Yahoo!ニュース

430代の先祖解怨を推奨する教団の実態が明らかに。7代の解怨が終わると、HPでは「絶対善霊」となる。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影/作成

1月18日に文部科学省は、旧統一教会に対して3回目の質問権を行使しました。同日、立憲民主党などの野党を中心とした旧統一教会の国対ヒアリングも行われ、元統一教会2世の小川さゆりさん、VTuberのもるすこちゃんさん、鈴木みらいさん(いずれも活動名)らが参加し、その言葉を通じ、教団側の敵対的な姿勢が浮き彫りになってきました。

430代先祖解怨に向けた、オンライン修練会

最近の教団の動きについて、もるすこちゃんさんから話がありました。

年頭に行われた「2023天一国指導者新年賀礼会」にて韓鶴子総裁は、信者らに「天寶(てんぽう)家庭になる」ことを願うとの言葉を述べましたが、天寶家庭になるには、430代の先祖解怨(先祖の恨みを解くこと)が必要になります。

「430代の先祖供養の名目で、高額献金を要求しており、献金の目標額は1000万円を超えていて、信者の生活が破綻する恐れがある」と危機感を訴えます。

その後、旧統一教会の田中富広会長からも、祝福家庭(合同結婚式に参加した家庭)の目指すゴールが「天寶家庭」だとして、430代の先祖解怨と、430の家庭を伝道することがはっきりと呼び掛けられています。さらに2月にはオンライン修練会「孝情天寶特別大役事」が行われる予定で、その案内のメッセージが信者らに送られてきているということでした。教団側が、信仰心の強化と、献金集めを着々と進めていることがわかってきています。

「天寶家庭」30年前にはない言葉

ちなみに、筆者が信者だった30年ほど前には「天寶家庭」という言葉はありませんでした。しかし、このやり方は、昔から変わらない教団の手法といえます。

当時は、合同結婚式(祝福)に参加して神の家庭(祝福家庭)を作り、神の子(祝福2世)を生むことが目標とされてきました。そして文鮮明夫妻の祝福を受けるためには、霊の子3人(3人の伝道)と経済活動(お金を集めて神様のもとに捧げる)ことが必要でした。

今は、すでに多くの祝福家庭が存在していますので、そこに天国に入るための条件として、「天寶家庭」という目標を新たに設定させたといってよいでしょう。ただし、その基本は変わらずに、人を誘い込む伝道(430家庭の伝道)とお金集めの経済活動(430代の先祖解怨)の両輪からなっています。

こうした状況を踏まえて、山井和則議員は「旧統一教会問題による被害によって、作られた救済新法にもかかわらず、その反省もなく(先祖解怨の形で)高額な献金集めを続行しようとしている。これは新法を気にしていない証拠ではないか」と指摘します。

同ヒアリングでは、教団が信者向けに流している「先祖解怨に使命感を持たせる」内容のビデオが、流されました。

新型コロナで亡くなった兄が、すでに他界していた母と霊界で出会う話です。その様子を同じくコロナにかかって一命をとり止めた妹が、夢で見た形で紹介されました。おそらく、信者の中には、新型のコロナで亡くなった方もいることでしょう。まさにそうした悲しみに便乗して、大役事(先祖解怨)に参加させようとしており、これに触発された信者らの伝道、献金活動の過熱が心配されます。

「解怨祝福申請」をクリックすると…

鈴木みらいさんは、信者である両親が1億6千万円献金してしまい、昨年10月に教会に全額の返金を要求したものの、母親が教会(アベル)からいわれた言葉に従い、3千万円の返金額で合意書にサインしてしまったために、家庭が崩壊したといいます。

そうした苦しい事情のなかでしたが、先祖解怨の流れがHP上で、どのようになっているのかや、韓国の清平の天寶修練院の送金の流れについて説明をしてくれました。

「HPに載る『解怨祝福申請』をクリックすると、先祖7代ごとの項目「414-420」(代)が出てきます。先祖解怨が終わると『絶対善霊』という文字になります」

みらいさんの家は、すでに430代の先祖解怨は終わっていますので、青い背景の白抜き文字にて、すべての枠が「絶対善霊」となっています。またお金は教団へではなく「ウリィ銀行」という海外への振り込みになっているということです。

海外への送金は、新法の対象なのか?

