歴代朝ドラ「最終話受け」を比べてわかる『らんまん』の異様さ
キングコング西野が指摘した「あさイチ」の異様さ
NHKの「あさイチ」に西野亮廣(キングコング)が出演したとき(10月6日)、開始前の異様な風景について指摘していた。
博多華丸・大吉と鈴木奈穂子アナウンサーが、本番直前にただ朝ドラだけを見続けている姿が、あまりに変だ、と言うのだ。
たしかに、そうだろう。
「朝ドラを全員で見て、テレビに向かって、話しかけるっていう……歌じょうずぅとか……」、もうちょっと生放送本番前らしい姿はないのか、とその異様さを揶揄していた。
西野らしい指摘であり、たしかに奇妙な風習である。
朝の風景となっている「朝ドラの感想を言う3人」
でももう、朝のお馴染みの風景となっている。
三人が何を言うのか、そこまでふくめて「朝ドラ」を見ている人も多いはずだ。
私もずっと見ている。
先だって『らんまん』が終わって、なかなか感動的な最終回が放送され、三人はそれぞれに感想を口にしていた。
その最終回の受けを、すこし整理して再録してみる。
『らんまん』最終回あとの三人の感動的な感想
華丸(三人で小さく拍手)「いい最終回ですねえ……いやいやいやー」
大吉「半年間……いやあ、じっくり見せていただきました」
鈴木アナ「……最終回でしたね…大丈夫ですか華丸さん」
華丸「いやその、べつに優劣つけるわけじゃないけど、11作目なんですよ、あさイチ担当になって」
鈴木「あ、もう、そんなになりますか」
大吉「はい6年目になりますから」
華丸「いい最終回でしたねえ……」
大吉「なんか王道の朝ドラを見せていただいたっていう……」
華丸「……(晩年の妻のセリフ)「わたしがいなくなったら」(を聞いた)ときの、神木君の顔……はあ……」
鈴木「(華丸さん)目、赤い……」
華丸「ちょっと(あの演技)当たり前だとおもっちゃだめですよほんとに、ねっ」
大吉「(軽く)わかるわかる…」
華丸「(ほんとに)わかる?」
大吉「ごめんねもうおれは、気持ち、切り替えてる。私もう、ゴジラに行ってる…(スタッフ笑い)あの二人(神木隆之介と浜辺美波)のゴジラがいまもう楽しみでしょうがない」
鈴木「(笑)まだ早い……」
華丸「(朝ドラ次作の)ブギウギって言ってください」
大吉「ごめんなさいごめんなさい…来週からまたテイストががらっと変わりますからね」
鈴木「そうですね、歌とかダンスとかね」
大吉「ブギウギも楽しみにしながら、あらためて『らんまん』のみなさん、ほんとにおつかれさまでした。ありがとうございました。大変いいドラマでございました。ということでまいりましょう…」
華丸大吉らしい感想
華丸大吉という漫才コンビが入っているので、何かしらの「ずらす」会話が入っていて、鈴木アナはいつも笑っているイメージがある。
ただ最終話で、他作と比較してまで褒めたのは『らんまん』だけだとおもう。
博多華丸は『らんまん』を絶賛した、と私は受け取っている。
『舞いあがれ!』最終話あとの神木隆之介の喋り
ここ何年かの「朝ドラの最終話あと」の「あさイチ」でのやりとりを振り返ってみる。
ひとつ前は福原遥の『舞いあがれ!』、最終話は2023年3月31日放送である。
舞ちゃんが空飛ぶ自動車を運転して、ばんばを乗せて空を飛んでいるシーンで終わった。
そのまま『らんまん』の予告編が15秒あって「あさイチ」に入る。この予告編は神木隆之介と浜辺美波が並んで登場して、神木君が一気に喋る珍しいものであった。
神木「福原さん、過酷な半年間、おつかれさまでした!(浜辺「おつかれさまでした!」)めちゃくちゃ、舞い上がりまくっちゃってましたねえ。そして、いよいよ来週からは連続テレビ小説『らんまん』、みなさんにらんまんな朝をお届けいたします! 見てねえ……」このあとまだ神木くんは何か喋っていたが音は出ていない。
『舞いあがれ!』最終話あとの「あさイチ」
「あさイチ」での受けはこうなった。
大吉「最後の神木さんに全部、なんか、かき消された(笑)」
鈴木アナ「ぐっと来てたんだけど(笑)…過酷、なんだって……」
大吉「過酷な半年間おつかれさまでしたってあんだけおっしゃるってことは、神木さんいま、過酷なのかなって…」
鈴木「がんばってがんばって」
大吉「びっくりしましたけど……いやあ(『舞いあがれ!』も)見事なおわりかたで」
鈴木「いやあほんとほんと(と涙ぬぐっている)」
大吉「最後のあの飛行機、オープニングのアニメーションの…」
華丸「紙飛行機があの形に変形するって…」
鈴木「あの飛行機だったんだっていうねえ…」
(ゲストの加藤シゲアキが登場して彼も感想を言う)
鈴木「いやあ、ほんとにほんとに、ほんとに、いい最終回でした。え、まずは一旦ここで、ニュースセンターからニュースをお伝えします」
『舞いあがれ!』の最終話受けは、『らんまん』予告にすでに圧倒されていたのだ。
これはこれでかなり暗示的である。
『ちむどんどん』最終話あとに出てきたのは原田美枝子
