【有馬記念】直前みどころ解説 前日オッズは牝馬に人気集中…とっておきの注目馬は?
前日オッズは単勝1桁台が4頭と混戦ムード
12月27日、JRA中山競馬場でグランプリ有馬記念(GI、芝2500m)が行われる。出走頭数はフルゲートの16頭。うち、牝馬が5頭、3歳馬は2頭となっている。
JRAより発表された前日オッズによれば、単勝1番人気はフィエールマン(牡5、手塚厩舎)で3.7倍。2番人気はクロノジェネシス(牝4、斎藤厩舎)で3.8倍。3番人気はラッキーライラック(牝5、松永幹厩舎)で6.5倍と混戦模様だ。続く4番人気がカレンブーケドール(牝4、国枝厩舎)が8.0倍、5番人気はラヴズオンリーユー(牝4、矢作厩舎)で10.8倍。6番人気がワールドプレミア(牡4、友道厩舎)で10.9倍。最終的にはこのあたりまでが単勝1桁台になる可能性は十分ある。
■2019年有馬記念 優勝馬リスグラシュー
昨年のリスグラシューに続き、今年も牝馬の優勝となるか⁉
上位人気馬をみてもわかるとおり、牝馬に人気が集中している。5頭の出走に対して前日の単勝オッズの5番人気までに4頭が入っているという自体は牝馬は過去10年で2頭しか優勝していない有馬記念というレースにしては珍しい事態といえる。
そもそも、有馬記念は牝馬は出走そのものが牡馬と比べると割合が少ない。過去10年では平均2.5頭しか出走していないし、歴代の有馬記念を思い起こしても牝馬が1頭も出走しない年は珍しくない。5頭も出走するのはジェンティルドンナが優勝した2014年以来だ。ちなみに、このときの1番人気はゴールドシップでエピファネイア、ジャスタウェイと続く人気馬を4番人気のジェンティルドンナが負かしたものの、他の牝馬は6着のラキシス以下掲示板には載れなかった。
■2014年有馬記念 優勝馬ジェンティルドンナ
今年は2014年より牝馬の上位進出が見込める。実際、2020年のGI戦線は牝馬がよく活躍していた。天皇賞(秋)、ジャパンカップ等を制して先日引退したアーモンドアイをはじめ、宝塚記念を勝ったクロノジェネシス、大阪杯を勝ったラッキーライラック、短距離路線ではグランアレグリアが春秋制覇を達成するなど実に見事であった。1年のうち、古馬の牡馬が出走できる芝のGIレースは有馬記念を除くと9レースあるが、今年は牝馬が7勝だ。
2019年はリスグラシューが優勝した有馬記念。2014年のジェンティルドンナ以来の牝馬の勝利だったが、今年も牝馬が勝つチャンスは十分ある。
前日オッズ1番人気はルメール騎乗のフィエールマン
そんな中でおそらく最終的にも単勝1桁台をキープするであろうフィエールマンは、天皇賞(春)を勝って改めてGI3勝の地力の高さを感じさせた。昨年の有馬記念は凱旋門賞遠征から帰国した後だったにもかかわらず4着に入線。今年はローテーション的にも昨年よりいい状態での有馬記念参戦が見込まれる。しかも、鞍上はルメール騎手。そのあたりもファンの信頼をより集めているのではないだろうか。
コーナーを6回まわって2500mを走る有馬記念だけに中長距離で実績のあるフィエールマンには期待を寄せたい。
■2020年天皇賞(春) 優勝馬フィエールマン
5頭の牝馬はみな魅力的 うち2頭は有馬がラストラン
牝馬に話を戻そう。GI9勝のアーモンドアイは先に引退したが、同い年のラッキーライラックとサラキアもこの有馬記念がラストランと決まっている。これはこの3頭が属するクラブ法人の規程で牝馬は6歳3月までに引退・繁殖入りが決まっているからである。
ラッキーライラックは昨年のエリザベス女王杯で本格化した。サラキアは今年の夏から秋にかけてようやくレースで自分の力を出せるようになった。2頭とも脂が乗り切った時期での引退とは寂しい限りではあるが、牝馬は一度、調子を崩するとなかなか立て直しがきかないのも事実。そういう意味ではアーモンドアイもそうだったように調子を崩して"終わった"と思われることなく引退を迎えられるのは幸せなこととも言えるだろう。
