エントリーシート地獄から解放されるための法則集・1~ES文法・書き方のコツ編
6月選考解禁前の締め切りラッシュ
今年(2017年卒採用)は、選考解禁が6月。
それもあって、エントリーシートの提出時期は、4月上旬から5月上旬に集中しています。
学生からすれば、エントリーシートを次から次へと書かなければならない、まさに「エントリーシート地獄」。
うんざりする学生も多いはず。
そんな就活学生のために、エントリーシートの現状と書き方のコツをまとめました。
だらだら書いていたら、現時点ですでに軽く2万字を超えていますので、全4回でお送りします。
本稿(1回目)は、ES文法、設問の指示など基本原則について9項目をまとめました。
残り3回は「志望動機・自己PR編」「ガクチカ編」「欠点・趣味・写真編」を予定しています。
法則1:構成・文法は多少無視の「ES文法」
通過率アップ
構成・文法は多少無視
通過率ダウン
構成・文法にこだわりすぎる
解説
文章には必ずルールがあります。
構成で言えば、起承転結、序破急など。
文法だと、主語・述語をはっきりさせる、などなど。
エントリーシートも、当然ですが日本語で制作するわけですから、文章のルールは必要です。
ですが、通常のレポート・小論文と同じ、というわけではありません。
どちらも同じネタですが、学生の回答構成1と2では微妙に異なります。
回答構成2には、回答構成1にないものとして自己PRが入っています。
「この行動力を貴社でも生かしたい」がそうですね。
文章のオチとしては、こちらの方がすっきりしています。
一方、回答構成1には、行動具体例が2つ入っています。
「プレゼンで工夫」「教員を巻き込む」がそう。
自己PRを入れたからダメ、というわけではありません。
しかし、設問の指示が
「具体的に記述」
です。
であれば、文章の構成として、すっきりしていなくても、自己PRをオチに使わず、具体例で終わらせている回答構成1の方が、通過率は高いでしょう。
もう1つ行きましょうか。
※学生回答3・4はともに冒頭の一文
学生回答3は主語がはっきりしていますが、学生回答4はそうではありません。
文章としては学生回答3の方が整っています。
ただ、エントリーシートで文字数制限があるわけです。
書きたいことを圧縮しなければならないのに、
「私が最も力を入れたのは」
11文字も、使うわけでもったいないと思いません?
多少乱暴であっても、学生回答4のようにいきなり言い切ってもエントリーシートなら通用します。
法則1まとめ:エントリーシート文法はレポートや小論文など、本来の文章ルールとは微妙に異なる
法則2:書き方のコツは「1晩」「1時間」「10分」
通過率アップ
書いてからしばらく置いて、それから見直す
通過率ダウン
書いてそのまま提出
解説
エントリーシート、というよりも文章全般に言えることです。
学生でも、社会人でも、ライターでも作家でも誰でも、文章を書いた直後は
「いい文章だ」
と自画自賛するものです。
それは、文章を書ききった、という熱を帯びていることが理由です。
では、その熱が冷めるとどうか。
熱があるときは見えなかった誤字脱字や構成のまずさなどがちょこちょこ見えてくるものです。
理想は、エントリーシートを書いたら、一晩置いて、翌朝、見直すこと。
ただ、エントリーシートの提出ラッシュで忙しい就活生だと、そんな悠長なことは言っていられないかもしれません。
その場合は「1時間」、せめて「10分」。
その企業のエントリーシートから離れて、他のことをやってみてください。
他社のエントリーシートだと、同じ内容になるはずなので、それはパス。
そうですねえ、お風呂に入るとか、新聞を開くとか、漫画を読むのでもいいですし、You tubeで面白動画を探す、というのでも、何でも可。
ともかく、他のことをやって、それで一端リセットすること。
一晩置くよりも、効果は薄いでしょうけど、それでもそのまますぐ提出するよりは、色々と見直せるはず。
法則2まとめ:一回離れてから見直すと、より効果的
法則3:ES添削は人によりバラバラ
通過率アップ
ES添削は受けるが最後は自分で判断
通過率ダウン
ES添削を受けて誰が正解か気にしすぎる
解説
ES添削にやたらとこだわる学生がいます。
私も出入りする大学や就活カフェなどでよく添削をします(自分が言うのもなんだけど、無料)。
