需給バランスの歪みが生じ、金融市場で価格変動を招く事例
2023年の猛暑による影響や、インバウンド観光客の増加でコメ消費量が増えたことにより、全国的に「コメ不足」が発生、「令和のコメ騒動」だと話題になっている。
しかし、特に都心のスーパーなどでの米不足は、2023年の猛暑による影響や、インバウンド観光客の増加が主たる要因とは考えづらい。
毎年7月~8月は、前年に採れた古米と、今年採れる新米のちょうど端境期にあたり、もともと需給が逼迫しやすい。そこに南海トラフ地震が警戒されて、防災用具などとともに、災害に向けた備蓄用の米が買われ、需給バランスが崩れたことが主たる要因とみられる。
金融市場でも需給バランスに歪みが生じ、大きな価格変動を招くことがある。
金融市場では需給バランスに歪みが生じている状況にあるなか、何かしらのきっかけで、その歪みが解消されるとともに、大きな価格変動が起きるケースも多い。
今年8月5日の東京市場がそのひとつの事例かと思われる。
7月中旬あたりから米国株式市場が調整局面となり、米長期金利が低下してきた。それによってドル円の下落に拍車がかかった。
7月31日に日銀は0.25%への利上げを決定し、FRBは現状維持としながらも9月の利上げの可能性を示唆した。
特にドル円は7月3日に162円近くまで上昇(円安ドル高)したあと急速に下落し、7月31日に150円割れとなるなどスピード調整が入った。
今後の日米金利差の縮小も意識されて、ドル円はさらに下落ピッチを速めた。これを受けて、円キャリートレードを行っていたヘッジファンドが、そのポジションの解消を行った。
持っていたポジション、その主体は東京株式市場であったとみられ、それを売却した。日本国債については、日銀の利上げによる価格下落を睨んでか、ショートポジションを持っていたとみられ日本国債は買い戻された。10年債利回りは0.750%に低下した。
東京株式市場では日経平均が急落となったことで、ほかのヘッジファンドなどもロスカットせざるを得ないところも多く出た。その結果、過去最大の下落幅となった。ドル円は141円台にまで下落した。
こちらは大きなポジションの解消が急激な価格変動を招いた事例ともいえる。ただし、そのポジション解消後は、米国株式市場や東京株式市場は急落前の水準に値を戻していた。
ドル円も戻したが147円あたりまで。日本国債も再度売られたが、10年債利回りは1%にも届かずと、株価の戻りに対して戻り切れていない面もある。こちにはまだ需給バランスの歪みは解消されていないのかもしれない。