偽装メニューの先にくるもの
メニューの不当表示問題が問題になっている。
阪急阪神ホテルズでは、
「芝エビ」は、「バナメイ海老」
「九条ねぎ」は、「青ねぎ」
「鮮魚」は、「冷凍魚」
「信州そば」は、「中国産そば」
「霧島ポーク」は、「一般ポーク」
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00256416.html
JR四国では、
「フレッシュミルク」は、「市販牛乳」
「自家製つけもの」は、「既成品漬物」
「和風ステーキ膳」は、「牛脂注入肉」
「地元朝とれ有機野菜」は、「当日朝の収穫ではない野菜」
「地場野菜」は、「一部県外産」
http://jp.wsj.com/article/JJ11329244654035564486419315357283790281758.html
ザ・リッツ・カールトン大阪では、
「自家製パン」は、「外部製パン」
「車エビ」は、「ブラックタイガー」
「フレッシュジュース」は「一般ストレートジュース」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131025/crm13102513560009-n1.htm
このメニューの不当表示が問題になった要因は、ホテルのレストランのような高付加価値のあるところであったからだ。格安居酒屋であれば、ここまで問題になることはなかっただろう。
しかし、「不当表示メニュー」が消費者庁の不当表示調査で事件化すると、不当表示の日本全国一斉調査という大問題になりかねない。
街なかには、外食産業の「不当表示メニュー」が一杯あふれているからだ。
「炊きたてご飯」は明日から、「炊きたて"風"ご飯」に変えざるを得なくなる。
炊きたてを保温しているのだから炊きたて状態ともいえる。また、いつまで炊きたてといえるのかの定義も曖昧だったりする。
また、「インドカレー」は「インド風カレー」、「スリランカカレー」も「スリランカ風カレー」。
いろんなメニューに「◯◯風〜」で不当表示を回避するケースがでてきそうだ。
不当表示を定義すると、日本の5000種類にもおよぶレストラン業種すべての、キャッチコピーやセールスコピーを再定義しなければならなくなる。産地や仕入先のトラッキングなども含めて大事になる。しかし、それをやって便益を担う人がいないのだから不毛な作業だろう。
そもそも、日本農林規格(JAS)法で、消費者が直接手にするようなスーパーや小売では、品名表示が義務づけられているが、外食産業でのメニュー表示に関しては何も規制がない。
なので、今回の一連の問題は、消費者庁の景品表示法の不当表示防止法でしか、扱うことができない。
外食産業の一番の問題は、「不当表示」を行っている意識のなさであろう。
産地や素材は、決して、セールスコピーやキャッチコピーとして使うべきではないが、「慣習」としてそれが日常化していることがすべての問題だ。
また、それに対して意義を唱える消費者の「舌」がなかったことも原因である。
食肉偽装のブランド肉の時と同様である。だた、今回の一連の問題の違いは、「不当表示」を言い出したらキリがないことだ。数社が結託しているわけではない。業界の長年の「慣習」が問題だからだ。
また、それを法で規制すると、外食産業全体が「外食産業”風”」な店舗になりかねない。
メニューを見ても、不当表示がなくなった変わりに、規制だらけで、簡素で味気なく、食欲もそそられないようなメニュー。悪質な不当表示は問題であるが、冷凍マグロは「新鮮」とか「鮮魚」とか言えなくなると問題だ。日本に入荷される段階でほとんどが冷凍マグロだからだ。
メニューに「冷凍マグロのお刺身」とあっても注文したくはならない。
この不当表示問題は、外食産業全体の「慣習」を、お客様の立場に立った「モラル」で考えなおす機会にしていただきたい。