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三浦春馬さんの死と、昨年の女性の自殺増加とはどう関わっているのだろうか

篠田博之月刊『創』編集長
三浦春馬さん「世界はほしいモノにあふれてる」のイメージ 海扉〈カイト〉アラジン

自殺統計が明らかにした昨年来の女性の自殺の増加

 1月22日、警察庁と厚労省から自殺統計が発表された。昨年の自殺者数は2万人超だが、男性の自殺が11年連続で減っているのに対して、女性と小中高生の自殺が増えている。特に女性は過去5年間で最多となった。コロナ禍の中で昨年6~7月以降増加し、10月がピークとなっている。この現象についてはきちんと分析する必要があるだろう。

 気になるのは、女性の自殺増加と、月刊『創』(つくる)が11月号以降取り組んでいる「三浦春馬ロス」現象とが、明らかに関連しているように思えることだ。もちろん三浦さんの自殺はひとつのきっかけだと思うが、コロナ禍の中で中高年の女性たちがそれを機に自分の人生を振り返り、思い悩むという現象が起きている。過去にもタレントの自殺が、ファンたちの後追いを引き起こした事例はあるのだが、今回の特徴は、それまで特に三浦さんの熱心なファンでなかった女性たちにも“共振”を引き起こしていることだ。

 『創』はそういう女性たちの投稿を毎号載せているが、それらを読んでいくと、子どもも成人して、自分の人生を改めて振り返る機会を得た50~60代の女性が多い。三浦春馬さんの死が、そうした女性たちの心に何らかのスイッチを入れてしまったらしい。

 投稿を読むと、昨年の7月18日の衝撃以来、心にぽっかり穴が開いて、いまだに時間が止まったままだ、という声が多い。『創』を読んで、自分と同じ気持ちの女性がたくさんいることを知り、癒されていると言う人や、それらの投稿を読みながら毎回号泣しているという人もいる。

三浦春馬ファンたちのメッセージ広告に東京新聞が異例の対応

 彼女たちは次第にSNSを使って交流するようになっており、例えば東京新聞「東京くらしの伝言板T-Voice!」に昨年11月28日、12月5日と2週にわたって、映画『天外者』公開にあわせてメッセージを掲載した。自分でお金を出して枠を買い取り、一斉にメッセージを紙面掲載するというものだが、2016年にSMAP解散を惜しむファンたちが朝日新聞と東京新聞に同様の広告掲載を行った事例を踏襲したものだ。

 11月28日の東京新聞の掲載日には、新聞を購入しようとする人たちのアクセスが集中して同社のネット接続が不安定になるといったことが起き、12月5日の紙面については、東京新聞が事前予約を受け付けるという異例の事態となった。

 そうした女性たちの投稿を載せている『創』も、11月号以降、注文が殺到する状況で在庫切れが続き、ネットで1万円以上で転売されるという事態も起きた(現在は11月号以外は12月号、1月号とも在庫ありで再出荷中)。

 三浦春馬さんの死は明らかに、多くの女性たちの間に何かを引き起こし、それがある種の社会現象となっている。投稿を読むと、ある時にはこのまま生きていて良いのかと思い、ふと三浦さんのもとへ行きたいという衝動に駆られるという女性もいる。それゆえに『創』は、何とか自殺するのを思いとどまってもらおうと、もう5カ月にわたって特集を続けてきた。

3月公開の映画『ブレイブー群青戦記ー』の三浦春馬さん

 『AERA』2月1日号の表紙は、3月12日公開の映画『ブレイブー群青戦記ー』の主役を務める新田真剣佑さんだ。巻頭ページに昨年12月14日の映画公開会見での新田さんのこんな発言が紹介されている。共演している三浦春馬さんについて語ったものだ。

「もともと役者になりたいと思ったきっかけをくれたのが三浦春馬さんで、今回、この映画でご一緒できてものすごくうれしく思っています。(中略)それは僕の役者人生ですごく大切で、忘れることができない宝物です。

