「死ぬかもしれない。でも、死ぬわけにはいかない」。「はんにゃ」川島、腎臓がんからの5年
2015年に腎臓がんの手術をしたお笑いコンビ「はんにゃ」の川島章良さん(38)。がんが見つかったのは妻が妊娠中で「死ぬかもしれない。でも、死ぬわけにはいかない」という思いが沸きあがりました。否応なしに、自らの健康と向き合う中で、以前から強い関心を持っていた「だし」を使ったダイエット方法を考案。昨年4月頃から約1年で82キロから64キロまで減量に成功しました。一つの目処となる術後5年が経過し、今の思いを吐露しました。
プロポーズのタイミングで
2014年11月、妻にプロポーズをしようとしたタイミングで、腎臓がんが分かったんです。「結婚もするし、その前に健康診断も受けておくか」。そんな気持ちで受けに行ったら、再検査となりまして。妻の妊娠も分かった中で、僕のがんも分かりました。
それまでの食生活は、今から考えると完全なる暴飲暴食でした。これは、けっこう“芸人あるある”でもあるんですけど、ロケで食べ歩きをしたり、大食い系の仕事をした後でも、先輩に「ご飯行く?」と誘われたら「ありがとうございます!」と瞬時に返事をするんです。人間関係が大事な仕事でもありますし。
満腹の状況からまたたらふく食べさせてもらう。そんな日々を送るうちに、ガンガン太っていったんです。そこから病気にもなって、否応なく、健康的な食事と向き合うことになりました。
ただ、そういう食事って味気ないイメージがあったんです。塩分控えめだったり、食べ応えがなかったり。なんとか、それを感じないように、美味しく、無理なくできないか。そこで頭に浮かんだものが「だし」だったんです。
もともと、親父の実家が祇園で京懐石のお店をやってまして。昔から、だしというものに触れ合う機会が多くて、僕自身も“だしソムリエ1級”の資格を取得したりもしてたんです。
だしを手軽に取れるだしパック自体がうま味の塊なので、それを活用すれば、なんでも美味しく、ヘルシーに食べられるんじゃないか。それを続けると、うまくいけば痩せられるんじゃないか。そんな思いがあって、じゃ、まずは自分でやってみようと思いまして。
去年の2月頃に考えて、4月頃から実際にやりだしました。和食のみならず、中華やイタリアンでもだしをきかせることで調味料による味付けがおさえられる。さらに、だしパックごと入れると、かつおやこんぶ、しいたけの食物繊維も取れるし、何より美味しい。
我慢ではなく、美味しいから食べる。そうなると、ナチュラルに体になじんでいきますし、いつの間にか体重も減っていく。僕はかなりの三日坊主なんですけど(笑)、これは続いて、約1年で82キロから64キロまで減りました。今はそれをキープしている感じです。
以前から趣味でフットサルをやるんですけど、その時に痩せたことを一番実感しますね。「このボールには追いつかないだろうな…」と思うボールに追いつくんです(笑)。今までは足がもつれていたようなところで、一歩が出て蹴れるんです。自分でもびっくりしました。となると、さらに運動が楽しくなって、また痩せていく。そんな循環も生まれました。
最悪、この日で終わっても…
あと、やっぱり家族ですよね。奥さんからもずっと「痩せたら?また違う病気にもなっちゃうんじゃない?」と心配されてもいましたし。痩せたらいびきもかかなくなったそうで、奥さんが喜んでくれるのがうれしくて。その循環もあって、痩せたというのもありました。
病気が分かった時期に、結婚、妻の妊娠が全部重なってました。病名が病名だけに、反射的に「死ぬかもしれない」という思いが頭をめぐりました。ただ、新しい命が妻に宿ったところなので「死ぬわけにはいかない」という思いも沸きました。
そこから、毎年再発の検査をして、体をチェックしてきたんですけど、今年の1月で術後から丸5年が経ちました。完治ということではないんですけど、再発の可能性はかなり低くなるという一つの節目を迎えました。
正直、検診のたびに、生きた心地がしなかったです。前も自覚症状なく、突然告知をされたので、特に痛いとか異常はないけど、実は再発してしまっているんじゃないか…。そんな思いはずっとありました。
その中で、言葉にすると平坦な表現になってしまいますけど、一日一日を無駄にしたくない。最悪、この日で自分が終わってしまったとしても、なるべく後悔を少なくしたい。そんな思いが練り上げられていきました。
24時間ずっとその思いと向き合い続けるのは、それはそれで精神的に不健康でもあると思って、その事実を見つめ続けるわけではないけれど、常にその意識は本気で持っている。そんな5年を過ごしてきました。
5年経った時、担当してきてくださった病院の先生と祝杯をあげました。そのお酒は染みわたりましたね。
ただ、驚いたのが、先生、ムチャクチャ飲むんですよ…。5年経過の喜びの感情が、すぐさま「先生、そんなに飲んで大丈夫なの?」という心配に変わっていきました(笑)。ただ、それくらい、大きな節目だったということでしょうし、それを喜んでくださったということでもあるし、それはそれで、やっぱりうれしかったんですけどね。
(撮影・中西正男)
■川島章良(かわしま・あきよし)
1982年1月20日生まれ。東京都出身。NSC東京校10期生。同期の金田哲と2005年にお笑いコンビ「はんにゃ」を結成する。同期は「オリエンタルラジオ」「フルーツポンチ」ら。「ズクダンズンブングンゲーム」という独自のゲームを行うコントで人気者となり、フジテレビ「爆笑レッドカーペット」などでも注目される。14年に腎臓がんであることが判明。同時期に妻にプロポーズをし、妻の妊娠も分かる。15年、長女が誕生。 18年、川島、金田ともアイドルユニット「吉本坂46」に合格しメンバーとなる。 自身の経験をもとに執筆した著書「はんにゃ川島の魔法のだしパックダイエット」を先月上梓した。