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ノーベル委員会「平和賞を受け取りに、ぜひオスロへ」 劉暁波氏の妻の中国出国を喜ぶ

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
平和賞の国、ノルウェー。中国との外交関係を考えると、政府には悩みの種も(写真:ロイター/アフロ)

ノーベル平和賞受賞者、故・劉暁波氏の妻、劉霞氏が、10日、ドイツの空港に到着した。

2010年、劉暁波氏にノーベル平和賞を授与したノルウェー・ノーベル委員会。

中国で投獄されていた同氏は、首都オスロを訪問し、市庁舎での授与式で、賞を受け取ることはできなかった。

受賞者が座るはずだった「空席」のシーンは、中国の民主化問題を批判するシンボルともなった。

ノルウェー国外では、ノルウェー政府とノーベル委員会には、つながりがあると「誤解」されやすい。

劉暁波氏の平和賞受賞後、中国政府はノルウェー政府との対話を断ち切り、最近になって、関係が改善されたばかりだった。

中国に対して頭があがらない様子のノルウェー政府。国際関係が大事なことは十分にわかるが、政府の態度に、ノルウェー国内のメディアや左派は、複雑な気持ちを抱いている。

妻、劉霞氏のドイツ到着を、ノルウェーのメディアは歓迎して報道。

ノーベル委員会のベーリット・レイス・アンネシェン委員長は、妻である劉霞氏は、亡き劉暁波氏の代理人として、平和賞を受け取りにきてほしいという態度を示している。

10日、同委員長は、プレスリリースを発表。

何も罪を犯していないにも関わらず、彼女は不必要な苦痛を強いられてきた。夫の政治的活動により、彼女には8年間の自宅軟禁という罰が与えられた。

ドイツ政府とアンゲラ・メルケル首相に、感謝の気持ちをここで伝えたい。

いつ、どのような状況下で賞を受け取るかは、彼女に決定権がある。この歴史的な日に、私は彼女に、心からの応援と支援の思いを伝えたい

出典:ノーベル委員会公式HP

委員会の代表として、現地メディアでコメントすることが多いニョルスタッド秘書。「彼女には、ゆっくりと療養してもらいたい。我々からも、すぐに連絡はとる」と、ノルウェー国営放送局NRKに答えている。

ノルウェーの現地メディアでは、妻がノルウェーに来るであろうことが大きく報道されている。

微妙な立場にあるアーナ・ソールバルグ首相は、本来は投稿が多い自身のSNSでは、コメントは避ける。

しかし、ノルウェー通信社NTBには、劉霞氏がノルウェーに来ることには、問題はないと話す。「ノルウェーには、(平和賞授与式のような)催しに参加する人々の入国を、妨げるような伝統はない。長い間病気だったのだから、療養も必要だろう」と語る。

ノルウェーに妻が平和賞を受け取り来る日

劉霞氏が、いつか、ノーベル平和賞を受け取りにオスロに来るであろう時。

中国政府を怒らせたくないノルウェー政府は、これまでの平和賞受賞者にしてきたように、平等にゲストをもてなすことができるのか。

ノルウェー首相や国会が、劉暁波氏の妻を歓迎する写真は、中国政府にはどのように写るだろうか。

独自に動くノーベル委員会。

批判的な報道をやめない現地メディア。

世論。

各方面の対応に、ノルウェー政府関係者は、密かに頭を抱えることになるかもしれない。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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