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東京の雨でビールをつくる日本初のプロジェクトが始動

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
水源は空にあった!(写真:アフロ)

雨水でビールをつくる日本初のプロジェクトが始動。東京に降った雨を原料にホップと酵母を加えたクラフトビールを製造しようと、現在、クラウドファンディングで支援を募っている。

この「雨水ドリンクプロジェクト」を立ち上げたのは、水に関わる事業者、研究者、市民のグループ。多くの人に雨の価値を発見してもらいたいという。

「えっ?雨で?」と思うかもしれないが、雨は天然の蒸留水。

降り始めこそ空気中の塵などといっしょに降りてくるので汚れているが、降り出して30分以上たった雨の水質はむしろ蒸留水に近い。地下水や川の水は流れながらいろいろな物質を溶かすけれど、雨の場合はそれがない。だから正しくためれば、良質な水資源となる。

渋谷スクランブル交差点に降る雨
渋谷スクランブル交差点に降る雨写真:アフロ


おもえば東京は、水源のほとんどを150キロも離れた上流のダムに頼っている。しかし、水源は頭上あったのだ! それに東京に降る1年間の雨の量は、東京の1年間の水道使用量を上回っている。水の自給自足も夢ではないし、災害に備えて雨を使わない手はない。

加えて、最近はゲリラ豪雨が頻発している。都会に降る雨をためると、水の確保だけでなく洪水の防止にもつながる。1つのタンクでためられる雨の量はわずかでも、それが東京全体にひろがっていけば、大きな効果を発揮するはずだし、取り組むことで雨について楽しみながら自然に学べる。

「雨水ドリンクプロジェクト」は今回、文京区産の雨を使って限定160リットルを製造。雨を蓄え、クラフトビールを製造することで、美味しく、楽しく、レジリエントなまちづくりに貢献したいという。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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