オーガニック市場の幕開け、果たして広がりをみせるのか?
ビオセボンが日本に上陸したことで、オーガニック市場
いよいよオーガニック市場の幕開けと言われている。スーパーでは昨年、ライフコーポレーションが「オーガニック・ローカル・ヘルシー」、そして「安心・トレンド・高質」を謳う「ビオラル靭」を出店した。イオンでは、フランスのオーガニック・スーパーの「ビオセボン」を昨年12月9日に麻布十番にオープンした。「ビオセボン」は2008年にフランスで創業され、今や140店と急激に成長している。今回、イオンと合弁会社にし、オープンの運びとなった。
この他、いちやまマート、いなげやなども売り場の一角にオーガニック商品を陳列し、新たなる売り場展開を始めている。
国は2020年のオリンピック、パラリンピックに向け、世界の基準にクリアする安心・安全そしてサスティナブルな食糧の使用を各国から求められている。それに伴い昨年から小売り業界では「オーガニック」という言葉が頻繁に聞こえるようになっている。
日本ではなかなか伸びなかったオーガニック市場
日本のオーガニックの歴史をさかのぼると、1970年から始まるとされる。その後、オーガニックの定義がないこともあり、オーガニック専門店が雨後の筍のように登場し、なかには問題のある商品が市場に出回ったのである。そこで2000年、国は有機JAS制度を導入し、その後、2006年には「有機農業推進法」が成立することで厳しく規制したのである。2014年には、日米の有機JASが「同等性 相互 認証 」が合意され、これが大きな契機となり「オーガニックの幕開け」と言われるようになった。
同年、農水省は「有機農業の最新に関する基本的方針」を策定している。国内の耕地面積を0.4%から1%に増加させることを掲げている。
とはいえ1970年からこれまでの50年もの間をみると、日本でのオーガニックはなかなか浸透しなかったのも事実である。
一般的に言われている理由として
・顧客要望はあるものの、高単価であること
・日本の地形を考えると、オーガニックの圃場は、3年間、土を寝かしても、他の圃場と隣接しているため、散布された農薬を遮断することは難しい。
・日本は乾燥していないため、土を安定させることも難しいとされる。
もともと日本の国土の狭さから考えるとおのずと農地面積も狭い。アメリカと比較してもわかるように農地面積は百分の一に満たないのだ。
農地面積が狭いためおのずと生産量も少なく、オーガニックになるとさらに上記の条件をクリアする場所の確保が難しい。
そこで各国の市場でのレートもあるが、オーガニック売り上げを比較をすると
アメリカ約2兆5000億円
ドイツ約1兆700億円
フランス約4380億円
日本はというと、約1300億円という結果となる。
このような厳しい状況下で1982年に創業したオーガニックの草分け的存在である「ナチュラルハウス」は着実に店舗を広げ、現在、30店舗あることは注目すべきである。
考えぬかれた売り場 ビオセボン
さて今回はビオセボンに的を絞ってみると、場所は麻布十番にある。大丸ピーコックの跡地に出店し、坪数130坪。これまでスーパーと言えば、大規模の坪数での商品構成であることが一般的で200坪以下でのアイテム数の絞り込みは苦手とされてきた。しかしオーガニック商品を中心にするならば、これまでとは違った切り口で出店可能となる。ちなみにビオセボンのアイテム数は3000とされ、そのうちの1000アイテムが加工食品となっている。ナチュラルハウス青山店だと、200坪以下の120坪となっており、回遊がしやすく、よく考え抜かれている。つまりオーガニック食品の供給を考えると、適正坪数といえるのかもしれない。そしてこれまで200坪以下でないと出店が難しいとされた都市部への可能性を広げたとも言える。
麻布のビオセボンは冷凍食品スーパーピカールと隣接され、顧客にとって買い置きもできる商品が同時に購入でき、使い勝手が良く、店舗内も非常によく考え抜かれている。
オーガニックの定義、そして浸透させるには
しかし日本と他国との違いとして「地産地消」が浸透していること。つまり近所のものを食べること、これが「鮮度」であり「おいしさ」になる。そして「低農薬」であれば良いと納得している消費者が多いのが日本の特徴でもある。そのような状況のなか、あえて価格の高いオーガニックでしかもその定義がどのようなものか知らない消費者は、購入するのに躊躇してしまう。そのためより認知度を広げる必要があるのだ。
まず2006年に成立された「有機農業推進法」、つまりオーガニックの定義を述べると
・科学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと
・遺伝子組み換え技術を利用しない
・堆肥などで土づくりを行い、2年以上経過した土地での栽培
そして参考までにマイボイスコムで購入したいかどうかについて自由回答を見てみると
このような回答をみると、オーガニック商品を顧客への認知度を高めるかがまず先決である。
ビオセボンではイートインができるようになっており、これは日本のみの試みであり、売り場中央にあるg量り売り商品ではフランス人が自ら丁寧な説明がなされ、試食もでき中央にはテーブルが設置され食事ができるようになっている。これによりオーガニックをより身近なものになるよう工夫されている。
オーガニック商品は価格設定が高くなりがちである。ビオセボンの惣菜の価格、例えば量り売り惣菜だと100g298円が多く陳列されている。
これはデパートで価格が低いとされるポテトサラダ100gの量り売りと非常に近い価格設定となっており、顧客にとってデパート目線での価格だと安めと捉えられ、商品力があれば納得できる価格なのかもしれない。何度も申し上げると試食、イートインがあることでオーガニックの認知度を高めることとなり、不可欠なのである。本来、出来るだけ身体に良い物を摂取したいのは誰もが思うことである。そしてまずは口に運んでもらい、味の体験から購入動機となるからだ。そして従業員自らが積極的に商品説明している様子を見ると、顧客と売り手との距離を狭めること、これもオーガニックへの認知度を高める大きな要素と言える。このように地道な積み重ねが肝要なのである。さて野菜については100gでの量り売りとなっており、これは単身者が急増しているなか、家族の形態が変化していることへの対応でもある。
供給ができるのか?
では今後、生鮮におけるオーガニック比率は高まるのであろうか。生産者にとってもオーガニックの生鮮を作ることは、日本の狭い風土を考えると生産量の増加は難しく、増加に伴うスケールメリットによる価格の引き下げはなかなか厳しいものがあると生産者側の声が聞こえる。需要があってもなかなか供給しづらい状況なのである。その一方で人口減、スーパーがコンビニとの差別化を考えると、これまでの「地産地消」といった提案だけでは、コンビニでも既にエリアごとに加工された食品を提案しているため、より差別化が必要となってくる。確かに「オーガニック商品」の提案はハードルは高い。しかしコンビニとの差別化を考えるとオーガニック商品の提案は、やり方によってスーパーの新たなる突破口になるのではないか。