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英で自称PC修理屋による詐欺増加 ―「ビッシング」に乗らないために

小林恭子ジャーナリスト

(週刊「エコノミスト」11月17日号のワールドウオッチコラムの筆者担当分に補足しました。)

コンピューターの専門家、警察職員、銀行員などの振りをして偽電話をかけてくる人物に市民が銀行の口座情報を渡してしまい、損害を受けるケースが英国で増加している。

銀行やクレジット会社を装ってメールを出し、個人情報の入力を誘導して他人の銀行口座や暗証番号などを盗み取る詐欺行為を「フィッシング(phishing)」と呼ぶが、電話つまり人の声を使う新たな詐欺の手口は「ビッシング」(voice+phishing=vishing)と呼ばれている。

英金融業界が設置した「金融詐欺アクションUK」(FFA UK)によると、コンピューターの専門家と称して電話をかけ、銀行口座などの情報を盗み取った事例は今年10月時点で1万8737件に上る。前年同時期では1万1987年で、大幅に増えた。ネット上の詐欺行為がメディアをにぎわせるが、実は電話が日常的な詐欺行為の手段としてひんぱんに使われている。

FFA UKによると、ビッシング詐欺の手口はこうだ。

マイクロソフト社など著名な会社の従業員で修理の専門家と名乗る人物が電話をかけてきて、「あなたのコンピューターはウイルスに汚染されています」と指摘。コンピューターの電源を付けさせ、システムファイルなどを検索させる。「より安全な」ファイルをインストールするように指示し、サービス料金を得るために銀行の口座情報を聞いてくる。新たにインストールさせたソフトに情報を盗み取る機能が入っている場合もある。利用者が後で詐欺行為と分かっても、電話をかけた相手の会は海外登記である場合が多く、金額の回収が困難だ。

こうした詐欺にあわないため、FFA UKでは「電話での修理サービスの勧誘には応じない」「マイクロソフト社が直接電話で修理の電話をかけることはない」などとアドバイスしている。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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