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明日テレビ版乗車開始「鬼滅の刃」無限列車編、今改めて振り返る劇場版1周年の軌跡

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:西村尚己/アフロ)

本日10月16日で、劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の公開から早1年となりました。

国内映画史において数々の記録を樹立してきた本作。

その盛り上がりは公開以降どのような軌跡を辿ってきたのでしょうか。

完全新作エピソードの放送を経て、明日から放送されるテレビ版無限列車編の任務開始を前に、1周年を迎えた劇場版が残してきた偉業の数々を、改めて振り返ってみます。

■伝説は公開前から始まっていた?

本作への異例の反響は、映画“公開前”から既に始まっていました。

公開日を週末に控えた昨年10月13日の深夜0時。日付が変わり、初日以降の座席が先行販売されると同時に劇場ホームページへのアクセスが集中し、接続しにくい状況が続いてしばらく座席の購入が困難になるという事態が発生したのです。

チケットの発売と同時にアクセス過多のため映画館のサイトがパンクすること自体は、舞台挨拶や最速上映等でもよくあることですが、そうした特別興行の会場となる映画館に限らず、様々なシネコン系列が全国的にアクセス困難になることはそうそうありません。※

公開後、興行成績が報じられてからその盛り上がりを知った方も少なくないとは思いますが、実はこのように、本作における異例の盛り上がりは、公開前から既に始まっていたのです。

※その後公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版」でも同様の現象が起きました

■公開直後のロケットスタートとその社会的背景

そうして迎えた公開初日から週末にかけての3日間にも、本作の盛り上がりは連日注目を集めていました。

中でも特に話題になっていたのが、その上映回数の多さです。

15分毎の上映や複数スクリーンで同時刻に上映をする劇場もあり、中でもTOHOシネマズ新宿では1日に42回もの上映が行われるなど、『田舎の電車の本数より多い無限列車』等と、話題になっていました。

最初の緊急事態宣言が明け、徐々に新作劇場版が封切されてきた時期だったのもあり、上半期に受けたコロナでの打撃を跳ね返そうと映画館側も本作の興行にかなりの力を入れていたことが窺えます。

上映回数を増やした分、ただでさえ多い観客の回転率もさらに上がり、公開初日の興行成績はなんとその日だけで12億円となり、初日を含めた週末3日間では46億円を記録。日本国内で公開された映画の土日興行収入、及び動員数の歴代1位となる記録をたたき出すなど、本作がロケットスタートを切る後押しともなりました。

■国内記録と世界での盛り上がりの伝播

その後も本作は、国内映画史上最速の10日間で興行収入100億円を突破。その頃から『煉獄さんを200億、いや300億の男にしよう』という声が上がっていましたが、蓋を開ければ最終的な興行収入は国内の歴代最高興行収入記録を大きく塗り替える400億円超えを達成するという快挙を成し遂げました。

そうした記録への注目はもちろん、その頃加えて話題となっていたのが、本作の海外での盛り上がりです。

このコロナ禍に「千と千尋の神隠し」を超える興行収入を記録した作品、ということでも早くから世界的な注目を集めていましたが、実際に各地で公開されるや現地のファンに絶賛され、コロナ禍の各国興行界で次々と好成績を残し話題となりました。

これまでも、海外で日本と同様、時には日本以上の好成績を生んだアニメ作品はありましたが、本作が『世界でも好評』であったと、今ここまで周知されている背景には、国内メディアが世界での動向にまで注目し、その反響を積極的に国内で報じていたことも大きいです。

加えて、YouTubeやTwitterなどを通して、各国のファンの熱気にアクセスしやすい現在の環境も、その一助となっていたように思います。

こうして本作は、その10ヶ月近いロングラン上映の間、上記をはじめとする国内国外での盛り上がりを伝えるニュースが連日発信され続けることで、常に話題となり続けてきました。

通常、テレビシリーズの続編放送には時間もかかってしまうので、それまでには盛り上がりもある程度落ち着くことがほとんどですが、本作は振り返ると2019年以降、ブームは落ち着くどころかテレビシリーズ第1期の盛り上がり、原作最終回での盛り上がり、そしてこの劇場版公開での盛り上がりと度々加速をし続け、第2期を迎えることとなったのです。

ここまで劇場版のヒットを、本作を取り巻く作品の外側の出来事と共に振り返りましたが、そうして数々の快挙を成し遂げるには、なによりその内容、映画本編の魅力があったことが大前提です。

明日からその映画本編にあたるエピソードが新作追加映像等も加わり放送される無限列車編、実はまだ映画をみたことが無いという人も、このテレビ版の放送を機に、ぜひ上記社会現象を生み出してきた本作の魅力を体感してみてください。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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