 大好きな春馬さんの最高の姿が観られるので、ぜひ楽しみにしていただきたいですし、最高の映画を春馬さんにも届けられると思います」

 三浦春馬さんの最後の主役映画『天外者』には春馬ファンが詰めかけ、しかも何度も観たという人も多く、映画も大ヒットしたが、『ブレイブ』にも今から期待が寄せられている。

 前述した東京新聞の事例のように、三浦ファンたちはSNSを通じて交流し、自分たちの思いを形に表そうとしている。

 『創』も3月に1冊丸ごと三浦春馬さんの「死」の波紋を特集した『三浦春馬 死を超えて生きる人』を別冊として刊行する予定だが、『天外者』からヒントを得た4500人のファンのメッセージが集まるなど準備が進められている。

 女性ファンたちが自分の人生を振り返る長文の投稿も重たい内容だ。

 この三浦春馬「ロス」現象については、今の日本社会の一断面として分析してみる必要がある。ここでは『創』2月号に掲載した投稿のうちから幾つかを転載しよう。2月8日発売の『創』3月号誌面ではさらに12ページものページをさいて投稿を掲載している。

 投稿はいまも毎月たくさん送られており、下記のアドレスで受け付けている。

mail@tsukuru.co.jp

 なお3月刊行予定の別冊『三浦春馬 死を超えて生きる人』については、既に書店を通じて予約している人もいるが、別冊といっても書籍コードを使う。

ISBNは978-4-904795-66-8。間もなく正式に予約受付を開始する予定だ。

(※1月30日にここに書いたISBNが違っていたのでお詫び訂正します。)

 以下、『創』2月号に掲載した読者からの投稿の一部だ。同じ号に載った空羽(くう)ファティマさんの記事もヤフーニュース雑誌に全文公開しているので、下記にアクセスしてほしい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/367edbd90437b1df5c3f105ba515cfbaff8f9991

春馬さんのことを考えない日はありません。

●私もまた、あの日から時が止まったままでいる者のひとりです。春馬さんと同世代、同じ茨城県出身です。私はちょうど中学生のときに「14歳の母」や「恋空」、高校生のときに「君に届け」という世代です。そういう意味では、今回の件に「共振」している方たちの中では、私は例外的な存在かもしれません。

 あの日から本当にいろいろなことを考えました。しかし、それを表現する場がなく、苦しくもどかしい思いをしておりました。そんなときに『創』の春馬さんに関する記事を読みました。自分と同じような思いでいる方が数多くいることに心救われました。また、春馬さんを想う方々の中でも実に様々な考えがあることも知りました。投稿するかとても迷ったのですが勇気を出してメールしました。

 同世代、同郷の有名人という認識はありながらも、私はこれまで春馬さんの熱烈なファンではありませんでした。しかし、あの日から1日たりとも春馬さんのことを考えない日はありません。報道を知った直後は、どうして気付いてあげられなかったのだろう、救ってあげることはできなかっただろうかと、考えても仕方のないことばかりを考えていました。

 そうしたやり場のない思いを埋めるように、春馬さんの作品を見たり本を読んだりしました。今回の件に関する報道記事等も数多く読みました。作品を通して演技力はもちろんのこと、その人柄や仕事への熱意を知るにつれ、春馬さんの魅力にどんどん引き込まれていきました。一方で、報道記事等には真偽が定かでないことも含めてあらゆることが書かれており、心のざわつきは一向に落ち着かないままです。

 報道各社から様々なことが報じられ、一般の皆さんからも多様な意見が出ていますが、少なくとも言えることは、この社会は、高潔な人格、非凡な才能をもった表現者である春馬さんが生きていける環境ではなかったということです。そして、自分もその社会を構成する一員であることに、恥ずかしさと申し訳なさを猛烈に感じるのです。春馬さんのような素晴らしい人が生きられなかったのに、自分のような取るに足らない人間が生きていても良いものか、そんなことすら考えました。