その半年前まで放送されていたのは『ちむどんどん』である。
最終話はこれも未来に飛んで、メイン登場人物が老人になってラストを迎えた。
放送は2022年9月30日。
ドラマが終わって「あさイチ」の画面に登場したのは原田美枝子であった。
『ちむどんどん』ではヒロインの大叔母(父の母の妹)役で、働く店のオーナー役でもあった。この日の「あさイチ」トークのゲストだったので、彼女の挨拶から始まった。
『ちむどんどん』あとの「あさイチ」での短い感想
原田美枝子「おはようございます、みなさん半年間、ありがとうございました」
大吉「こちらこそ、ありがとうございました」
華丸「おつかれさまでした」
大吉「今朝のゲストはオーナー、大城房子役を演じられました原田美枝子さんです、よろしくお願いします」
鈴木アナ「みんなで一緒に最終回をね、拝見いたしましたけども…」
大吉「最終回は(原田さん)出てこなかったですけどね」
原田美枝子「そうですね」
鈴木アナ「いかがでした、見てみて、最終回」
原田美枝子「ねえ……なんかあの……そうねえ…………なんて言えばいいのか……」
このあとを引き取って大吉と鈴木アナで何とかつないでいた。
『ちむどんどん』ならではの感想
原田美枝子はあきらかに困っていた。
大事な人物ではあったがメインメンバーではなく、最終回に登場していない人にまとめを言わせようとしても、無理がある。
『ちむどんどん』は、とくに後半、世評が芳しくなく、いろいろ言われていたということもあり、「あさイチ」でもあまり触れなくなっていった。
最終回も正面から受けていなかった、という印象が強い。
三代100年の物語『カムカムエヴリバディ』
さて、もうひとつさかのぼると『カムカムエヴリバディ』となる。
最終話は2022年4月8日。
これは、上白石萌音、深津絵里、川栄李奈の、祖母と母と娘三代にわたる100年の物語。
最終話は、多くの人のその後を描いて、てんこ盛りだったうえに、物語は未来(2025年)まで描いていた。
『カムカムエヴリバディ』あとの「あさイチ」のやりとり
大吉「終わりましたね」
鈴木アナ「終わりましたねえ」
大吉「うーん、そういうことかあ」
華丸「いやいや、ちょっとあと何回か見ないとわからない…」
大吉「わからない? もう、解決しましたけど」
華丸「『のちに…』が多すぎて」
大吉「(笑)…いちばんの『のちに…』を教えてください」
華丸「いちばんは…(ヒロインの弟が)甲子園に行ってる…」
鈴木アナ「あははは……華丸さんそこなんだ」
華丸「はい、監督として…………あなた(大吉)いちばんの『のちに…』は何ですか……」
大吉「わたしは一子さん(市川実日子)の旦那が、借金取りだなんだでいろいろ出てきた…(徳井優があらためて旦那として登場したこと)」
鈴木アナ「(笑)そこですか!」
大吉「あのかたがまた来た!っておもって(笑)」
鈴木「いやあ、私もいくつかメモしたんですけど(紙をみながら)……やっぱり、すみれさん(安達祐実)と桃剣(尾上菊之助)の結婚もすごいびっくりして、ここもくっつくんだとか……」
華丸「ハッピーエンドをこれだけ畳みかけてくれると…」
大吉「そう、ほんとに…」
華丸「幸せになれました」
鈴木「やっぱ、あと5回くらい見たいですね、いろいろ細かいところまで…はい」
大吉「(おもいだしたように)ビリー(城田優)、物持ちいいねあなた(と、ラストシーンで、少年時代からのキーホルダーを落としたことを振り返る)」
華丸「いや、物持ちいい人はあそこで落とさんけどね」
大吉「ご縁でしょう、ご縁でしょう、さあ、今日は9時までの放送なので……」
それぞれ最終話でびっくりしたことを言い合っている。楽しそうである。そういうドラマだったということだろう。
『おかえりモネ』最終話あとの「あさイチ」は再放送
ちなみにもうひとつ前の『おかえりモネ』の最終話あとの「あさイチ」は生放送ではなく、特別編だったので、最終話を受けての華丸大吉の感想は存在していない。(特別編というのは、だいたいは再放送、という意味である)
最終話のあとの反応を令和でまとめるとこんな感じ。
3年秋『おかえりモネ』再放送なので「受け」はない。
4年春『カムカムエヴリバディ』最後の「驚き」を楽しむ
4年秋『ちむどんどん』ゲスト(原田美枝子)に受けてもらう
5年春『舞いあがれ!』らんまんの予告に持っていかれる
5年秋『らんまん』しみじみと感動を分かち合う
この5作で比較するなら、いちばん『らんまん』の最終話がしみじみした、ということになる。たしかに三人が拍手して迎えたのは『らんまん』だけだ。
最後まで見て、しっかり終わったなと強くおもえたのが『らんまん』だったということだ。変な言い方になるが、『らんまん』の受け方は歴代朝ドラのなかでも「異様」だったといえる。
あらためて『らんまん』は、実に巧みな仕上がりになっていた朝ドラだったとおもう次第である。