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「R-1」王者・野田クリスタルを導いた「麒麟」川島の一言

中西正男芸能記者
クラウドファンディングで「スーパー野田ゲーPARTY」を制作する野田クリスタル

 お笑いコンビ「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん(33)。3月の「R-1ぐらんぷり2020」でもテレビゲームを使ったネタで優勝しましたが、これまで約20タイトルを自らプログラミングして生み出してきたゲーム制作者の顔も持ちます。その手腕が注目され、Nintendo Switch用ソフト「スーパー野田ゲーPARTY」をクラウドファンディングを用いて作るプロジェクトも立ち上がりました。お笑い、ゲームと次々に才能を開花させていますが、ターニングポイントとなったのは先輩コンビ「麒麟」川島明さんからの一言でした。

ドツボにハマると…

 小さい頃からゲームは好きでした。高校に入った頃からオンラインゲームにもハマって、1日に12時間くらいやったりもしてましたね。

 自分でゲーム作りを始めたのは7年ほど前からです。ライブでコントや漫才のネタ以外のものを何か出すことはできないか。そう思った時に、ゲームが作れたら面白いんじゃないかと思って、独学でプログラミングにトライしてみたんです。

 そんな流れでゲーム作りを始めたので、僕のゲームはライブとか、テレビ番組とか“人前で見せること”が前提のゲームなんです。人に見てもらった時に、楽しさが出るというか。なので、パッと見てもらって、すぐにゲームシステムが分かるものにはなっていると思います。

 作っていく中で「これは楽しい!」というポイントみたいなことも感じていきました。例えば、こちらが意図しているところでゲームオーバーになったら、めっちゃうれしいんです。「ここまではこうやって進めるけど、ここで失敗するだろうな」というところで、ドツボにハマってくれると楽しくて仕方ない(笑)。

 あと、もう一つ面白いのが、本当にゲームが上手なプロゲーマーの方とかにプレーしてもらうと、僕の知らない攻略法を見つけやがるんですよ(笑)。作っている僕が「これは無理だろう…」というところをこじ開けてくるんです。こちらが全て把握しているはずなのに、思ってもないことをやられたりもする。それも楽しいところですね。

「スゲェな」の違和感

 ただ、一度、ゲームを作らなくなった時期があったんです。ゲーム作りを始めて、3年ほど経った頃だと思います。

 最初はゲームとも呼べないようなものを作って、それでも自分の中で面白いなと思ってたんですけど、やってるうちに僕のプログラミングの技術も上がっていった。すると、結構、ゲームらしいゲームも作れるようになっていったんです。

 そうなると、面白さよりも「こんなゲームが作れるなんて、スゲェな」という感想が多くなってきまして。すると、自分の中で「それはまた違うんだけどな…」という感覚が出てきたんです。

 ゲームが作れるということでいうと、言うまでもなく、僕なんかよりすごい人が山ほどいるし、自分はプログラマーというわけでもないし。そうやって感心してもらうことで、自分の中でさめていく自分もいまして。それで作らなくなったんです。

「そうなんや…」

 作らなくなって1年ほど経った頃、先輩の「麒麟」川島(明)さんが、ふと聞いてくださったんです。「最近、ゲーム作ってへんの?」と。

 「そうなんです、作ってなくて」と答えたら、残念そうに「そうなんや…」と一言おっしゃったんです。やりとりとしたら、それだけのことです。なんですけど、それがすごく印象に残ったんですよね。川島さんの声のトーン、空気…。そこで「やっぱり、やった方がいいのかな」と思って、もう一回、作ることを決めたんです。

 そして、やる以上は、もう少し踏み込んでゲーム作りをやってみようと。すると、今まで作れなかったパズルゲームとかも作れるようになって、そこからまた違う景色が広がっていきました。

 恐らく、川島さんはそんなやりとりをしたことも覚えてないと思うんですけど、川島さんからの言葉をきっかけに、もう一つ進んだ形でゲームと向き合うようにもなりました。

 そして、今年の「R-1」が始まる少し前に、川島さんと「インパルス」の板倉(俊之)さん、「次長課長」の井上(聡)さんのライブがあったんです。そこに僕がゲストで出していただき、僕のゲームをお三方がやるという流れだったんですけど、かなり盛り上がったんです。

 自分が作ったもので、あの3人があれだけ笑ってくれた。「R-1」を前に、それは大きな自信になりました。

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 そこからまた一歩踏み出して、今回の「スーパー野田ゲーPARTY」ですからね。将来的に、いつかこんなことができたらなとは思っていたんですけど、今回のゲームを一緒に開発してくださる「カヤック」の担当者の方が「R-1」も見てくださっていたようで、ありがたいお話を持ってきてくださいました。

 ただ、今回のゲームはクラウドファンディングという形で皆さんから資金を募るんですけど、リターン品として“あなたが考えたキャラクターをゲームに出します”とか“あなたのアイデアをゲームに生かします”ということをやったんです。

 なので、要は、お金を出してくださった皆さんの案を何かしらの形でゲームに盛り込むことになるので、お金が集まれば集まるほど、皆さんからの“ムチャぶり”もあるかもしれない(笑)。それを全部入れていくとなると、いったいどんなゲームになるのか。僕も全く分からないんです。

 ま、自ら設けたムチャぶりのシステムですから(笑)、大変かもしれませんけど、それはそれですごく楽しみなんですけどね。「あつまれ どうぶつの森」とか「スーパーマリオパーティー」とかが並んでいる中に、このゲームが並んでいるという光景も面白いだろうなと。

 あと、まわりまわって、ジャスティン・ビーバーがプレーして「面白い!」とツイッターでつぶやいてくれたら、もう御の字です(笑)。

(撮影・中西正男)

■野田クリスタル(のだ・くりすたる)

1986年11月28日生まれ。神奈川県出身。本名・野田光。吉本興業所属。高校時代からお笑いコンビを組み、TBS「学校へ行こう!」などで注目される。2007年に村上と「マヂカルラブリー」を結成する。コンビとして「M-1ぐらんぷり2017」「キングオブコント2018」で決勝に進出。独学でゲームプログラミングを習得し「野田ゲー」と呼ばれる自作ゲームを開発。「 R-1ぐらんぷり2020」でもゲームを使ったネタで大会を制する。クラウドファンディングでNintendo Switch用ソフト「スーパー野田ゲーPARTY」の制作に乗り出す。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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