瑠璃色の地球守る!アップルやアマゾン、グーグルの「脱炭素」をおさらい
米アマゾン・ドット・コムが、同社初のサステナビリティー債を発行し、10億ドル(約1100億円)を調達したと、ロイターなどが先月報じた。アマゾンは再生可能エネルギーやクリーンな輸送手段、持続可能な建築物のほか、手ごろな価格の住宅などに投資する。
サステナビリティー債の発行は新たな枠組み「サステナブル・ボンド・フレームワーク」の一環。アマゾンは他の社債も発行し総額約185億ドル(約2兆円)を調達した。これらの資金を既存、新規プロジェクトに投じる計画だ。
例えば、輸送用の電気自動車(EV)や電動自転車の購入などに充てる。同社が出資する新興EVメーカー、米リビアン・オートモーティブにはすでに10万台の配送用EVを発注している。
また、米バージニア州アーリントンの第2本社で再生可能エネルギーを利用したオール電化の冷暖房システムを導入するなど、持続可能な建築プロジェクトにも使う。
年間100億個もの荷物を配達し、巨大なデータセンターを抱えるアマゾンは、環境活動家や従業員から対策を強化するよう求められている。こうした中、同社は物流事業で二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すプロジェクト「シップメント・ゼロ」を進めており、2030年までにその50%を達成するとしている。また、30年までに事業活動で使う電力を100%再生可能エネルギーに切り替える計画を明らかにしているが、このほどこの目標を25年に達成できる見込みだと明らかにした。
アマゾンの気候誓約に105団体参加
アマゾンは19年9月に、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の前事務局長、クリスティアナ・フィゲレス氏が創設した英グローバル・オプティミズムとともに、気候変動対策に関する誓約「クライメート・プレッジ」を発表。国際的な枠組み「パリ協定」の目標年より10年早い40年までにカーボンニュートラルを達成すると約束している。
20年12月9日、アマゾンは、この誓約に米マイクロソフト(MS)や、英蘭食品・日用品大手ユニリーバ、欧州の飲料大手コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ、フィンランドの代替航空燃料大手ネステなど13社が署名したと明らかにした。米配車サービスのウーバーテクノロジーズや米格安航空会社(LCC)のジェットブルー航空、リビアンも署名しており、21年4月21日には参加団体が、計105団体になった(発表資料)。
20年6月には気候変動対策を支援する投資基金「クライメート・プレッジ・ファンド」を創設。資金は当初20億ドル(約2200億円)で、運輸や物流、エネルギー、蓄電池、製造、資源循環、食品、農業といった幅広い分野を対象に、製品やサービス、技術を通じて対策に取り組む企業に投資する。アマゾンはこのほか、自社の基金「ライト・ナウ・クライメート・ファンド」を通じ、森林や湿地帯の保全・再生に1億ドル(約110億円)を拠出する計画も明らかにしている。
アップル、森林再生に投資する基金「レストア・ファンド」
米テクノロジー大手は「脱炭素」に積極的な姿勢を示している。米アップルは21年4月、森林再生プロジェクトに投資する2億ドル(約220億円)の基金「レストア・ファンド」を創設したと明らかにした。大気中からCO2を削減するとともに、収益化も目指し、投資家への金銭的リターンも狙う。
同基金には環境保護の非政府組織(NGO)コンサベーション・インターナショナルや米金融大手のゴールドマン・サックスも参画する。同NGOも出資し、ゴールドマンは基金の管理を行う。少なくとも年間100万トンのCO2削減を目指すとしている。
アップルは20年7月、事業活動や製造サプライチェーン、製品ライフサイクルの全般で30年までにカーボンニュートラルを目指すと明らかにした。同社はオフィスや直営店、データセンターをすべて再生可能エネルギーで稼働させており、自社の企業活動ではすでにカーボンニュートラルを達成している。今後は同様の取り組みをスマートフォン「iPhone」などの同社製品の製造を手がける数百社の取引先すべてに広げる。
21年3月31日には、100%再生可能エネルギーに切り替えると表明した製造パートナーが110社を超えたと発表。米カリフォルニア州で米最大級の蓄電施設を建設していることも明らかにした。新設した太陽光発電所で日中に発電した電力をため、同州クパチーノにある本社屋に供給する。サプライチェーンを通じて30年までに直接的に削減できるCO2は全体の75%とアップルはみている。残りの25%を基金を活用して解決する考えだ。
「カーボンゼロ」と「カーボンネガティブ」
米グーグルは20年9月、30年までに世界中のデータセンターとオフィスでのCO2排出を、相殺ではなく純然たるゼロにする「カーボンゼロ」を達成すると発表した。電力を常時クリーンエネルギーで賄う「24/7 カーボンフリー(24時間365日脱炭素)」を目指している。21年4月にはスンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)がその進捗状況を公表。米国の3カ所とデンマーク、フィンランドの計5カ所のデータセンターで目標の9割を達成したと明らかにした。
マイクロソフトは20年1月、30年までにCO2排出を実質マイナスにする「カーボンネガティブ」を目指すと発表。50年までに1975年の創業以降の排出量に相当するCO2を削減するとしている。25年までにデータセンターや社屋で使う電力を100%再生可能エネルギーに切り替える計画だ。30年までには世界の会社施設の敷地内で使う自動車をすべてEVにする。さらに、30年までに同社とサプライチェーン全体のCO2排出量を半分以上減らすとしている。
テック大手トップが私財投じ取り組み支援
テクノロジー大手のトップが私財を投じて支援する動きも出ている。アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは20年に気候変動対策基金「ベゾス・アース・ファンド」を創設した。気候変動問題に取り組む科学者や活動家、NGOなどに100億ドル(約1兆1100億円)を拠出するもので、同年11月に第1弾として、NPOなど16団体に計7億9100万ドルを投資すると発表。米環境保護NPOのザ・ネイチャー・コンサーバンシーや自然資源防衛協議会(NRDC)など5団体にそれぞれ1億ドル、他の11団体にそれぞれ500万〜5000万ドルを拠出すると明らかにした。
CO2地中貯留・再利用の技術「CCUS」にテスラCEOが私財
米テスラのイーロン・マスクCEOはCO2削減技術のコンテストに総額1億ドル(約110億円)の賞金を出す。マスク氏と同氏のマスク財団が資金を拠出するもので、参加団体は25年のアースデー(地球の日)まで4年間、CO2回収の技術を競う。これは排出源や空気中からCO2を取り込んで、燃料などとして再利用したり地中に封じ込めたりする技術で、「カーボン・キャプチャー」や「CCUS: Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)」と呼ばれている。
現在、この技術によって回収されているCO2は年間約4000万トン。ただ、30年にはその20倍の8億トンにまで増えるとIEA(国際エネルギー機関)は推計している。
(このコラムは「JBpress」2021年5月12日号に掲載された記事を基に、その後の最新情報など加えて再編集したものです)