添削はいいのですが、社会人訪問をした相手、大学キャリアセンター、キャリアカウンセラー、ゼミ担当教員など様々な人に見てもらっている、という人がそれなりにいます。
ここで、複数の意見を聞いて自分の中で消化できるタイプなら、問題はありません。
問題は、
「××さんはこれでいいと言っていたけど、石渡さんの話は違います。どちらが正しいでしょう?」
と聞いてしまうタイプ。
そんなの、俺が正しくて、他が間違っているのだよ(ウソ)。
これ、真面目な話をすると、全員正解で、全員不正解なのです。
たとえば、去年3月、履歴書・エントリーシートの手書き論争というものがありました。
私も、それに乗っかる形で記事を書きました。
すると、手書き否定派の方(某IT業界関係者)から、感情的な反応が。
「こんなくだらないことを書くなど許しがたく、筆誅を加える」
と書かれたことも。
ここで、私はこのIT業界氏を非難するものではありません。
IT業界氏からすれば、自社と自社が属する業界からすれば、「PC作成」が正しく、「手書き」がくだらない、ということになります。
一方、「手書き」にこだわる企業・業界が存在することもまた事実です。
ここで、手書き否定派の方は、
「手書きにこだわるなど非効率的」
と批判されることでしょう。
一方、手書き派の企業担当者からすれば、
「手書きにこだわる方がむしろ効率的に学生の良し悪しを判断できる」
と主張します。
どちらが正しいか、ではありません。
それぞれ、学生を見るポイントが違うわけで、優劣を論じても、そこは意味がないのです。
ES添削も全く同じです。
採用担当者、ゼミ教員、キャリアセンター職員、キャリアカウンセラー、あるいは私。
それぞれ、見るポイント、経験など全部異なります。
しかも、学生が志望する企業も重視するポイントがそれぞれ異なるわけです。
つまり、添削すれば、人によって意見が異なるのは当たり前。
学生からすれば、正解にこだわりたいでしょう。
ですが、そこはそもそも正解のない世界、それがエントリーシートです。
正解がないのであれば、どのアドバイスを取るのか、捨てるのか、そこは学生各自の判断です。
というわけで、誰のアドバイスが正しいか、は聞いてもムダ、という次第です。
法則3まとめ:ES添削は受けても最後は学生本人の決断次第
法則4:一人の社会人にのみ依存する
通過率アップ
複数の社会人に見てもらうか、自分でどうにかする
通過率ダウン
一人の社会人にのみ依存してその添削にこだわる
解説
さっきの続き。
私にエントリーシートの添削依頼をする学生は、私以外の人に複数見てもらうか、数回添削したらコツをつかんであとは自分でどうにかするタイプがいます。
それ以外だと、ひたすら依存しきって、細かく聞いてくるタイプも。
これ、私だけかなあ、と思ったところ、キャリアセンター職員やキャリアカウンセラーも異口同音に
「いる、いる」
とのこと。
で、これも私だけでなく、他の職員・カウンセラーにも共通しているのですが、依存しきるタイプほど、実は就活が苦戦してしまいがちです。
せっかく添削したエントリーシートも、なかなか通過しない、ということも。
これ、理由は簡単で、学生が自分で考える、という作業を放棄してしまうからです。
同じエントリーシートでも、勉強ネタなどを重視している、と評判のA社とおおまかな設問しか用意していないB社とでは、書く内容が大きく変わってくるはず。
そのあたりは学生個人が自分で企業研究をして自分で考えなければなりません。
添削も受けるにしても、そのあとは自分なりに変えていく必要があるのです。
依存しきるタイプは、エントリーシート地獄から解放された、と甘く考えてしまいがちです。
ある就活生は、OB訪問をしたA社のOBに対して、ライバル社であるB社とC社のエントリーシート添削を依頼したそうです。
そのOBもできた人で、
「君、心臓強いねえ」
と、イヤミを言いつつ(たぶん通じていません)、添削したそうです。
自分の話なんですから、添削はいいにしても、依存してしまわないこと。
という話を私に依存してきた学生にすると、
「だって、他、誰を頼ればいいんですか!」
と、逆ギレされたことがあります。
こらこらこら。
まあ、地方の学生で主戦場が東京と大阪だから心細かった、というのもあるかもしれませんが…。