 私は子どもたちの成長に携わる仕事をしています。このような出来事が起こってしまった今、私たち大人は、一体何を子どもたちに教え、導いてやることができるのでしょうか。もし、自分が関わった子どもたちのうちの誰かが、このようなことになってしまったらと考えると胸が張り裂けそうです。礼儀正しく、人に優しく、常に感謝し、向上心を忘れず、挙げたらきりがありませんが、そんな春馬さんが生きられなかったこの社会に、子どもたちを安心して送り出すことができるでしょうか。しかし、そんな社会を作ってしまったのは、他でもない私たち大人です。今まさに、大空へ自由に飛び立とうとする鳥の羽を折るような出来事があったとしたならば、こんな悲しいことが二度と起こらないように、社会全体で考えていかねばならないことだと強く思います。

 先日、映画「天外者」を春馬さんの地元土浦で鑑賞しました。春馬さんが「代表作にしたい」との思いで撮影に臨んだ映画ですから、失礼のないようにきちんと勉強してから映画を見たいと思い、「五代友厚」(織田作之助)を読んで予習しました。(略)

 あの日から抱いているやりきれない思いが何らかの形で昇華される日が来るのか、今の私には全くわかりません。春馬さんの方へ引っ張られてしまう気持ちもだんだんと落ち着いてきました。私は自分自身の「未だ成すべき仕事」を見つけて、それを果たすために(春馬さんには到底及びませんが)、もがきながらも精一杯生きていかねば、と思っているところです。確かに言えるのは、3年後、私が春馬さんの年齢に追い付いたときには、きっとまた深い悲しみがやって来るのだろうということです。(茨城県 まお 27歳)

なぜこのような強烈な焦燥感にとらわれるのか

●私は53歳の4児(大学院生~高校生)の母です。多くの方の投稿を読んで、全く自分も同感です。

 私も7月18日以降時間が止まったままです。このままではいけない、このままではいけないと思っても、心も体も動きません。いい歳してと情けなくさえ思います。父が亡くなった時さえこんなに落ち込みはしませんでした。初めての感情です。

 今現在、自分の人生がうまく行ってないからだとか、前向きに自分の人生を進んでいないからだとか努力してないからだとか、自分に何かしらの理由を探していますが、当たり前に気持ちは沈むばかりで上向きません。どなたかが言われていたように、あのような素晴らしい人(春馬さん)が生きていけないこの世界にとどまる理由があるのだろうかと思い、人生折り返しを過ぎてもはや夢も希望もなく、自分の人生の結果(評価)が出ている今が命の納め時なのではないかという思いにかられます。なぜ私のような中年以上の女性が特にこのような強烈な焦燥感にとらわれるのか知りたいです。(略)

 今、社会は自分を必要としていない。自分を押し売りして必死に社会の端にしがみついている。惨めです。子育ても一段落するから人生終わるのに良いタイミングだと。しかし死ぬ勇気もなく…。

 三浦春馬さんは数年前からファンです。少し陰のある雰囲気に引かれます。私が越えられない山を、彼が越えて見せてくれるのではないか、希望のない毎日で唯一の希望だったのかもしれません。彼が見せてくれた世界で私も越えていけるとなんとなく思っていました。子どもが全員独立したら彼の舞台を見に行きたい。それが励みでした。その最後の頼みの綱が切れました。

 今までの甘えていた自分に気づかされると同時に、彼が抱えていた痛みが一気に私に襲ってきて、胸が苦しくて潰れそうです。なんで試すようなことしたんだろう、なんで支えてあげられなかったんだろう、そして残され置いていかれた今、出口が見付かりません。ただただ生きていて欲しかった。

 初めて自らの気持ちを吐露しました。この事実を励みに前向きになれるようにしたいです。この場所を与えてくださりありがとうございました。(匿名 53歳)

胸が苦しくなりすぎて息子達も不思議がります

●私も三浦春馬君が旅立ってから、喪失感が続いています。ブラッディマンデイのドラマの頃から好きな俳優さんの一人で、地上波のドラマは観ていて、ミュージカルで活躍していたことはネットで少し知るぐらいでした。去年のドラマでも、大人になったなあ…と思ってました。

