利上げが遅れバブルを膨張させるリスクも
16~17日のFOMCではゼロ金利政策の維持を決め、短期金利の指標であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を、0~0.25%のまま据え置いた。量的緩和政策も継続し、当面は米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)も同400億ドルのペースで買い入れる(18日付日経新聞)。
今回の会合では、正副議長や地区連銀総裁ら18人がそれぞれ中期的な政策見通しも提示した(いわゆるドットチャート)。2021年、2022年、2023年ともゼロ金利を維持する方針が「中央値」となり、FOMCの大勢は「ゼロ金利の解除は2024年以降」となった。
注意すべきはこの結果が、少なくとも2023年末までゼロ金利政策を維持する方針を表明したものではない点となる。あくまで現在の参加メンバーの予想の中心にあるに過ぎず、2023年末まで絶対に利上げはしないと宣言しているわけではない。
この予測には2023年に利上げを見込む参加者は7人おり、前回、予測を提示した2020年12月時点の5人から増えていた。2022年中の利上げを予想するメンバーも4人いる。方向としては少なくとも、次は利下げではなく利上げをみていることは確かである。その前に資産買入額を減少させるテーパリングという作業も必要になる。
ドットチャートでは、景気見通しを大幅に上方修正し、2021年10~12月期の国内総生産(GDP)が前年同期比で6.5%伸びると予測。物価上昇率も2021年10~12月期には前年同期比2.4%まで高まり、一時的に目標の2%を突破するとした。失業率は逆に4%台に下がると予測している。
パウエル議長は会見で、年内に物価上昇率が2%を突破すると予測したものの「一時的なもので、政策目標の達成を意味するものではない」と主張した。
たしかに今後、景気や物価が回復し、食料品価格の上昇などに加え、原油価格などの動向次第では、米国の物価が2%を突破してくる可能性はある。
注意すべきは、我々は少なくとも戦後にこれほどの世界的な規模のパンデミックは経験していないことである。それに対処するために非常時対応としての中央銀行による金融緩和と大規模な財政政策が取られた。景気が回復するとなれば、これらが過剰に効いてくる可能性も当然ある。
1987年10月19日月曜日にニューヨーク証券取引所が発端の世界的株価大暴落が起きた。いわゆるブラックマンデーと呼ばれたものであった。当時の澄田智日銀総裁(2008年没)は2000年の取材で、これで利上げの機を逃したと認めた(日経新聞)。
その後も日銀は当時としては過去最低水準であった公定歩合(当時の政策金利)を2.5%で維持し続けた。これが日本のバブルを生んだひとつの要因ともされた。
今すぐに利上げをしろというわけではないが、現在の金融市場などをみれば過去のバブルを彷彿とさせる動きがあちらこちらで垣間見えている。金融政策の舵取りを間違えるとこのバブルを増長しかねず、1990年以降の日本のようにバブル崩壊によって、そこからの回復が困難になる可能性もないとはいえない。ここからの舵取りは慎重に行う必要があろう。