■2020年エリザベス女王杯 優勝馬ラッキーライラック(2着サラキア)
堅実なクロノジェネシス&カレンブーケドール
4歳牝馬の3頭はまだまだ働き盛り。実績的にはこの3頭の中では1枚抜けているがクロノジェネシスだ。天皇賞(秋)は3着ではあったが、スピード競馬に対応できるところを実証できたのが良かった。有馬記念はファン投票が行われるが、第1位に輝いたのがこのクロノジェネシス。中山は初コースだが、坂のある京都コースでGIも勝っているし対応はできるのではないか。なにより掲示板を外したことがないという堅実さがいい。
■2020年宝塚記念 優勝馬クロノジェネシス
同じく掲示板を外したことがないカレンブーケドールも気になる。こちらは2着が多く勝ちきれないのが課題だが、立ち回りひとつで勝つチャンスがまわってくる可能性は十分にある。
■2019年秋華賞 優勝馬クロノジェネシス(2着カレンブーケドール)
復調気配、ラヴズオンリーユー
ラヴズオンリーユーは一時期調子を落としていたが、調教をみる限り、ここにきてかなり復調してきた印象を受ける。昨年のオークスのような走りをみせることができれば逆転のチャンスはある。
■2019年オークス 優勝馬ラヴズオンリーユー
内枠有利なコースで最内枠を引いた逃げ馬・バビット
中山の芝2500mは多くの陣営が内枠を欲しがる。スタート地点は第3コーナーの入口なので、ポジション争いが激しくなる。さらに、ゴールまでのあいだにコーナーを6つまわり、最後の直線ではゴール前に急な上り坂が待っているというタフさが要求されるコースなのだ。
それゆえに逃げ馬のバビット(牡3、浜田厩舎)が1枠1番を引いたのは、陣営にとっては好都合であった。鞍上の内田博騎手は「スタートのいい馬だし、コースロスなく行けるのは有利」と大喜びだった。バビットと同じ先行脚質のキセキ(牡6、角居厩舎)も3枠6番といい枠に入った。こちらは少し道中で行き過ぎてしまったところがあったのだが、今回はクロス鼻革という馬具でそのあたりのコントロールを試みる。
■2017年菊花賞 優勝馬キセキ
ブラストワンピースは中山2戦2勝 鞍上の若武者に注目
一昨年の優勝馬ブラストワンピース(牡5、大竹厩舎)は1枠2番に入った。前走の天皇賞(秋)を11着と大敗したこともあり今回人気はないが、中山競馬場は過去2戦2勝と得意なコース。鞍上に若手騎手の中でも注目を集めている横山武騎手を迎えている点も面白い。
■2018年有馬記念 優勝馬ブラストワンピース
友道厩舎、2013年から続くJRAのGIレース優勝なるか
2013年よりJRAのGIレースを勝ち続けているが今年はまだGI未勝利の友道厩舎からはワールドプレミア(牡4、友道厩舎)とユーキャンスマイル(牡5、友道厩舎)の2頭が出走する。ワールドプレミアは昨年の菊花賞馬。11か月の長期休養明けの前走をひと叩きされたことで気配が上昇している。ユーキャンスマイルも気配は上向いているし、このくらいの距離が得意だ。
■2019年菊花賞 優勝馬ワールドプレミア
とっておきの注目馬は斤量有利な3歳馬、オーソリティ
最後にとっておきの注目馬、オーソリティ(牡3、木村厩舎)について少々述べたい。有馬記念は定量戦で牡馬57キロ、牝馬55キロ、3歳馬はそれぞれ2キロ減と決まっている。3歳馬はあと1週間後には古馬に属するので、有馬記念当日は恩恵を受けられるギリギリのタイミングである。2キロという馬の斤量差は大きい。一般的に斤量1キロで1馬身差が出ると言われている。オーソリティは前走、骨折明けのアルゼンチン共和国杯を古馬相手に見事勝ちきっている。ハンデ戦で斤量が54キロだったとはいえ、休み明けでの優勝は目を見張るものがある。ひと叩きされての上積みも期待できる上に、斤量の有利。鞍上は先週、今週とGIを連勝している川田騎手。これは侮れない。
■2017年有馬記念 優勝馬キタサンブラック
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】