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「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」久々の興収100億円突破、海外アニメーション国内興行の昨今

小新井涼アニメウォッチャー
映画館装飾(筆者撮影)

先月末、好評公開中の映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が、国内で公開された海外アニメーション史上最速の31日で興収100億円を突破したことが話題になりました。

今年に入って興行収入100億円を突破した作品は、「THE FIRST SLAM DUNK」と劇場版「名探偵コナン 黒鉄の魚影」に続き、本作で早くも3作目ですが、実は海外アニメーションとしては、2019年11月公開の「アナと雪の女王2」以来、約4年ぶり久々の大台突破でもあります。

特に2020年公開の劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編以降、邦画史上異例ともいえる興収100億円突破作品の頻発が続いていますが、海外アニメーション作品まで含めて概観することで、改めて昨今の国内興行シーンの傾向がみえてきそうです。

■海外アニメーション久々興収100億円突破の背景

国内アニメ映画のヒットが連発する中で、海外アニメーションとしては久々の興収100億円突破となった「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」。

実写に関しては、昨年の「トップガン マーヴェリック」などが話題となりましたが、そういえば本作登場までは、最近海外アニメーションについてあまり話題を聞かなかったな、と感じた人も少なくないかもしれません。

その背景にはコロナ禍の影響、より具体的には、コロナ禍以降のディズニーアニメーション※の新たな動きも大いに関係しているように思います。

  • ※ディズニー配給アニメーション全般を指すものとする

公開延期となった2020年の「2分の1の魔法」など、他の映画作品と同様にコロナ禍の影響を受けたディズニーアニメーションですが、これらを受けて、その後は「ソウルフル・ワールド」や「あの夏のルカ」など、国内リリースが劇場公開から配信に変更される新作アニメーション映画が増えていきました。

2022年の「私ときどきレッサーパンダ」などは、その題材から日本のアニメファンの間でも話題になりましたが、劇場公開されない作品は当たり前ですが興行成績がありませんので、ディズニーアニメーションが国内興行シーンで話題に登ることは必然的に少なくなっていきます。

そうした新たな動きと同時に、前述した国内アニメ映画の興隆が重なったこともポイントです。

劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編以降、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」、「劇場版 呪術廻戦 0」、「ONE PIECE FILM RED」、「すずめの戸締まり」、「THE FIRST SLAM DUNK」、劇場版「名探偵コナン 黒鉄の魚影」…と、邦画史上異例の興収100億円突破作品が頻発することで、コロナ禍で大打撃を受けた映画館側も、そうした話題のアニメ映画の興行に力を入れ始めるようになりました。

こうした流れもあり、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の直前に公開された「ラーヤと龍の王国」や、公開翌月に「劇場版 呪術廻戦 0」が公開された「ミラベルと魔法だらけの家」などは、同時期に上映されていた他の作品達同様、興行成績において重要な上映スクリーン数の確保や、国内興行シーンで話題に昇ることにかなり苦心したであろうことがうかがえます。

昨年までに国内興収100億円を突破した海外アニメーションは、2014年の「アナと雪の女王」(255億円)、2019年の「アナと雪の女王2」(133.7億円)、2003年の「ファインディング・ニモ」(110億円)、2010年の「トイ・ストーリー3」(108億円)、2019年7月の「トイ・ストーリー4」(100.9億円)と全てがディズニー作品。※

100億円には届かずとも、国内歴代興収ベスト100に入っている海外アニメーション作品も、そのほとんどがディズニーアニメーションです。

いわば国内興行において、海外アニメーションといえばディズニーであった中で、上記コロナ禍における配信作品の増加や、アニメ映画の盛り上がりにより国内興行シーンでの登場が控えめになっていたこともあり、近年海外アニメーションについてあまり耳にしないという状況が続いていたのでしょう。

■近年の傾向

興行収入が発表されるようになった2000年以降、2010年代前半までは、興収100億円を突破できる国内アニメ/海外アニメーション映画といえば、ジブリ作品かディズニー作品に限られていました。

それが特に2016年以降、VODの定着と共に再発見された劇場体験の盛り上がりや複数回鑑賞の定着といった様々な要因を背景に、今までにないほど多彩な作品が次々と大台を突破し、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」に至っては、(原作は国内作品とはいえ)初めてディズニー以外の海外アニメーションで、国内興収100億円突破の偉業を成した作品にもなりました。

こうして2010年代後半以降、コロナ禍を経て着実に変わってきているアニメ/アニメーションの国内興行シーン。

来月には謎のベールに包まれ続けている宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」公開も控えており、今後どういった展開をみせていくのか、まだまだ目が離せそうにありません。

※2023年6月9日13:35 タイトル及び本文中の誤字修正。大変失礼いたしました。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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