 それが、あの日からです。なぜ、なぜ、と心が苦しくなっていったのは。20代の息子3人がいるいいおばちゃんの私がなんでここまで胸が苦しくなるのでしょう。息子達は、「なんで死んでるのに居ないのにそんなに思うの?」と不思議がります。私にもわからないのです。YouTubeや、映画やドラマを見るたびにますます好きになっていくのです。

 あの日の事は、殺人などとは思っていません。痩せた姿を見て、心が病んでいて食事が取れなかったんだとは思います。

 でも、コロナ禍とはいえ、周りからのフォローは必要だったと思います。そして、事務所がきちんと経緯を説明することは必要だと思います。本当の気持ちは本人にしかわからないので、そこは説明しなくてよいです。

 事務所にはフォローできなかった事、これからこのような事が起こらないように何ができるのか、話してほしい。そして春馬君に謝ってほしい…。大切な人だったと認めてほしい…。テレビ人間でドラマばかり観てた私は、ドラマも観なくなりました。いつになったら心が落ち着くのでしょうか…。(匿名)

 と書いていたところ、さきほど新たな投稿が送られてきたので、『創』にも未掲載だが、ここに紹介しよう。

一時は後を追いたいと思うほど辛かった

●私も去年7月18日の三浦春馬くんが亡くなったとの報道からいまだ立ち直れていないファンの1人です。

 私は今から十数年前に海外に行き、現地で就職しました。自ら選んだ生活でしたが、夜中まで仕事が続いたり、現地スタッフとうまくいかなかったり、全く日本語を話さない日が続いたりと精神的にも参っていたときに、現地語の字幕がついたブラッディマンディのDVDを見たことがきっかけで春馬くんのファンになりました。

 当時は今のようにスマホなんてなく、インターネットカフェに行かないとネットが使えない状況だったので、このDVDに出会えたことは私が海外で踏ん張るきっかけになりました。春馬くんのビジュアルも声も好みだったので、それからの私は日本が恋しくなるたびに春馬くん演じるファルコンに励まされてきました。

 その後、結婚し産まれた息子に「はるま」と名付けたほど彼が大好きでした。

 数年前に日本に帰国した私は春馬くんが舞台やドラマ、映画や歌手と幅広く活躍していると知り、育児が落ち着いたら是非観に行きたいと思っていました。

 そんな矢先に今回の悲しい出来事が起こりました。それからの私は、2人の子供を自転車に乗せたまま赤信号を見落とすほど、精神的に不安定になりました。

 唯一の1人の時間である寝る前には、何かの間違いだったのではないか、あの報道は嘘だったんじゃないかと毎晩毎晩「三浦春馬」と検索しては心無い記事に泣き疲れて浅い眠りを繰り返す生活をしていました。

 そんな時に「創」の存在を知りました。

 表紙の切り絵に惹かれ、中を読み進めると深い悲しみに寄り添ってくれている内容や、いまだ悲しみから抜け出せない方々がたくさんいると知れたことに「辛いのは自分だけではない」と本当に救われました。有難うございました。

 私はファンレターでも握手会でも何でもいいから春馬くんへ感謝の気持ちを伝えなかったことを物凄く後悔しています。自死ではないと信じていますが、おそらく亡くなったのであろう毎月18日には花を買い供えています。最初は春馬くんへ捧げる為の花でしたが、今は自分の悲しみを癒すことにも繋がっていると感じています。

 一時は後を追いたいと思うほど毎日辛かったのですが、仮に後を追って春馬くんに会えたとしても幼い子供達を置いてきたことに対して、優しい春馬くんがどう思うかと考え思い留まりました。

 今は、時間をみつけては天外者を観に行き、春馬くんとお揃いにしたくて買った腕時計を握り締めながら1人泣き悲しみを発散しています。

 正月には所縁のあった神社へ行き彼の魂が温かい場所で優しさに包まれているようにと絵馬を書きました。

 これからも、彼が全力で取り組んで作り上げた数々の作品を大切にし春馬くんを想いながら母としての役割を務めます。

 半年たった今でも辛くて泣いてるなんて誰にも言えなかったので、誰かに聞いてもらいたい気持ちからメールをさせて頂きました。 (大阪在住 愛 38歳)

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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