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中国大使館がノルウェー・ノーベル委員会の声明に苦言 「劉暁波氏の妻と平和賞」という悩みの種

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
平和賞をめぐるノルウェーと中国の微妙な関係 Photo:Asaki Abumi

ノーベル平和賞受賞者、故・劉暁波氏の妻、劉霞氏が、中国を出国し、ドイツに到着した。

「平和賞を受け取りに、ぜひオスロへ」 と、軟禁が解かれた劉霞氏の状況を喜ぶ声明をすぐに発表した、ノルウェー・ノーベル委員会のベーリット・レイス・アンネシェン委員長。

何も罪を犯していないにも関わらず、彼女は不必要な苦痛を強いられてきた。

夫の政治的活動により、彼女には8年間の自宅軟禁という罰が与えられた。

出典:委員会公式HP

中国大使館は、ノルウェーのアフテンポステン紙に対し、不満をあらわにした。

委員長の言葉は、彼女の傲慢さと、中国に対する偏見を表している。

人権を含め、中国の発展は、中国の人々の必死の努力によって達成されてきたものだ。

レイス・アンネシェンの発言に、中国は反対する。

彼女の発言は、事実をゆがめるものであり、悪意がこもった、人々の感情をあおるものだ。

出典:中国大使館発言、アフテンポステン紙

中国大使館の反応に対して、委員長は、「驚いている」と同紙にコメント。

私の発言は、劉霞氏が自由になったことを喜ぶものだ。

彼女を出国させた中国政府の人道的配慮には敬意を表しており、中国に対する攻撃ではない。

出典:委員長発言、アフテンポステン紙

中国側は、ノルウェー政府と、ノルウェー・ノーベル委員会が授与するノーベル平和賞には、つながりがあると捉えている。

劉暁波氏への授与により、両国の政治的対話は停止されていたが、最近になって、関係は復活したばかり。

仲直りの条件として、ノルウェー政府は、中国政府の内情には、余計な口出しをしないことを約束させられた。

劉霞氏が亡き夫の代わりに平和賞を受け取りにくることがあれば、中国側がただ静かにしていることはないだろう。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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