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15歳で駆け抜けた世界の大冒険  木下晴結インタビュー 前編【テニス】

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
グランドスラム・ジュニアの部で4大会すべて出場した木下晴結(写真すべて神 仁司)

 ジュニアテニスプレーヤーの木下晴結(きのした はゆ)は、2022年シーズンに、テニスの4大メジャーであるグランドスラムのジュニアの部で、15歳ながらすべて本戦出場を果たすことに成功した。今回、5月下旬に開催されたローランギャロス(全仏テニス)以降の戦いを木下に振り返ってもらった。

――2022年のグランドスラム・ジュニア部の戦いを振り返っていきたいのですが、まず、ローランギャロス・ジュニアの部では予選を2回勝ち上がって、本戦初出場を果たしました。1回戦を振り返ってください。

1回戦 木下(大会時ITFジュニアランキング59位、以下同)2-6、6-1、1-6 予選勝者 ジョエリ リリ ソフィー・ストル(54位、ドイツ、18歳)

木下:予選からだったので、まずは本戦に上がるというのが一つ目の目標で、そこをクリアできてホッとしたところがあった。そこでもう1回気持ちを入れ直して、本戦に一からスタートするっていうところで、気持ちの切り替えがまだちょっと甘かったかな。あと、やっぱりグランドスラム独特の雰囲気で緊張もすごいあって、1回戦のファーストセットは緊張して、あんまり良い動きができてなかった。でも、セカンドセットで、また自分のプレーができてセットを取れたっていうのはよかったかなって思います。

――対戦相手が自分と同じ予選勝者で、1回戦突破のチャンスかもと思いましたか。

木下:はい。やっぱり勝ちに欲は出たっていうのもありますし、チャンスっていうのもわかっていたんで、それもあって緊張し過ぎたというのもあります。

――ローランギャロスのレッドクレー(赤土)でのプレーは、どうでしたか。クレーの中では、イレギュラーが少なめと言われていますが。

木下:いや~、思っていたより自分の感覚的には、(コートが)硬いなと。もうちょっとふわふわしてるのかな~と思っていたんで、試合でなかなか合わせられなかったのもありますね。予選は別会場で開催されたんですが、試合当日まで(ローランギャロスの)会場であんまり練習ができてなかったんです。観客の皆さんが、国関係なく良いプレーには拍手してくれて、いい雰囲気の中でできたんで、それは嬉しかったです。

――パリの街はどこか行きましたか。

木下:私が行きたいって言ってたんで、齋藤(咲良)選手とコーチたちと一緒にエッフェル塔に行きました。上ったんですよ、階段で。一番上までじゃないですよ、中くらいまで。でも、20~30分かけて、もう足がやばかったです(笑)。(予選の)前々日にやることじゃないとか言いながら。階段でと言い上ろう出したのは、晴結です。エレベーターだと、20~30秒ぐらいで行っちゃうので、それは面白くないな、と。

練習拠点であるLYNXテニスアカデミーの奥田裕介コーチ(写真右)が、木下の海外遠征に帯同している。世界ランキングアップやグランドスラム・ジュニア出場は、奥田コーチ抜きでは考えられない
練習拠点であるLYNXテニスアカデミーの奥田裕介コーチ(写真右)が、木下の海外遠征に帯同している。世界ランキングアップやグランドスラム・ジュニア出場は、奥田コーチ抜きでは考えられない

――ウィンブルドン・ジュニアの部では、初の本戦ストレートイン。1回戦では、シングルスでウィンブルドン初勝利、そして、グランドスラム・ジュニアの部で初勝利を挙げました。初勝利はどんな気持ちでしたか。

1回戦 木下(大会時55位)6-4、7-6(3)予選勝者 ケトリン・クエベド(88位、アメリカ、16歳)。木下のウィナー21、ミス36 

木下:めっちゃ嬉しかったですね。なんかポイントが付かなくて、そういう面では悔しいなって思う面もあったんですけど、でも、グランドスラム・ジュニアの本戦でまず勝てたというのはすごい自信にもなりました。プレーも良かったんで。

【※ウィンブルドンと国際テニス連盟(ITF)で、ロシア選手とベラルーシ選手の出場に関して意見が割れて、ITFが世界ランキングに必要なポイントを付与しなかった】

――グラス(天然芝)コートでのプレーはどうでしたか。

木下:グラスは楽しかったです。自分のプレーの特徴であるスライスやネットプレーが、グラスですごく活きていた気がした。フットワークがだいぶ違うんですよね。グラスでは滑れないんで、パタパタパタパタみたいな感じ。グラスに慣れてホーム(練習拠点であるLYNXテニスアカデミー)に戻った時、ハードなんですけど、いつもハードで滑れていたり(スライディング)、ハードのフットワークがあるんですけど、それを忘れて1週間ぐらいずっと滑れなかった。

――2回戦は相手の棄権によって木下さんが不戦勝。3回戦では、ワイルドカードで出場のジャスミン・コンウェイ(WTA730位、イギリス、17歳)に4-6、1-6で敗れました。ウィンブルドンの結果をどう振り返りますか。

木下:2回戦も普通に勝っていたら結構自分的にもよかったと思うんですけど、でも、3回戦の舞台で戦えたっていうのはすごいよかったし、いい経験だったと思います。

――テニスの聖地といわれるウィンブルドンの雰囲気はどうでしたか。

木下:ウィンブルドンのセンターコートっていうより、ウィンブルドンの会場自体がなんか聖地だなっていう感じがしました。だから会場にいるのがすごいワクワクしました。(ウィンブルドン名物の)ストロベリー&クリームを食べましたけど、普通……(笑)。普通のいちご。

――ウィンブルドンのセンターコートは見学しましたか。

木下:見ました。なんか思ってたより、4大大会の中では小っちゃい方かなって。でも、すごいやっぱり、またローランギャロスとは違う、本当に(テニスの)聖地みたいな。なんかお客さんもちょっとリッチな感じで(笑)。

――USオープン・ジュニアの部も本戦ストレートインしましたが、1回戦で敗れました。相手は、WTAランキング448位も持つ強敵でした。

1回戦 木下(大会時54位)2-6、1-6 第14シード ミラ・アンドリーバ(18位、ロシア、15歳)

木下:崩せそうで、崩せないみたいな。ゲームも取れそうで取れないだったり、自分のプレーはいいところまで行ってんのにポイントに繋がらないっていうフラストレーションに、自分のメンタルが負けたっていう試合だった。

――15歳にして、グランドスラム・ジュニアの部、4大会すべてを本戦で戦えました。どう振り返りますか。

木下:まぁ、そうですね。本戦でもっと勝ちたかったというのもあるんですけど、まずは経験の年だったかなっていう風にとらえて、また来年出るグランドスラム・ジュニアがあったら、そこでしっかり頑張っていこうかなって思います。

(後編に続く)

10月中旬に大阪で開催されたワールドスーパージュニアで、木下は、準決勝で同期の齋藤咲良に敗れた。木下にとって、齋藤はライバルであり仲間だ
10月中旬に大阪で開催されたワールドスーパージュニアで、木下は、準決勝で同期の齋藤咲良に敗れた。木下にとって、齋藤はライバルであり仲間だ

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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