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日本の2戦目の相手、セネガルは何が厄介なのか? データからひも解く

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家
(写真:ロイター/アフロ)

サッカーのワールドカップ(W杯)に出場している日本代表は24日、セネガルと第2戦を戦う。初戦を白星で飾りグループステージ突破を目指す日本にとって、セネガルの何が厄介か。初戦と、そのデータから読み解く。

中盤でよく働いた2人

FIFAランクで言えば、27位のセネガルに対して、ポーランドは8位と上位に立っていた。エースFWロベルト・レヴァンドフスキの知名度もあり、日本国内ではポーランドが優位との見方が強かった印象だ。

だが、ふたを開けてみれば、セネガルの完勝だった。

スコアを見れば2-0と、圧勝したわけではない。2点目は、ピッチ外でのケガの治療から戻ったムバイェ・ニアングが、その動きに気付かずに戻したポーランドのバックパスのミスをさらって決めたものだった。それでも、狙い通りの戦い方で勝ったとなれば、完勝だったと言っていい。

まず第1のタスクは、レヴァンドフスキにボールを入れさせないことだった。

ドイツの名門バイエルン・ミュンヘンで得点を量産する世界有数のセンターFWは、ポーランドと対戦するどの相手にとっても一番の悩みの種だ。だから、試合から追い出した。

日本のメディアでも報じられているように、ともに身長2メートル近いカイドゥ・クリバリとサリフ・サネが中央に陣取る最終ラインは相当に堅い。だが、効いていたのが中盤での守備だ。イドリサ・ゲイェとアルフレド・ヌディアイェが、前半はポーランドの前線に縦パスを入れさせなかった。

FIFAの公式記録では、ボールを持たない時間帯に、セネガルで最も長い距離を走っていたのがゲイェだった。ポーランドとセネガルのボール保持の比率がほぼ6:4だったため単純な比較はできないが、同じ状況での走行距離はポーランド最長のティアゴ・チョネクの4.115キロを上回る4.888キロに上る。

この汗かき屋と中盤中央でコンビを組んだのが、A・ヌディアイェ。目立ったのは、鋭い出足だ。焦れてボールを受けに中盤へ下がってきたレヴァンドフスキをしっかりマークしつつ、ここぞと見れば、相手のパスの出どころに激しく詰めて攻撃の芽を摘んだ。もちろんその際、この背番号13の周囲や背後をカバーするのは、守備範囲の広いゲイェである。2人のコンビネーションで中央からプレーをつくれず、ポーランドは後半から3バックへのフォーメーション変更を強いられた。

意味の大きな数値の“逆転”

ゲイェの運動量は、攻撃面にも表れた。セネガルで最も多くのパスを受けたのが、この選手だった。プレーのスイッチを入れるようなパスはなかったが、ボールを狩れば着実に周囲に渡してと、自分にできるプレーに徹していた。

ただし、特筆すべきは、パスを受ける地点だ。多くの選手が自分のスタートポジション周辺に集中するのに対して、ゲイェはピッチ両サイド、最終ラインの前からボックス前までと、広範囲に動いてボールを受けている。セネガルの先制点はオウンゴールだったが、誘発したのは、このゲイェのシュートだった。代表60試合近くに出場してゴールは1得点のみ。自身の通算得点は伸ばせなかったが、大舞台でとてつもなく大きな仕事をした。

では、ゲイェが受けたボールは、どこへ向かったのか。両サイドバックにそれぞれ渡した6本が、最多となっている。

セネガルのサイドバックは、右にムサ・ワゲ、左にユスフ・サバリ。ワゲは守備を重視して攻撃は縦の関係を組む右サイドハーフのイスマイラ・サールに任せていた。一方、左のサバリは厄介な印象だ。

サバリが、パス交換するゲイェと並ぶ最多9本のパスを供給していたのが、2点目を奪ったニアングだった。しかも、ただパスを送るだけではない。18分には、自陣のタッチライン際からドリブルを開始して、さらに中央へと侵入。前線のニアングにパスを通して、ゴールわずか右にそれるシュートへと導いていた。

セネガルの左サイドには、さらに危険な選手がいる。リヴァプールの一員としてUEFAチャンピオンズリーグ決勝も戦ったサディオ・マネだ。

このセネガルの背番号10は驚異的なスピードで知られるが、この試合では単なるウィングにとどまらなかった。中央へと入ってボールを受けることも多く、10分には一度足を止めた状態から、ボックス内へのスルーパスを送るアイディアも見せている。

実際、2トップの一角でスタートしたニアングと頻繁にポジションを入れ替えてボールを受けていた。パスを受けた本数は、最多38本のゲイェに続き、ニアングが31本、サネがサバリと並ぶ28本となっている。

パスを受けたエリアを見ると、ニアングが24本を左サイドで受けてゴール前では1本なのに対し、マネはゴール前で3本を受けている。

あらためて、先制点の場面を振り返る。左サイドで受けたのは、ニアング。グンと加速して持ち上がり、中央へとパス。受けたマネは落ち着いて横へ流して、促したゲイェのミドルシュートがDFに当たり、ゴールネットを揺らした。働くべき選手が、働くべき場所で仕事をした結果だった。

ポーランドとセネガルのFWおよび攻撃的MFで、パスを受けた本数が多いトップ3を比較してみる。

<ポーランド>

カミル・グロシツキ 24本

レヴァンドフスキ 21本

アルカディウシュ・ミリク 18本

合計63

<セネガル>

ニアング 31本

マネ 28本

サール 26本

合計85

繰り返すが、ボール保持率はポーランドの6割に対して、セネガルは4割。パス成功本数を見ると、その比率は7:3に近くなる。その中で、攻撃陣が受けたパス本数の“逆転”は大きな意味を持つ。

これはあくまで、1試合のデータだ。次の試合で対戦する日本にとって大事なのは、この数値を生むプレーにいかに対処し、どのようにして自分たちが望む数値に近づけていくかだ。

ただし、今大会のほとんどのチームが、2試合目には初戦と違う選手を先発起用していることも忘れてはいけない。セネガルもポーランドの布陣変更に対して、予選で最多タイの8試合に出場したシェイフ・クヤテをアンカーとして投入し、ゲイェとA・ヌディアイェのコンビを前に出す対策を施していた。

データを活かし、数字をひっくり返していけるか。そこがサッカーの面白いところでもある。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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