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ラグビーW杯まで9ヶ月。イングランド代表エディー・ジョーンズHC解任!その理由は?

斉藤健仁スポーツライター
ラグビーW杯まで残り9ヶ月というところでジョーンズHCは解任となった(写真:ロイター/アフロ)

世界のラグビーシーンに激震が走った! 

12月6日(火)、イングランドラグビー協会(RFU)は、エディー・ジョーンズイングランド代表ヘッドコーチ(元日本代表監督)の解任を発表。イングランド代表は来年のラグビーW杯で日本代表と予選プール同組で対戦するチームであるが、その指揮官が替わることが決まった。

RFUは「コーチの引継ぎ計画に関して行ってきた長期にわたる作業を終了し、近い将来、変更を発表する予定です。その間に、リチャード・コッカリルは、男子パフォーマンスチームの日々の運営を引き継ぐことになります」と公式声明で発表。FWコーチのコッカリルが暫定的にヘッドコーチを務め、現在進めている後任人事がまとまり次第、新ヘッドコーチを発表する。

後任のヘッドコーチには、かつて日本代表やイングランド代表でジョーンズHCの下でアシスタントコーチも務め、現在、レスター・タイガースの指揮官を務めるスティーブ・ボーズウィック氏が有力視されている。

◆輝かしい成績を残したジョーンズHC

RFUのビル・スウィーニーCEOが「エディー氏が、3度のシックスネーションズ優勝、そのうち1度のグランドスラムを制し、ラグビーワールドカップ決勝まで導いた、イングランドラグビーへの大きな貢献を認めなければなりません」と話したように、ジョーンズHCはイングランド代表を率いて輝かしい実績を残してきた。

ジョーンズHCは、2015年ワールドカップで日本代表を南アフリカ代表戦からの勝利を含む3勝に導いた後、2016年からイングランド代表ヘッドコーチに就任。在任7年でグランドスラム(全勝優勝)1回を含む3度のシックスネーションズ優勝、イングランド史上最高のテストマッチ18連勝、2019年のワールドカップ準優勝などの成績を収めてきた。テストマッチ81試合で、59勝20敗2分、勝率73パーセントとイングランド代表ヘッドコーチで最も高い勝率を誇った。

※エディー・ジョーンズHCがイングランド代表の指揮官に就任した時の記事はこちら→「元ラグビー日本代表HCジョーンズ氏が、イングランド代表の指揮官に就任決定!」

◆今年は5勝6敗1分にとどまった……

しかし、今年に入ってのテストマッチは12戦で5勝6敗1分にとどまった。シックスネーションズは2勝3敗で3位。夏のシリーズではアウェイでオーストラリア代表に2勝1敗。そしてホームで迎えた秋のシリーズでは白星は日本代表戦のみで、初戦でアルゼンチン代表に29-30で敗戦し、ニュージーランド代表と25-25で引き分け、南アフリカ代表には13-27で敗れた。

これは4勝7敗だった2008年以来最悪の結果で、これまで2023年ワールドカップ終了までジョーンズHCの続投の姿勢を崩さなかったRFU側もついに決断を迫られることになった。ジョーンズHCの去就については、「独立審査会(RFUのReview panel)」が設けられ、代表選手に対して匿名の調査も行われたという。

◆賛否両論、様々な意見が噴出した

11月26日の南アフリカ代表戦敗戦後、ジョーンズHCの解任がメディアで取り沙汰されるようになり、様々な意見が噴出した。

ジョーンズ氏がアドバイザーを務めて、2007年のワールドカップで南アフリカ代表を優勝に導いた盟友ジェイク・ホワイト氏は「Rugby Pass」のコラムで、ジョーンズ氏のコーチング能力を高く評価しながらも、スタッフが長続きしない〝悪いくせ〟がひとつの要因であると述べていた。

また、ジョーンズHCの下でもプレーした元イングランド代表FBマイク・ブラウンも「Daily Mail」において、同様にそのコーチングは唯一無二と認めつつも、スタッフが定着しないことを問題視。

事実、2019年ワールドカップ時のコーチングスタッフは今秋の時点では1人も残っておらず、今年9月に就任したばかりのディフェンスコーチはわずか2ヶ月で退任。またブラウンは「エディーは選手たちを萎縮させてしまっている。みんな失敗を恐れるようになった。(11月19日のニュージーランド戦で)14人のオールブラックス相手に引き分けの状態でボールをタッチに蹴り出して終わらせるようなことは、それをよく表している」とも話した。

一方で、日本のサントリーでもプレーした元オーストラリア代表SOマット・ギタウは自身のSNSで「もしエディー・ジョーンズが解任されたら、それはイングランドのラグビーにとって最も愚かなことでしょう。彼はワールドカップのために何年も前から計画し、計画し、計画しています。この大会は、彼が何度も一貫して正しい結果を出してきた大会なのです。大きな間違いだと思う」と強く続投を支持した。

◆南アフリカ代表戦の敗戦が決定打に

しかし、ジョーンズHCはイングランド代表初の外国人指揮官であり、この1年、なかなか結果を出すことができなかったため、イングランドファンの目も日に日に厳しくなっていた。

秋のシリーズでは、PRマコ&NO8ビリーのヴニポラ兄弟やHOジェイミー・ジョージら、代表から外れていた2019年ワールドカップ組を再び招集したが、ホームで2019年のワールドカップの決勝でも敗れた南アフリカ代表に勝つことができなかったことが決定打となったと言えよう。

世論も一気に解任論へ流れて、12月6日、ジョーンズHCを審査する「独立審査会」が開かれ、その勧告をRFUが理事会で承認し、ジョーンズHCの解任が正式に発表されたというわけだ。

◆「成し遂げた多くのことに満足」(エディー)

ジョーンズHCはイングランドラグビー協会を通じて「イングランド代表として成し遂げた多くのことに満足していますし、今後のチームのパフォーマンスを見るのが楽しみです。多くの選手と私は間違いなく連絡を取り合うでしょうし、彼らの今後のキャリアがうまくいくことを祈っています」とコメントした。

2012年から日本代表、イングランド代表とテストマッチラグビーで戦い続けていたジョーンズHCの旅は、いったん終わりとなった。きっとリーグワンがはじまれば、アドバイザーを務める東京サントリーサンゴリアスのコーチングボックスで元気な姿が見られるはずだ。

海外の報道によるとジョーンズHCの下にはアメリカ代表やジョージア代表などからのオファーも届いているという。近い将来、再び国際舞台での辣腕ぶりに期待したい。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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