それでも、
・合同企業説明会の相談ブース
・新卒応援ハローワーク
・キャリぷら、地方のミカタカフェなどの就活カフェ
・私学事業団学生就職活動サポートセンター
・各大学の東京・大阪などにあるサテライトオフィスやサテライトキャリアセンター
などなど、探せばいくらでもあります。
今どき、SNSで志望企業の社会人を探したっていいわけですし。
1回添削してもらって、それで2度と連絡するな、というわけではありません。
加減を考えようね、という話です。
法則4まとめ:添削は一人に依存してしまわないこと
法則5:100点を目指すなかれ
通過率アップ
うまく書けていないところがあってもスルー
通過率ダウン
完璧さを追求しようとする
解説
完成度を上げたうえで提出するか。
それとも、量産していくことを優先するか。
エントリーシートの場合は、私は後者をお勧めします。
もちろん、内容の見直し、誤字脱字の確認などは必要です。
それ以外では、どこかで線引きして、えいやっと提出するくらいの気持ちでいないと、前に進みません。
それに、エントリーシートの場合、全ての項目で100点を取らなくても、採用担当者の琴線に引っかかるものがあれば通ります。
というわけでどんどん量産していくことを強くお勧めします。
法則5まとめ:完璧さを追求するよりもある程度で見切って量産優先で
法則6:設問の指示に答えろ、答えて、答えてください(懇願)
通過率アップ
設問の指示を守る
通過率ダウン
設問の指示を無視する
解説
某商社の設問です。
わざわざ、
「(改行はしないでください)」
と入れています。
なぜ改行するな、と指示しているかは不明です。
ですが、ここでは
「改行はしないで下さい」
という指示が最優先。
ところが、誤字脱字チェックはできても、これに気付かない学生が結構いるわけです。
もちろん、この指示がなければ、適度に改行をしていった方が断然読みやすくなります。
これも某商社の設問。
「最大の挑戦」で悩む学生もいます。
まあ、要するに「ガクチカ(学生時代に頑張ったこと)」を書けば十分です。
この設問の指示には、
「(結果の成否は不問)」
とあります。
わざわざ入れている、ということは結果の成否はどうでもいい。
つまり、成功したネタでも失敗したネタでもいいから具体的に書け、ということでしょう。
この設問に対して、学生の回答構成を3パターン用意しました。
具体例が多いのは回答構成1です。
一方、回答構成2は1よりも1ネタ少なくなり、回答構成3は具体例がなくなり、自己PRが入りました。
「成否は不問」ですから、自己PRは入れても入れなくてもいいでしょう。
入れたから落ちる、ということもないはず。
と言っても、具体例がほぼない回答構成3は論外でしょう。
となると、回答構成1か2のどちらか。
多くの学生は回答構成2を選択するでしょうね。
ついでに言えば、「成否は不問」と断っているにも関わらず、成功ネタを選択する学生が多いことも予想されます。
そこで、あえて回答構成1(まあ、これだと成功ネタか)、それか、回答構成2・失敗ネタで行くと、他の学生とは全く異なる、引き締まった内容になります。
これはガクチカ(学生時代に頑張ったこと)と自己PRの中間形態でしょうか。
「所属組織」とありますから、ゼミ、アルバイト、サークルなどを書くなら、ガクチカの変化球。
「自分自身」とありますから、自分ひとりの話だと自己PRの変化球となります。
どちらでもいいのですが、「その理由」が設問の指示。
つまり、変化の理由を書かなければなりません。
こういう細かい指示をきちんと見ているかどうか。
ES添削をしていると、指示を無視する学生が結構多いのであります。
法則6まとめ:設問の指示に従って回答を作成すること
法則7:ネタ1つにこだわるよりは書き分け
通過率アップ
複数のネタを散りばめる
通過率ダウン
1つのネタを使い回す
解説
サークルやアルバイト、ゼミなど学生からすれば、複数のネタを使うか、1つのネタで勝負するか、悩みどころです。
基本的にはどちらでも問題ありません。
ただ、ときどき、1つのネタ、それも同じ話を使い回そうとする学生がいます。
たとえば、こんな感じ。
読み手からすれば、「サークルの合宿」以外に何かネタがなかったか、気になるところ。
