北極は暖冬予想 日本に影響も
北極域の海氷が記録的に少ない。この冬の北極域は暖冬予想、その影響は日本にも。偏西風の異常で、冬の天候が大きく揺さぶられる。
トランプ大統領の思惑
今年の北極域の海氷域面積は9月17日、年最小値となる414.53万平方キロメートルを記録し、記録が残る1979年以降で3番目に小さくなりました。
海氷の減少は今年に限ったことではなく、平均すると毎年、北海道に匹敵する面積(約10万平方キロメートル)が消えています。このままのペースで減り続けると、近い将来、海氷がゼロになる時期が現れそうです。
北極といえば、この夏、トランプ大統領が突如、グリーンランド買収を持ち出したことを覚えているかたも多いでしょう。突拍子もない話と思うなかれ、北極域の気温は世界平均の2倍を超えて上昇していて、人が容易に活動できる範囲が広がっているのです。それに目をつけたのはトランプ大統領だけではありません。北極域には石油やレアアースなどの天然資源が多く眠っているとされ、ロシアや中国など各国がこれを有利に利用しようと動いています。
この冬、北極は暖冬予想
世界気象機関の専門部会は8日、この冬の北極域は暖冬となる見通しを発表しました。この4年間(2014年~2018年)の年平均気温は1900年以降で最高を記録しました。一度暖まってしまった海は冷めにくく、海氷面積が少なくなるだけでなく、海氷の厚みも薄くなっていると指摘する専門家もいます。減ってしまった海氷を元に戻すことはその何倍も時間がかかり、後戻りできないところまで来てしまっているのかもしれません。
偏西風の異常で、記録的な寒波も
北極域の気候が変化すると、どのような影響が現れるのか、そのひとつに偏西風の異常があります。偏西風は暖かい空気と冷たい空気の境を流れる大規模な風の流れで、偏西風が南を流れると、北極から強い寒気が日本に流れ込み、北を流れると、強い寒気は日本を避けて通ります。
北極域の気温が上昇すると、偏西風の流れが変わり、いつも以上に寒くなったり、暖かくなったり、平年と隔たりの大きい天気が出現しやすくなると指摘する声があります。
2019年1月はカナダや米北部で、濡れた服が一瞬にして凍り付くほどの記録的な寒さに見舞われました。その原因として挙げられたのは北米大陸に南下した、強い寒気を伴った極渦(きょくうず)です。極渦は北極域の上空に形成される大規模な渦で、偏西風の蛇行が引き金です。
北極域の温暖化が偏西風そして、極渦の分裂や南下にどのように影響しているのか、分かっていないことが多く、予測も不十分です。でも、遠い話ではないことは確かなようです。
【参考資料】
世界気象機関(WMO):Arctic Climate Forum predicts another warmer winter、8 November 2019
気象庁:海氷域面積の長期変化傾向(北極域)、診断(2019年)、2019年10月21日
気象庁:世界の異常気象速報(臨時)、カナダから米国北部の寒波について、2019年2月1日
米海洋大気庁(NOAA):Wobbly polar vortex triggers extreme cold air outbreak、January 8, 2014
ピーター・ワダムズ、2017:北極がなくなる日、原書房