海外の団体、法人に送金された場合、今回成立した救済新法は適用されるのでしょうか?

その点について、阿部克臣弁護士は「特定商取引法でも、海外の事業者も対象となりますので、先祖解怨のような形で献金した場合でも、新法の効力は、日本の法人だけには限らず、海外の法人でも適用できると考えます」といいます。消費者庁の中村氏も「海外の法人でも新法の対象となりえる」との同様の見解を述べました。

今回、特に注目されるのは、年頭に田中会長が語った「我々がぶれない限り、サタン側が必ず崩れていく」という言葉です。高額献金の被害をひき起こした教団に批判的な国民や政治家をサタンとみて話す言葉は、これまで教団が隠し続けてきた牙を一気に、あらわにしてきたともいえます。

1980年代は、先祖の悪因縁で壺などを売っていましたが、2023年からは、先祖解怨という新たな霊感を使った手法が、本格的にスタートしました。今後、サタン世界に住む私たちを駆逐するために、信者らによる伝道とお金集めの活動がより活発化してくることが考えられます。

長妻昭議員からは「報道の量は減っているが、まだやるべきことはある」との話がありましたが、まさに、報道が減り、世間の関心が薄まってきた今を好機とみて、教団が攻勢にでてきたといって良いと思います。今後、信者らの多額の献金により、その家族や経済的ネグレクトを受ける宗教2世の被害の危険性が高まってきています。

教団による養子縁組あっせん問題

現在、旧統一教会が都道府県の許可を受けずに、組織的な養子縁組あっせんを行っていた疑いがあるとして、2018年以降に関する件に関して、厚生労働省は調査に乗り出しています。

2014年に発行された「侍義生活ハンドブック」(光言社)には「実際にはいろいろな理由により子女ができない場合があります。真の父母様(文鮮明夫妻)は、この課題を解決するために、「養子縁組」を許可してくださいました」という言葉もあります。

そうした教祖の許可があった上で「初期の頃は、養子縁組は真の父母様の承認を頂くことが必要でしたが、現在は真の父母様の代身として、その国の協会長に承認していただきます。両家の合意がなされたら『養子縁組申請書』と家族写真を本部家庭教育局に提出し、会長に承認をいただきます」とあります。

教団の教えや指示は絶対で、組織的関与の疑いが極めて高いと考えていますので、いまだ刑事告発はなされていませんが、一刻も早い展開を期待するところです。

小川さんからは、2014年の社会福祉法についての指摘

小川さゆりさんからは「宗教虐待を受けた2世が生まれないような社会にしてほしい」「虐待と認められる部分を法律に明記してほしい」と法改正を求める声も上がりました。

さらに、2014年5月1日に出された「養子縁組あっせん事業を行う者が養子の養育を希望する者等から受け取る金品に係る指導等について」(社会福祉法)の指摘もありました。

「ここでは『営利を目的とした養子縁組あっせん事業の禁止について』があります。金品の受け取りは禁止されており、養子縁組に際しては、献金などは受け取ってはいけないことになっています。これに違反すれば罰則もあります。『事業運営に係る透明性が確保されるよう調査・指導等を行っていくことが必要である』とあります」と述べたうえで、この辺りの調査についても行っているのかを問いました。

厚生労働省の担当者は「すでに教団から受け取った回答書の内容を精査して対応したい」と述べるにとどまりました。

阿部弁護士も「個別の養子縁組あっせんに関連して、事業者が養親希望者等から受け取ることができるのは『交通、通信等に要する実費又はそれ以下の額』に限られ、それ以外の金品はいかなる名称であっても受け取ることができないものである」とし「献金もだめということです」といいます。

これまで祝福を受ければ、祝福献金があり、教団内では、重要な行事には感謝献金が求められてきました。それが神の子を授かるというもっとも重要なことですので、何かしらの献金行為は存在すると考えるのが、自然です。2014年以降の養子縁組についても、今後の調査は必要と考えます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

多田文明の最近の記事