「竹島」に続き「福島原発処理水放出」も韓国大統領選挙の争点になる!?
来年3月9日が投票日の韓国大統領選挙は与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事と最大野党「国民の力」候補の尹錫悦(ユン・ソッキョル)前検察総長の一騎打ちの公算が強いが、外交問題では対日姿勢が争点になりそうだ。
日韓間には様々な懸案が横たわっている。「史上最悪の関係」に陥った原因とされる元慰安婦問題や元徴用工問題だけではなく、どちらも歩み寄ることのできない領土問題を抱えている。
現に、領土問題では韓国の金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官が先月竹島(韓国名:独島)に上陸したことで「領土紛争」が再燃したばかりだ。
日本では来年2月22日に「竹島の日」を迎える。大統領選投票日の約2週間前にあたることから日韓が山彦のように反応し、遣り合えば、もろに大統領選挙戦に影響を及ぼすことになるであろう。そうなれば、「反日」とみられている李候補には追い風となり、「親日」と称されている尹候補は李候補以上に日本に厳しい姿勢を示さなければ逆風となりかねない。
領土問題に加えて、新たな争点となりそうなのが日本の福島第1原子力発電所処理水海洋放出への対応である。
韓国政府は昨日(21日)、東京電力が処理水を海洋放出する計画の審査を原子力規制委員会に申請したことを受け、関係官庁による緊急会議を開催し、対策を講じる一方で、「汚染水の海洋放出について日本側が十分に説明をしていない」として日本政府に韓国側の懸念を伝えていた。
韓国原子力安全委員会も「我が国に十分な情報提供を行わなかった」として日本の原子力規制委員会に遺憾を表明し、独立的で透明な審査を求める書簡を送っていた。
原子力安全委員会は書簡で▲海外の利害関係者の意見を取りまとめ、審査に反映すること▲関連情報を透明に公開し、情報の要請・質問に積極的に応じるよう協力すること▲独立的な規制機関として審査に期限を定めず、科学・技術的観点から十分に検討すること――などを要求していた。
日本政府はすでに菅政権下の今年4月13日に、処理水を希釈して海に放流することを決定していたが、東京電力の計画では来年6月から処理水を海洋放流するための設備、海底トンネルなどの工事を始め、再来年(2023年)4月中旬には工事を終えることにしている。処理水に含まれているトリチウムの濃度を基準値の40分の1に希釈し、海底トンネルを通じて福島原発から1km離れたところに放流する計画のようだ。
韓国は汚染水の海洋放出を巡り、国際原子力機関(IAEA)の検証とは別途に日本との2国間協議を提案しているが、日本はまだ検討中で回答していない。このため韓国は現在、中国など周辺国及びIAEAなど国際機関と協調し、対応を模索しているが、各国に温度差があって、情報の共有など「共闘」までは至っていない。
この問題では与党の李候補はすでに再三にわたって反対の立場を表明し、日本に海洋放出の決定を撤回するよう求めているが、野党の尹候補は「政治的次元から捉えるべき問題ではない」として、「問題視しない」ことを明らかにしている。
しかし、尹候補はこの夏、地方紙とのインタビューで問題視しない理由の一つとして「地震と津波があって被害は大きかったが、原発自体が崩壊したわけではない。だから放射能流出は基本的になかった」と「軽率な発言」をしたため世論から「認識が甘い」との非難を浴びた経緯がある。
一連の発言が災いし、李候補陣営からは「尹候補は日本を代弁している」「日本政府には批判的な言葉を一言も発していない」と批判され、今もこの問題で「明確な立場を示すよう」迫られていることから処理水海洋放出問題がこじれれば、これまた尹候補に不利に作用するかもしれない。
自民党政権内には「尹錫悦待望論」があるようだが、日本が韓国に強気に出れば出るほど皮肉にも尹候補に不利になるというのが韓国の現状のようだ。