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英国国防大臣「ウクライナでも貢献しているトルコの軍事ドローンは現代の戦争のゲームチェンジャーになる」

佐藤仁学術研究員・著述家
(提供:Ukrainian Ground Forces/ロイター/アフロ)

「現代の戦争において軍事ドローンは欠かすことができないとても重要な兵器」

ロシア軍が2022年2月にウクライナに侵攻。ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」を利用して侵攻してきたロシア軍に攻撃している。トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍の装甲車を上空から破壊して侵攻を阻止することにも成功したり、黒海にいたロシア海軍の巡視船2隻をスネーク島付近で爆破したり、ロシア軍の弾薬貯蔵庫を爆破したり、ロシア軍のヘリコプター「Mi-8」、ロシアの戦車「T-72」や120mm迫撃砲2B11を爆破したりとウクライナ軍の防衛に大きく貢献している。ウクライナ軍が上空からの攻撃に多く利用しているトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍侵攻阻止の代名詞のようになっており、歌にもなってウクライナ市民を鼓舞している。

最近では「バイラクタルTB2」によるロシア軍への攻撃も日常化してきて、ほとんどニュースで取り上げられなくなってしまった。だが、開戦当初はトルコの軍事ドローンによる攻撃でロシア軍の侵攻を阻止していたことに大きなインパクトもあり「バイラクタルTB2」の知名度をウクライナ国内だけでなく世界中に広めていた。

2022年10月にはトルコのイスタンブールで防衛軍事産業の展示会SAHA EXPOが開催されていた。この展示会でもトルコの軍事企業が多くの新しい攻撃ドローンを展示していた。参加していたイギリスの国防大臣のベン・ウォーレンス氏はトルコの軍事ドローンについて「現代の戦争において軍事ドローンは欠かすことができないとても重要な兵器です。トルコの軍事ドローンはウクライナだけでなく世界中の戦場においてゲームチェンジャーになります。我々イギリス軍もウクライナ紛争を通じて多くのことを学びましたし、これからも軍備には多額の投資をしていきます」と語っていた。

2022年8月には当時のジョンソン元英国首相がキーウを訪問してゼレンスキ―大統領と面談して、5400万ポンドの追加支援を発表した。その中には2000機の軍事ドローンも含まれていた。また新たに就任したスナク首相もゼレンスキ―大統領との電話会議でウクライナ支援を約束している。

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいる。ウクライナ紛争で多く使用されているのがバイカル社が開発した軍事ドローン「バイラクタル TB2」はウクライナだけでなく、ポーランド、ラトビア、アルバニア、アフリカ諸国、アゼルバイジャンやカタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。タジキスタンも購入を検討している。

バイカル社以外にもトルコでは多くの軍事企業が軍事ドローンを開発している。国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に発表した報告書で、2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコの軍事企業STM社製の攻撃ドローンKargu-2が兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると報告していた。これは攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行う自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)が実際の紛争で初めて攻撃を行ったとみられるケースと言われている。

今回のイスタンブールで開催されていたSAHA EXPOでも、標的を認識してドローンが突っ込み爆破する、いわゆる「神風ドローン」のタイプの攻撃ドローンが多く展示されていた。

▼トルコの軍事防衛展示会で紹介されていたトルコ製の軍事ドローン

▼トルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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