せめて、同じサークルでも、合宿以外に新入生歓迎行事とか他のネタにした方が無難。それか、ゼミ・アルバイトなど別のネタにするか。
エントリーシートは、学生の個人情報を提示して企業に採用の是非を問う書類です。
ここで言う「個人情報」とは、学生の名前、住所、電話番号、メールアドレス、大学・学部名など、一般的な意味での「個人情報」だけではありません。
一緒に働けるかどうかを判断する学生のエピソードも含みます。
この「個人情報」をできるだけ多く出すことがエントリーシートの鉄則です。
それを、書きやすいから、という理由で、1つに限定してしまうのはちょっともったいない。
一方、あれもこれも書きたい、という学生だとどうでしょうか。
文字数にもよりますが、200字くらいだと、1項目に2ネタを積み込むのはかなり厳しいところ。
400字でも、うまく書き分けないとしんどいところ。
自信がないなら、1項目1ネタくらいがちょうどいいでしょう。
法則7まとめ:1ネタの使い回しより複数ネタを出す
法則8:「お前が言うな」ネタは切る
通過率アップ
採用担当者がわかっているネタをできるだけ切る
通過率ダウン
採用単者がわかっているネタをあえて書く
解説
「お前が言うな」ネタとは、その企業や働き方の説明です。
自己PRや志望動機で、書くネタにつまった学生がよく出る手。
回答1・2とも某商社向けのエントリーシート。
回答1は、この志望企業の説明が大半を占めていて、どういう学生が理解できません。
それに、「二人三脚」「信頼関係」「リスク」など、それぞれ、この企業の社員が一番よくわかっていることです。
それをわざわざ、エントリーシートで学生が書いても、
「お前が言うな」
で、おしまいです。
回答2も、これも誰でも言えてしまいますね。
それに、
「政府関係者、各分野の専門家、技術を持つ企業をまとめ、全員で協力して目標に向かい、創り上げた事業を機能させることで多くの企業や組織の活躍の場を広げ」
ようとしない社会人って、そんなにはいません。
少なくとも、この商社はいないでしょう。
誰でも書けるネタであっても、学生個人の説明であれば、問題ありません。
志望動機・自己PR編にも書きますが、志望動機や自己PRはありきたりな話・抽象表現を使わざるを得ません。
たとえば、こんな感じ。
ありきたりではありますが、これは学生本人の思考の説明です。
前後に補足する内容があるのであれば、これはセーフ。
エントリーシートは、学生の個人情報を知るための手段です。
決して、企業情報を知るための手段ではありません。
法則8まとめ:「お前が言うな」ネタはできるだけ切る
法則9:前提条件を自分で作り出せるかどうか
通過率アップ
あいまいな前提条件ならそれなりに対応して書く
通過率ダウン
前提条件は何か気にしすぎる
解説
エントリーシートでここ最近目立つのが、前提条件が曖昧な設問です。
「あなたの自己PRを書いてください」
「弊社を志望する理由はなんですか?」
などであれば、前提条件ははっきりしていますね。
前者なら、自己PR、後者なら志望動機を書けばいいのですから。
では、次。
どちらも、前提条件が相当ふわふわっとしています。
居酒屋で出てくる、だし巻き卵のように。
設問1・2とも自己PRの変化球ではあります。
とはいえ、自分の話だけでなく、企業研究をした結果も書いた方がいいかどうか、この企業の事業などを盛り込んだ方がいいかどうか、学生は大いに悩むことになります。
答えは簡単で、「どっちでも」。
設問1だと、自己PRオンリーでも構いませんし、どの部署で働きたいか、などを書いても構いません。
設問2も同様。
気になる事業や部署で働きたい、というネタでもOK。
特になければ、
「仕事ができる社会人になりたい」
など、自分なりの理想像を書くのでも可。
答えがあるようではっきりしていないのが社会人生活。
この前提条件が曖昧な設問で、学生の適性を見よう、というのが企業側の意図です。
ま、公式見解としては、
「学生の好きに書いてほしい」
というところでしょうか(本当に深くは考えていない企業もあります)。
前提条件がはっきりしている設問なら、その設問の指示に従って回答を作成するべきです。
一方、前提条件が曖昧な設問なら、自分で前提条件を設定したうえで回答を作成していくしかありません。
法則9まとめ:前提条件が曖昧な設問にめげない