渇したのではないかというインテリジェンス・レポートを発出した2日後の2023年2月27日には、英国防省のインテリジェンス・レポートを否定するかのようにロシア軍が14機のイラン製軍事ドローンで奇襲をしかけてきた。そのうち11機はウクライナ空軍によって迎撃されて破壊された。3月、4月、そして5月に入ってからもロシア軍はイラン製軍事ドローンを使用してウクライナに奇襲をしかけている。

イラン製軍事ドローン「シャハド」はまだ枯渇していないようで、イラン製軍事ドローン「シャハド」による攻撃はまだ当面続きそうである。

▼イラン製軍事ドローン「シャハド」迎撃を報告(2023年5月)

▼イラン製軍事ドローン「シャハド」迎撃を報告(2023年4月)

▼イラン製軍事ドローン「シャハド」迎撃を報告(2023年3月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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