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違うチームのユニフォームを着て一緒に観戦 日本の応援席では「禁止」も韓国ではよく見る光景

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者
異なるチームを応援し並んで観戦の二人組。試合前に撮影(写真:ストライク・ゾーン)

韓国KBOリーグの中継の中で、しばしば目にするシーンがある。プレー後に異なる球団のユニフォームを着たファン二人組が映し出され、一人は大騒ぎし、一方はがっかりする姿だ。

とりわけ韓国の人は全身で喜び、悲しみを表すので、一つの画面に収まった二人の異なる感情が時にユーモラスに映る。日本(NPB)ではあまり見られない光景だ。

NPBの球場内掲示や巨人を除く11球団のホームページには観戦ルール、マナーとして概ね以下のような記述がある。

「当該エリア(ホーム、ビジター応援席)では当該チーム以外の応援行為、ユニフォームの着用、応援グッズの使用を禁止いたします」

(参考)各球団、球場ホームページの観戦ルール、マナー項目

オリックスソフトバンク西武楽天ロッテ日本ハム

ヤクルトDeNA阪神巨人広島中日

NPBでは過去に生じたトラブルなどを踏まえて、それらを未然に防ぐためのルールが設けられている。

一方、KBOには上記のようなルールはなく、先日行われた上位チームの対戦でもそれぞれのファンが並んで観戦する姿が見られた。

違うチームのファン同士が一緒に見る理由

インチョンSSGランダーズフィールドで行われた、首位のLGツインズ(ビジター)と3位・SSGランダーズ(ホーム)の対戦。どちらも首都圏が本拠地の人気チームということもあり、8月19日(土)は観衆23,000人で大入り満員(SSG球団今季5度目)、翌20日(日)は18,441人が来場した。

SSG-LG戦が行われたインチョンSSGランダーズフィールド(写真:ストライク・ゾーン)
SSG-LG戦が行われたインチョンSSGランダーズフィールド(写真:ストライク・ゾーン)

LGファンが陣取る三塁側にはLG(#18 チョン・ウヨン)とSSG(#54 チェ・ジフン)のユニフォームを着た女性二人組がいた(冒頭の写真)。SSGファンの女性に相手側の座席にいる理由を尋ねると「一塁側の席が取れなかったので、友達と一緒に見ることにしました」と答えた。

また一塁SSG側に座ったSSG(#14 チェ・ジョン)とLG(#1 イム・チャンギュ)のユニフォーム姿の男性同士は「二人で試合を見る時はインチョン、チャムシル(LGの本拠地)どちらでも一塁側の席を予約します」と話した。

それぞれ好みの席種があり、「希望通りの座席が取れても取れなくても、自分が好きなチームのユニフォームを着て応援する」というのが韓国のファンには自然な姿だ。

日韓で違う応援エリア

NPBとKBOでは観戦スタイルにいくつかの違いがある。その一つが「応援エリア」だ。NPBでは外野席が応援の中心なのに対し、KBOは内野に応援席が設けられている。NPBは内野席と外野応援席でのファンの「すみ分け」が明確だが、KBOは内野の広いエリアに楽しみ方が異なる観客が混在している。

SSGの一塁側応援指定席(写真:ストライク・ゾーン、5月撮影)
SSGの一塁側応援指定席(写真:ストライク・ゾーン、5月撮影)

韓国の熱烈なファン(コア層)の中にも自軍の応援席またはその周辺に、相手チームのファンがいることを好まない人は当然いる。ただ韓国の球場にはコア層とライト・ビギナー層の間に位置するファンが多く、応援の仕方の許容範囲が日本よりも広いと感じる。

また、KBOの球場では対戦している2チーム以外のユニフォーム姿の観客も、ちらほら見かける。理由は様々で「どっちのチームのファンでもないけど、球場で着るならユニフォームでしょ」という、ファッション的なチョイスで手持ちの他球団のユニフォームを着てきたという人もいた。

NPBでは「全座席でホーム、ビジター以外のNPB球団のユニフォーム着用、応援グッズの使用を禁止」しているZOZOマリンスタジアムのような例もあり(ZOZOマリンスタジアム スタジアムルール「各エリアの位置付け」の項目に掲載)、対戦チーム以外のユニフォームを見ることはあまりない。

ファンの世代も違う

先日、筆者が韓国プロ野球観戦ツアーで引率した日本の50代男性はKBOの観客について、「自分が日本で好きなチームを応援する時は必死過ぎて悲愴感があるけど、韓国は若い女性のファンが多くて自由で楽しそう」と話した。

また韓国の球場初訪問の40代男性は3試合を観戦し、「20代くらいの若い女性の観客の多さに驚きました。日本だと男性に連れられてという若いカップルを見かけますが、韓国では女性の方が応援団の歌に乗ってノリノリという光景が多かったです」という印象を持った。

外野のパーティデッキでピザを広げて観戦のグループ(写真:ストライク・ゾーン、5月撮影)
外野のパーティデッキでピザを広げて観戦のグループ(写真:ストライク・ゾーン、5月撮影)

20代前後の女性ファンが多いKBOに対し、NPBのファン層についてパ・リーグ球団の経営企画担当者は、「ウチの球団の場合、観客の中心となっているのは50代」と答えた。少子高齢化が深刻で、世代としては40代中盤から50代が多くを占めているのは日韓同じだ。だが、球場に足を運ぶファンの年齢層は異なる。

バックネット裏のカフェで観戦の三人組(写真:ストライク・ゾーン、5月撮影)
バックネット裏のカフェで観戦の三人組(写真:ストライク・ゾーン、5月撮影)

日韓の各球団とも、コロナ前に行っていた海外視察を少しずつ復活させている。NPBの球場を訪れたKBOの球団職員らは「うらやましい」と話す。日本の球場の規模や洗練された雰囲気、統率の取れた応援が魅力だという。

所変われば品変わる。同じプロスポーツでも国、リーグが変わると観戦ルール、応援エリア、ファン層と違いがあって面白い。

◇関連データ

韓国の人口 約5,155万人(日本の約5分の2強)

KBOリーグの球団数 10球団(1リーグ制)

試合数 144試合

平均観客数 10,960人(8月27日現在)。コロナ禍前の10,119人(2019年)とほぼ同水準。WBC1次ラウンド敗退の影響は見られず

観客数の特徴 平日と土日で差が大きい。土曜日の平均は15,912人。

最盛期の平均観客数 13,451人(2012年、当時8球団制)。総動員数は2016年の約834万人が最多。

KBOリーグの球団別観客動員数(KBOリーグのデータを基に作成)
KBOリーグの球団別観客動員数(KBOリーグのデータを基に作成)

⇒ 2023年 韓国プロ野球個人成績(ストライク・ゾーン)

※スポーツ朝鮮「室井コラム」に韓国語で寄稿した内容を、日本語で加筆・修正しました。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FM那覇)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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