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元自衛官の異色コンビ「トッカグン」が語る芸能界でのサバイバル術

中西正男芸能記者
「トッカグン」の小野寺耕平(左)と佐藤昌宏

 小野寺耕平さん(35)、佐藤昌宏さん(35)ともに元自衛官の異色コンビ「トッカグン」。自衛隊での訓練を応用した60個のサバイバル術を記した著書「自衛隊芸人トッカグンの日用品で簡単にできる!!超自衛隊式防災サバイバルBOOK」も先月リリースしました。缶詰でランプを作る、サランラップで脱出用ロープを作る、泥水をろ過して飲む、電池が足りなくても電化製品を動かすなど二人の経歴を生かしたテクニックが満載ですが、自分たちがこの芸人の世界で生き残るためのサバイバル術に関しても語りました。

起床1分後に整列

 佐藤:高校卒業して自衛隊に入ったんですけど、卒業後の進路で悩んだ時に、地方の自衛隊本部みたいなところの方に説明を聞く機会がありまして。公務員だし、定時で終わるし、体も鍛えられる。就職口というか、そういった部分でも実は優れているところなのかなと思って、入ったという流れでした。

 小野寺:最初は教育期間というのが6カ月ほどあって、その間は完全にみんなで集団生活です。自由時間が一日に30分とかなんですよ。朝6時に起きて、1分以内に屋上に整列という感じで。

 食事も、掃除も、お風呂も、みんな一緒ですからね。ここまで時間が定められた生活というのは、当然、それまではなかったですから。慣れるまでは相当大変ではありました。

 プライベートはないですからね。常に8人部屋か10人部屋。教育期間が終わったら終わったで、そこから実際の訓練に入ります。僕らは戦闘部隊だったので、山の訓練というのがあるんですけど、これが非常に厳しくてですね…。

 雨でも、雪でも、1メートルくらいの穴を掘ってそこで身を隠すんですけど、冬は凍ってますし、一日3時間くらいの睡眠時間で訓練を続ける。これは純粋に大変でした。

 佐藤:一番つらかったのは、雪山で溶けた雪がブーツの中に入ってきて、それがまた靴の中で凍って足が氷漬けになっちゃって。足の感覚はないんです。でも、歩いて進まなくちゃいけない。これは大変でした。ただね、実は自衛隊の中に売店があって、そこでは支給品よりも品質のいい靴下とかが売ってるんです。

 例えば、その高機能靴下は本当によくできているので一足7000円もするんですけど、一回雪山の命がけの苦労を知ったら、これはね、すぐ買います(笑)。

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 小野寺:あと、分かりやすくつらいのは、催涙ガス体験というのが入隊してすぐあるんです。催涙ガスが充満しているテントの中に入ってみるという。実際、どれくらい体にこたえるかを身をもって知るんです。もちろん、催涙ガスもレベルがあるんで、鼻水とか粘膜にくるけど、毒はないというものでやるんですけどね。

 まずはガスマスクをして入る。ガスマスクをしていたら、ニオイはするけど大丈夫なんです。で、次はマスクを取ってみる。その瞬間、よだれと鼻水と涙が止まらなくなるんです。

 佐藤:目も痛くて開けられないんですけど、毛穴からも痛みが来るんです。あくまでも体験なんでケガがないレベルではあるんですけど、あれはきつかったですね。

自衛隊から芸人の世界へ

 小野寺:そこから芸人の世界に入るんですけど、自衛隊でずっとやっていくというのももちろんすごいことなんですけど、僕の地元は田舎なもので、昔から東京に憧れがありまして。そして、これも純粋に芸能的な華やかなところへの思いもあった。そんな思いもあって、思い切って自衛隊を辞めて、相方を誘って上京したんです。

 佐藤:僕も同じく東京に憧れがあったので(笑)、これはいいきっかけだと。芸人も世間的に考えると、なかなかハードルの高いというか、なるには思い切りが必要な仕事だとも思うんですけど、自衛隊の時の山での訓練も経験していたので、ま、長めの演習だと思って入ってみようと(笑)。

 小野寺:やっぱり二人とも自衛官というのは経歴的に珍しいのは間違いないので、あまり話したことない芸人の先輩でも、スッと話を聞いてくださったりはしますね。興味を持って話しかけてきてくれるというか。例えば、手りゅう弾って、実はすごく重いんです。

 佐藤:なので、野球のボールみたいに投げると、すぐに肘を傷めるので、腕をまっすぐ伸ばしたまま遠心力を使って投げる。ま、それだけのことではあるんですけど(笑)、やってないと分からないことなので、そういった話は興味を持って聞いてくださいますね。

 小野寺:あとは上下関係の厳しい世界でやってきたので、そこはそのまま芸人の世界でもストレートに役立っています。そして、この経歴のおかげで、YouTubeのサバイバル術の動画も多くの方に見ていただけ、本まで出せました。

 佐藤:本当にありがたいことだと思っています。この経歴こそが、僕らが芸人の世界を生き抜くサバイバルアイテムみたいになってます(笑)。どこまでもありがたいことではあるんですけど、今でも職業病的なところもあるんですけどね。街で歩いていると、いつの間にか、横を歩いている人と行進みたいに歩幅を合わせてしまうという…。ま、それくらいのことはなんてことないんで(笑)、これからもこの武器でサバイバルしていきたいと思います。

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(撮影・中西正男)

■トッカグン

1983年12月7日生まれの小野寺耕平と84年2月19日生まれの佐藤昌宏が2008年、コンビ結成。ともに宮城県出身。東京NSC12期生。小野寺が主にツッコミを、佐藤がボケを担当する。吉本興業所属。東京NSC12期生。「元自衛隊芸人」「サバイバル芸人」として活動中。14年からYouTubeチャンネル「トッカグンの東京サバイバル」を開設し、自衛隊入隊当時の体験談や、サバイバル術、アウトドア、防災食の試食、その他自衛隊関連の動画を配信している。コンビ名の「トッカグン」は、2人が自衛隊時代に所属していた部隊「特科群」から。著書「自衛隊芸人トッカグンの日用品で簡単にできる!!超自衛隊式防災サバイバルBOOK」が発売中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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