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監督と選手が番記者を脅迫?! オーナーが謝罪に追い込まれたメッツ内に広がるフラストレーション

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
番記者に向け暴言を吐いてしまったメッツのミッキー・キャラウェイ監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【試合後のクラブハウスで起こった不穏な事件】

 23日のカブス戦で敗戦したメッツのクラブハウス内が、番記者に対する監督と選手の“行き過ぎた”対応で、一触即発の状態に陥った。MLB公式サイトをはじめ、複数メディアが報じている。

 それらの報道によれば、メッツ番記者の1人である『Newsday』紙のティム・ヒーリー記者に対し、ミッキー・キャラウェイ監督とジェイソン・バーガス投手が脅迫まがいの態度をみせたというのだ。

 MLB公式サイトには彼らの発言まで紹介していないが、他メディアの報道によれば、まずキャラウェイ監督がチーム広報に向け、やや汚い表現で「あいつ(ヒーリー記者)をクラブハウスから叩き出せ」と発言。

その後ヒーリー記者がクラブハウスに居残り続けたため、今度はバーガス投手が「あんたをここからつまみ出す」といいながら、同記者に肉体的な接触を図ったという。

【被害を受けた番記者にオーナー自らが直接謝罪】

 そうした行為に及んだバーガス投手に対し数人の選手が止めに入ったため、事なきを得たようだ。しかしこの事件を確認したオーナーのジェフ・ウィルポン氏はヒーリー記者に電話をかけて謝罪したほか、以下のような声明を発表している。

 「メッツは、今日の試合後に起こった番記者の1人を巻き込んだ事件を心から後悔している。我々はチームに所属するどんな人物であろうと、このような態度をとることを許容することはない。チームは記者に謝罪するとともに、事件に関わったすべての人物と内々に話し合いを行う予定だ」

 この声明の通り、ブロディ・バンワゲネンGMがチームの次の遠征先のフィラデルフィアに入り、関係者から事情聴取を行うという。そうした聞き取り調査が済んだ後、最終的にはMLBからキャラウェイ監督とバーガス投手には何らかの処分が下されることになりそうだ。

【同僚記者が被害を受けた番記者を電話取材】

 この事件について、同じ新聞社の同僚記者がヒーリー記者に電話取材を行い記事にしているのだが、きっかけはかなりたわいもないことのようだ。

 この日終盤でカブスに逆転負けを喫し、試合後の監督会見で番記者から投手の交代時期について質問が飛び、やや不穏な空気が漂う中で会見が終わったのだという。

 その後番記者たちは監督室を出て、選手たちの話を聞こうと待機していた。そんな中着替えを済ませて監督室を出てきたキャラウェイ監督を見つけたヒーリー記者が、監督が球場を去るのだと思い、「また明日、ミッキー」と声をかけた。

 ところがキャラウェイ監督はこの発言で気分を害してしまい、最終的に上記の発言に繋がり、事件へと発展していったようだ。

【投手陣崩壊で2日前に2コーチを解任】

 今回の事件が起こったのには、伏線があったと考えられる。今シーズンのメッツはオフに大型補強をしたにもかかわらず、37勝41敗と厳しい戦いを強いられている。その最大の理由だといわれているのが投手陣の崩壊だ。

 中でも中継ぎ陣は危機的状況で、中継ぎ陣のチーム防御率5.24は、ナショナルズの6.32に次ぐナ・リーグでワースト2位だ。その責任をとらされたのか、21日に投手コーチのデーブ・エイランド氏とブルペンコーチのチャック・ヘンナンデス氏が一緒に解任されていた。

 そうした背景の中で、この日のカブス戦でも中継ぎ陣が粘れずに逆転負けを喫したことで、チーム内には間違いなくフラストレーションが溜まっていた。そんな緊張感漂うクラブハウスでヒーリー記者が放った何気ない一言が、彼らのフラストレーションに火をつけてしまったようだ。

【試合後のクラブハウス開放は時として難しい側面も】

 MLBファンなら誰でもご存じだと思うが、MLBでは公式戦の試合前後、メディアにクラブハウスが開放される。自分のミスで試合に負けたような時でも、メディアは選手のロッカーの前で待ち構えており、取材から逃げることはできない。それがMLBのしきたりだ。

 もちろん選手にとっては、自分のミスをメディアから根掘り葉掘り聞かれるのは嬉しいはずはない。時には選手が苛立つ姿を見せたりもする。そうでなくてもメッツの番記者の多さは、MLBの中でも一、二を争う。そうした大量のメディアに終始囲まれているのだから、選手の負担も相当に大きくなる。

 実は敗戦後の取材の際は、メディアもある程度の配慮を求められることがある。それはメディア側のエチケットだ。だが今回ばかりはどう判断しても、キャラウェイ監督とバーガス投手の行動は明らかに行き過ぎていたようにしか見えない。現在のようなチーム状況が続く限り、メッツ内のフラストレーションは簡単に消えることはないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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